- 著者
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石川 巧
- 出版者
- 立教大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究の成果は、『「国語」入試の近現代史』(講談社メチエ、平成20年1月)にまとめているので、同書の内容に沿って研究概要を報告したい。本研究では大正期から戦前・戦後を経て現在に至るまでをフィールドとして二年間にわたって研究を継続したが、その成果は以下のように集約できる。【1】現代文にどのような文章が出題され、どのような設問が用意されていたのかを具体的に検証し、学校教育の現場で用いられていた教科書や読本、参考書との比較検討を行うことができた。【2】現代文の登場により擬古文、文語文、口語文などの文体にどのような変化がもたらされたのかを分析し、学生のリテラシー能力のあり方に対して現代文が果たしてきた〈正〉・〈負〉それぞれの役割を分析した。【3】現代文の普及と同時代における国文学の現代化との相関性を検証した。【4】リテラシー能力の育成という観点から文部省の政策や教育思想を検証し、現代文という科目の社会的・政治的な役割を明らかにした。【5】特に選択問題やマークシートの導入によって、文章の読解能力のあり方がどのように変化してきたかを検証し、将来の大学入試における現代文の問題作成に関する知見を示した。同書の刊行によって、入試現代文の歴史的経緯を明らかにするとともに、大正期から現在に至る「国語力」あるいは「読解力」というものの変遷過程を詳細にたどることが可能になったと考える。