著者
冨永 敦子 向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.156-165, 2014-03-30 (Released:2014-12-24)
参考文献数
57
被引用文献数
2 5

本研究では最近のeラーニングに関する実践的研究の進展を概観した。情報通信技術の進展とともに,eラーニングと呼ばれる,ネットワークとパソコンやモバイル端末を利用した教育が一般的になりつつある。本稿ではまず,従来の教育とeラーニングを活用した教育を比較した研究を取り上げ,eラーニングが従来の教育方法と同程度かそれ以上の効果があることを示唆した。次に,eラーニングがより効果的となる特質として,反復学習の最適化が可能であることと学習者に対するフィードバックがシステムとして可能であることを取り上げた。さらに,ドロップアウトが比較的多いと言われるeラーニングの短所を補うための方策として,ドロップアウトしやすい時期や学習者の特定,講師のプレゼンス,ブレンド型授業の採用,メンタリングといった観点から工夫していくことが必要であることを主張した。最後に,これからのeラーニングの課題について述べた。
著者
阿部 真由美 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43009, (Released:2019-08-23)
参考文献数
11

学習者が英語学習を自律的に行う際,学習者の個別ニーズに合わせた学習をデザインし,そのプランに沿って学習を進めていくのが効果的だと考えられる.本研究では,大学の授業において英語学習デザインの指導を行い,その指導が学習者のプランニングとその後の学習に及ぼす影響を明らかにすることを目的として調査を実施した.その結果,以下の2点が明らかになった.(1)学習デザイン指導により,学習者は個別ニーズに合った学習プランを作成できるようになった.(2)個別ニーズのうち,学習者の好みに合わせた学習プランを作成することが学習に対する動機づけに影響し,学習者の好みや学習環境に合わせた学習プランがプランの実行度に影響を与えることが示された.以上の結果から,英語自律学習のための学習者の個別ニーズに合わせた学習デザイン指導,特に学習者の好みを考慮したプランニングの重要性が示唆された.
著者
渡邉 文枝 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.40100, (Released:2017-04-20)
参考文献数
21

本研究では,MOOCに代表されるオンライン講座におけるドロップアウト率の低減を図るための示唆を得るために,JMOOCの講座における学習者のeラーニング指向性と相互評価指向性(相互評価への信頼感,相互評価の有用感)が学習継続意欲と講座評価に及ぼす影響について検討した.その結果,eラーニング指向性は,相互評価の有用感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価指向性においては,相互評価への信頼感から講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価の有用感は相互評価への信頼感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.また,相互評価の有用感は,学習継続意欲と講座評価に対して最も大きな正の影響力を示した.これらのことから,eラーニング指向性と相互評価指向性は学習継続意欲と講座評価に寄与することが示唆された.
著者
秋山隆 久保沙織 豊田秀樹 楠見孝 向後千春
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

