著者
阪口 正則 村上 忠弘 石川 巧 南村 弘佳
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.108-111, 2015 (Released:2015-04-11)
参考文献数
17

症例は69歳,女性.食後の腹痛および血便を認め,下部消化管内視鏡検査で虚血性腸炎が疑われた.腹部造影CT検査で上腸間膜動脈の起始部閉塞による腹部アンギーナと診断された.造影CT検査では,胸腹部大動脈および腹部大動脈に壁在血栓を伴う拡大と高度の大動脈壁石灰化を認め,また,両側の総腸骨動脈にも高度の狭窄を認めた.手術は,大伏在静脈グラフトを用い,腹部の主要な分枝動脈で唯一起始部から末梢まで狭窄を認めなかった右腎動脈から,上腸間膜動脈にバイパス術を行った.術後,食後の腹痛は消失し,良好な経過を得た.
著者
石川 巧
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

これまでの研究成果の一部をまとめたものとして単著『幻の雑誌が語る戦争』(青土社、2017年12月)を刊行した。同書は本研究のメインテーマである戦後占領期のカストリ雑誌を研究するなかで新たに発見した雑誌資料をもとに、戦争末期から戦後占領期にかけての言論統制とそれに抵抗するようにして書き継がれた文学テキストを分析したものであり、出版文化研究の領域においても意義のある成果だったと考えている。また、この間、戦後の雑誌文化研究として『月刊「さきがけ」復刻版』(2917年~2018年、三人社)、『「国際女性」復刻版』(金沢文圃閣、2017年~2018年)、カストリ系探偵小説雑誌『「妖奇」復刻版』(三人社、2016年~2017年)の復刻版編集と解題執筆を担当しており、これまでほとんど顧みられることのなかった戦後占領期の大衆通俗雑誌、地方の総合文芸雑誌に焦点をあてる取り組みをしている。さらに、共著としては戦後ヤミ市の風俗・文化を探究した『〈ヤミ市〉文化論』(井川光雄・石川巧・中村秀之編、2017年、ひつじ書房)、福岡市史特別篇『近代福岡の印刷と出版』(2017年、福岡市史編纂室)などを刊行をした。メインテーマのカストリ雑誌に関しては、2019年3月の刊行をめざして、現在『カストリ雑誌総攬』(勉誠出版)の編集作業を進めている。同総攬は1945年~1949年にかけて日本国内で発行された大衆通俗雑誌(いわゆるカストリ雑誌)の図版、目次・奥付情報などを網羅的に蒐集した図録であり、完成すればこれまでの諸研究では類を見ない体系的な出版文化研究となるはずである。具体的には、(1)歴史に埋もれていた文学テキストの発見、(2)カストリ雑誌ブームとその衰頽に関する実態研究、(3)戦後占領期におけるGHQの検閲とそれに対抗する作家たちの文学的営為に関する研究、などの進展が期待できる。
著者
石川 巧
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.63-78, 2014-11-15 (Released:2017-06-01)

菊池寛は、大正後期に書き継いだ法廷小説のなかで、容疑者の陳述はもちろん、捜査担当者、裁判官、検事の心証から事件報道まで、多様な言説を駆使して法の矛盾や不備に迫ろうとした。裁判で勝つためにありとあらゆる戦略が練られる法廷のディスコースそのものが文学的レトリックによって構成されていることを的確に見抜き、文学という方法を用いて法の内実を問うた。また、菊池寛の法廷小説においては読者が陪審員の位置に立たされる。法廷において自らの言葉をもつことができないアウトサイダーが可視化され、公平性をめぐる基準線の引き直しが試みられる。語ることよりも語れないことに意味を見だし、語れない人々に言葉を与えること、語れないことを語ることが追求される。
著者
渡邉 正彦 石川 巧 藤井 淑禎 瀧田 浩
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高度経済成長以前の状況では、一国の文化が一つの価値観に収斂されていく傾向が顕著であるが、しかし高度経済成長によりもたらされた経済的余裕を背景として、個人の価値観が多様化し、それに即した表現が様々な形で現れてくるようになり、そして、そのような状況の中で、統一感を喪失することを余儀なくされた人々が、必然的に孤独感を抱え込み、そのはけ口を表現に求めるようになる傾向が看取される。
著者
瀧田 浩 藤井 淑禎 渡邉 正彦 石川 巧
出版者
二松学舎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の具体的な成果として、研究分担者石川巧の著書『高度成長期の文学』(2012年、ひつじ書房)がある。本書にあるように、高度成長期における大衆の欲望は不可逆に変容し、文化もこれに伴い大きく変わった。私たちの研究は、この変容のプロセスを、文学を中心としてサブカルチャーまで領域を広げながらも、その変容を学術的・具体的に検証するものであった。中国の現在の高度成長と比較する視点が加えられ、本研究は他の研究には見られない独自なものとなった。
著者
石川 巧
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

大学入試における小論文・作文の歴史研究として『「いい文章」ってなんだ―入試作文・小論文の歴史』(ちくま新書)を刊行した。また、近代日本におけるリテラシー能力のありようを考える過程で論文集『高度経済成長期の文学』(ひつじ書房)、『「月刊読売」解題・詳細総目次・執筆者索引』(三人社)をまとめることができた。大学生のリテラシー能力を涵養するためのテキストとして『戦争を〈読む〉』(ひつじ書房)を編んだ。個別の研究としては「雑誌「小説春秋」はなぜ歴史の後景に消えたのか?―附・総目次」(「敍説」III-10)、「戦前における〈近代文学の教科書〉」(「日本文学」727)など15本の論文を書き、口頭発表も行った。