統計的方法を学ぶことは,これまで,すなわち有意性検定を学ぶことでした。長期に渡りこの大前提はゆるぎなく盤石で,無条件に当たり前で,無意識的ですらありました。しかし,ときは移り,有意性検定やp値の時代的使命は終わりました。アメリカ統計学会ASAは,2016年3月7日に,p値の誤解や誤用に対処する6つの原則に関する声明をだしました (Wasserstein & Lazar, 2016)。この声明は「『ポストp < 0.05 時代』へ向けて研究方法の舵を切らせることを意図している」(R. Wasserstein (ASA News Releases, 2016)) ものだと言明されています。2016年現在,統計学における著名な学術雑誌バイオメトリカ (Biometrika) の過半数の論文が,ベイズ統計学を利用しています。多くの著名な学術雑誌も同様の傾向です。スパムメールをゴミ箱に捨て,日々,私たちの勉強・仕事を助けてくれるのは,ベイズ統計学を利用したメールフィルタです。ベイズ的画像処理によってデジタルリマスターされ,劇的に美しくよみがえった名作映画を私たちは日常的に楽しんでいます。ベイズ理論が様々な分野で爆発的に活用されています。ベイズ的アプローチなしには,もう統計学は語れません。 有意性検定にはどこに問題があったのでしょう。3点あげます。 Ⅰ.p値とは「帰無仮説が正しいと仮定したときに,手元のデータから計算した検定統計量が,今以上に甚だしい値をとる確率」です。この確率が小さい場合に「帰無仮説が正しくかつ確率的に起きにくいことが起きたと考えるのではなく,帰無仮説は間違っていた」と判定します。これが帰無仮説の棄却です。しかし帰無仮説は,偽であることが初めから明白です。それを無理に真と仮定することによって,検定の論理は複雑で抽象的になります。例えば2群の平均値の差の検定における帰無仮説は「2群の母平均が等しい (μ1=μ2)」というものです。しかし異なる2つの群の母平均が,小数点以下を正確に評価して,それでもなお等しいということは科学的にありえません。帰無仮説は偽であることが出発点から明らかであり,これから検討しようとすることが既に明らかであるような論理構成は自然な思考にはなじみません。p値は土台ありえないことを前提として導いた確率なので,確率なのに抽象的で実感が持てません。このことがp値の一番の弊害です。以上の諸事情を引きずり,「有意にならないからといって,差がないとは積極的にいえない」とか「有意になっても,nが大きい場合には意味のある差とは限らない」とか,いろいろな言い訳をしながら有意性検定をこれまで使用してきたのです。しかし,これらの問題点はベイズ的アプローチによって完全に解消されます。ベイズ的アプローチでは研究仮説が正しい確率を直接計算するからです。 Ⅱ.nを増加させるとp値は平均的にいくらでも0に近づきます。これはたいへん奇妙な性質です。nの増加にともなって,いずれは「棄却」という結果になることが,データを取る前に分かっているからです。有意性検定とは「帰無仮説が偽であるという結論の下で,棄却だったらnが大きかった,採択だったらnが小さかったということを判定する方法」と言い換えることすらできます。ナンセンスなのです。これでは何のために分析しているのか分かりません。nを増加させると,p値は平均的にいくらでも0に近づくのですから,BIGデータに対しては,あらゆる意味で有意性検定は無力です。どのデータを分析しても「高度に有意」という無情報な判定を返すのみです。そこで有意性検定ではnの制限をします。これを検定力分析の事前の分析といいます。事前の分析では有意になる確率と学術的な対象の性質から逆算してnを決めます。しかし検定力分析によるサンプルサイズnの制限・設計は纏足 と同じです。統計手法は,本来,データを分析するための手段ですから,たくさんのデータを歓迎すべきです。有意性検定の制度を守るために,それに合わせてnを制限・設計することは本末転倒です。ベイズ推論ではnが大きすぎるなどという事態は決して生じません。 Ⅲ.伝統的な統計学における平均値の差・分散の比・クロス表の適合などの初等的な統計量の標本分布を導くためには,理系学部の2年生程度の解析学の知識が必要になります。すこし複雑な統計量の標本分布を導くためには,統計学のために発達させた分布論という特別な数学が必要になります。それでも,どの統計量の標本分布でも求められるという訳ではなく,導出はとても複雑です。検定統計量の標本分布を導けないと,(教わる側にとっては)統計学が暗記科目になってしまいます。この検定統計量の確率分布は何々で,あちらの検定統計量の確率分布は何々で,のように,まるで歴史の年号のように,いろいろと覚えておかないと使えません。暗記科目なので,自分で工夫するという姿勢が育つはずもなく,紋切り型の形式的な使用に堕す傾向が生じます。でもベイズ統計学は違います。マルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 法の本質は,数学Ⅱまでの微積分の知識で完全に理解することが可能です。標本分布の理論が必要とする数学と比較すると,それは極めて初等的です。生成量を定義すれば,直ちに事後分布が求まり,統計的推測が可能になります。文科系の心理学者にとっても,統計学は暗記科目ではなくなります。 学問の進歩を木の成長にたとえるならば,平行に成長した幾つかの枝は1本を残して冷酷に枯れ落ちる運命にあります。枯れ果て地面に落ちた定理・理論・知識は肥やしとなり,時代的使命を終えます。選ばれた1本の枝が幹になり,その学問は再構築されます。教授法が研究され,若い世代は労せず易々と古い世代を超えていく。そうでなくてはいけません。 統計学におけるベイズ的アプローチは,当初,高度なモデリング領域において急成長しました。有意性検定では,まったく太刀打ちできない領域だったからです。議論の余地なくベイズ的アプローチは勢力を拡大し,今やその地位はゆるぎない太い枝となりました。 しかし統計学の初歩の領域では少々事情が異なっています。有意性検定による手続き化が完成しており,いろいろと問題はあるけれども,ツールとして使えないわけではありません。なにより,現在,社会で活躍している人材は,教える側も含めて例外なく有意性検定と頻度論で統計教育を受けています。この世代のスイッチングコストは無視できないほどに大きいのです。このままでは有意性検定と頻度論から入門し,ベイズモデリングを中級から学ぶというねじれた統計教育が標準となりかねません。それでは若い世代が無駄な学習努力を強いられることとなります。教科教育学とか教授学習法と呼ばれるメタ学問の使命は,不必要な枝が自然に枯れ落ちるのを待つのではなく,枝ぶりを整え,適切な枝打ちをすることにあります。ではどうしたらいいのでしょう。どのみち枝打ちをするのなら,R.A.フィッシャー卿の手による偉大な「研究者のための統計的方法」にまで戻るべきです。「研究者のための統計的方法」の範囲とは,「データの記述」「正規分布の推測」「独立した2群の差の推測」「対応ある2群の差の推測」「実験計画法」「比率・クロス表の推測」です。これが統計学の入門的教材の初等的定番です。文 献Wasserstein, R. L. & Lazar, N. A. (2016). The ASA's statement on p-values: context, process, and purpose, The American Statistician, DOI:10.1080/00031305.2016.1154108ASA News Releases (2016). American Statistical Association releases statement on statistical significance and p-Values. (http://www.amstat.org/newsroom/pressreleases/P-ValueStatement.pdf)R.A.フィッシャー(著) 遠藤健児・鍋谷清治(訳) (1970). 研究者のための統計的方法 森北出版 (Fisher, R. A. (1925). Statistical Methods for Research Workers, Oliver and Boyd: Edinburgh.)1 纏足(てんそく)とは,幼児期から足に布を巻き,足が大きくならないようにして小さい靴を履けるようにした,かつて女性に対して行われていた非人道的風習です。靴は,本来,足を保護するための手段ですから,大きくなった足のサイズに靴を合わせるべきです。靴に合わせて足のサイズを制限・整形することは本末転倒であり,愚かな行為です。他の靴を履けばよいのです。
著者
渡邉 文枝 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.40064, (Released:2017-02-03)
参考文献数
23

本研究の目的は,eラーニング指向性質問紙短縮版を作成し,その信頼性と妥当性を検討するとともに,学習者のeラーニング指向性の変化とeラーニング指向性の項目間の因果関係を検討することであった.調査対象はJMOOCの講座における学習者,調査時期は最初の単元の受講開始前と最後の単元の受講終了時であった.分析の結果,eラーニング指向性質問紙短縮版は1因子構造であり,一定の信頼性と因子的妥当性が確認された.また,eラーニング受講経験の有無によるeラーニング指向性の変化を検討した結果,eラーニング未経験者は,eラーニングの講座を修了することにより,eラーニング指向性が向上する可能性が示唆された.eラーニング指向性の項目間の因果関係においては,交差遅延効果モデルによる分析の結果,「孤独」が重要な要因になっていることが示唆された.
著者
向後 千春
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.182-191, 2002
被引用文献数
1

大学でいくつかの科目についてWebベースの個別化教授システム(PSI)を実践している。本論文はそのデザイン,実践と評価について報告する。PSIコースは自己ペースによる学習と,単元ごとの通過テストによって完全習得学習を指向することを特徴としている。学習教材はHTMLで記述され,受講生にCD-ROMの形で配布された。3~5年間の実践でのドロップアウト率は10%以下であった。コースの最後に行った授業評価によると,PSIコースは一斉講義形式の授業よりも高い評価を得た。
著者
向後 千春 冨永 敦子 石川 奈保子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.281-290, 2012
参考文献数
14

eラーニングと教室でのグループワークを週替わりで交代に行うブレンド型授業を設計し,3年間に渡って実践した.1年目は通信教育課程向けのeラーニングコンテンツを流用し,2年目以降はブレンド型授業用に新規に開発した.ブレンド型授業導入以前の対面授業,ブレンド型授業の1年目,2年目,3年目の成績分布を比較したところ,1年目はほかに比べて成績高群が有意に少なく,成績中群が有意に多かった.しかしながら,2年目以降は,対面授業と有意な差はなかった.また,学習者のブレンド型授業に対する好みは,1年目よりも2年目以降が有意に高くなった.このことから,ブレンド型授業用に授業を設計すれば,対面授業と同程度の学習効果を上げることができ,かつ受講生からも受け入れられることが示唆された.しかしながら,一方で,対面授業に比べて,ブレンド型授業は不合格者が有意に多く,ブレンド型授業に馴染めない学習者が一定の割合で存在していることが示唆された.
著者
阿部 真由美 向後 千春
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究では,英語の自主的な学習での学習方法に対する「好み」の構造と傾向,および「好み」が学習行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,オンライン調査を行った。その結果,「好み」の因子として「拡散的好奇心」「特殊的好奇心」「達成感」「刺激」が確認された。また,学習方法をクラスタ分析により「音声・活字言語教材型」「映像メディア型」「活字メディア型」「人と交流型」に分類して「好み」の傾向を比較したところ,「拡散的好奇心」「特殊的好奇心」「有効性」はクラスタ間で大きな違いはなかった。一方,「達成感」「刺激」「低コスト」はクラスタによって異なる傾向が示された。さらに,「好み」が学習行動に及ぼす影響を調べたところ,「拡散的好奇心」が学習の期間や継続に影響を及ぼすこと,また,コスト感の低さが学習の頻度や継続に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
向後 智子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.87-94, 1998
参考文献数
13
被引用文献数
6

本研究はマンガによる学習内容の提示が理解と保持に及ぼす影響について検討した.学習内容部分とストーリー部分を含むマンガを材料として,(1)マンガか文章かによる学習内容部分の表現方法の違い,および,(2)マンガによるストーリー部分の提示の有無の2つの要因が内容の理解と保持に及ぼす効果について実験した.各要因が理解の深さにどのように効いているのかを検討するために,解答に必要とされる理解の度合いが異なるようなテストを3種類用意し,読解直後と1週間後にテストを行った.その結果,解答にあまり深い理解を必要としない場合,マンガによる学習内容部分の提示が有効であるが,推論や新しい事態への知識の適用が必要とされるテストでは,マンガによるストーリー部分を提示することが成績を有意に高めることが明らかになった.また,実験後のアンケート結果から,関心度はストーリー部分を含む全体を提示することによって高まることがわかった.
著者
野嶋 栄一郎 浅田 匡 齋藤 美穂 向後 千春 魚崎 祐子 岸 俊行 西村 昭治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

授業中に発現する能動的学習行動が学習促進に及ぼす効果に関する実証的研究をテーマとして、本研究は進められた。この研究は、1)教室授業場面における児童の挙手行動と2)ノートテイキィング、3)テキストへのアンダーライニングおよび4)eラーニングを併用した講義型授業におけるeラーニングの利用の様態についての研究がまとめられている。それらの結果は、以下のようにまとめることができる。1)実際の教室授業場面の観察を通し、児童の挙手行動のメカニズムの検討を行った。その結果、挙手は児童個人の信念だけではなく、児童の授業認知などの学級環境要因によって規定されていることが示された。2)講義におけるノートテイキング行動と事後テスト得点との関連について検討した。講義の情報をキーセンテンスごとに分類し、ノートテイキングされた項目とその量について調べ、授業ごと2週間後に課したテストの得点との関係について分析した。その結果、直後テスト、2週間後のテスト、どちらにおいてもノートテイキング量とテスト得点の間に強い相関が認められた。3)テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が、文章理解に及ぼす影響について章の難易度と読解時間という2要因に着目し、テキストにあらかじめつけておいた下線強調の比較という観点から、実践的に検討した。その結果、テキストの下線強調は、文章の難易度や読解時間の長さにかかわらず、強調部分の再生を高める効果をもつことが示された。4)講義型授業をアーカイブ化したeラーニング教材を、講義型授業に付加する形で用意した。講義型授業を受講した後、アーカイブ化したeラーニング教材がどのように利用されるか検討した。その結果、学習者は学習中の自己評価から授業を再受講する必要性を感じた場合に、授業をeラーニングで再受講することが確認された。
著者
中村 康則 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.77-80, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
11

本研究では,セルフ・ハンディキャッピング(SHC)とハーディネスの特性に注目して,社会人学生を類型化し,その成績・学習時間との関係について検討した.クラスター分析によって分類した結果,学生は「高SHC 型」「時間不足SHC型」「低SHC 型」の3タイプに類型化された.これらの3タイプにおける成績・学習時間の差を検討したところ,「高SHC 型」の成績は,他にくらべ有意に低いことが示された.また,「低SHC 型」は,学習時間が他にくらべ有意に長く,成績は「高SHC 型」よりも有意に高いことが示された.本研究で示された学生の類型を用いることにより,成績や学習時間の傾向を予測できる可能性が示唆された.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.329-343, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.
著者
富永 香羊子 中村 康則 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42041, (Released:2018-11-02)
参考文献数
9

本研究では,教員に対して学校図書館を授業で活用するための研修プログラムを開発し,研修の効果を検証した.その結果,研修プログラムにおける学校図書館を活用した課題解決型の授業について,次の3点が明らかとなった.(1)児童生徒の主体的な学びを育み,学び方の習得に繋がる.(2)児童生徒の21世紀型能力の獲得に繋がる.(3)意図的・継続的に実施することが望ましい.これらの結果から,研修を通して学校図書館を授業で活用したことによって,教員の学校図書館活用への意識の変容を促し,一定の効果をもたらすことが示唆された.
著者
多喜 翠 伊澤 幸代 堂坂 更夜香 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42072, (Released:2018-09-03)
参考文献数
4

大学エクステンションセンターで公開講座を受講している社会人を対象に,受講動機と受講後の変化についての質問紙による調査を行った.その結果,大学エクステンション公開講座を複数回受講している人は,初回の人に比べ「仲間をつくる」ことや「自分に活かす」こと,また,「大学が開いている」といったことが受講動機として高く,受講後の変化に関しては,特に人間関係と生き方が変わったと感じていた.このことは,講座を通じてできた仲間との交流や,講座で獲得した知識が実際に活用されているという実感と,大学が開いていることへの信頼感が,その後 の継続的な受講動機につながることを示唆している.以上のことから,大学エクステンション公開講座を設計するにあたり,仕事のみならず自分に役立つような知識やスキルを提供すると同時に,ともに学ぶ仲間をつくれるような活動を支援していく形態にすることが必要だろう.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.315-324, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
25

本研究では,eラーニング制大学通信教育課程(オンライン大学)の基礎教育科目の受講生を対象に,「大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略尺度」による2波のパネル調査を行った.その結果,以下のことが明らかになった.(1) 大学通信教育課程の社会人学生の自己調整学習方略として,「Ⅰ学習方法を振り返る」「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」「Ⅴ自分にご褒美を与える」の5因子が抽出された.(2) 学習方略因子間の因果関係として,以下の2点が示された.学習方略使用状況は約半年後も大きくは変わらない.共分散構造分析により,「Ⅰ学習方法を振り返る」から「Ⅲ大学の友人にたずねる」「Ⅳ学習計画を立てる」へ,「Ⅳ学習計画を立てる」から「Ⅱ学習を工夫する」「Ⅴ自分にご褒美を与える」への影響が確認された.以上のことから,大学通信教育課程の社会人学生には,まず,「Ⅰ学習方法を振り返る」方略を使用するよう促すことで,自己調整学習のサイクルに誘導できる可能性があることが示唆された.
著者
向後 千春 岸 学
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.161-166, 1996-12-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

映像と文字情報の提示についてのデザイン原則への示唆を得ることを目的として,外国映画の字幕つきビデオを視聴するときの眼球運動を分析した.実験材料として,字幕版のビデオ,「JFK」と「マルコムX」を用いた.それぞれから5分間程度のシーン4つを選び,編集したものを,アイマークカメラを装着した被験者に視聴してもらい,そのときの眼球運動を記録した.1行6文字,1行13文字,2行13文字,2行20文字の4種類の字幕パターンに注目し,それぞれにおいて,眼球運動を,字幕への反応時間,先頭への移動時間,実質的な読み時間,(2行字幕の場合)改行時間,に分解し詳細に調べた.その結果,字数が増えれば増えるほど文字あたりにかかる時間が長くなり,そこでは行数の要因と文字数の要因とが効いていることが明らかにされた.
著者
向後 千春
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.48-53, 2000-12-01 (Released:2015-02-03)

富山大学で行われている教養科目のひとつ、「言語表現」について報告する。言語表現が開設されるまでの背景と必要性、現在までの実施状況を記述し、さらにその問題点について議論する。言語表現が情報処理科目との選択になっていることは、大学生のリテラシー教育として不十分であり、それを解決するために、言語表現と情報処理を統合し、電子時代のリテラシー教育として再編成することを提案する。また、実施上の工夫として、モジュール化された3回程度の授業を多数開講し、その中から学生が自分に必要なものを選んで履修していくという方法を提案する。