著者
樋口 輝美 眞野 善裕 石川 由美子 山崎 俊男 水野 真理 大川 恵里奈 堀田 直 瀬戸口 晴美 早瀬 美幸 吉沢 美佳 堀之内 那美 榎本 伸一 安藤 英之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.937-945, 2012-10-28 (Released:2012-11-14)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:透析患者は低栄養,炎症,動脈硬化を主体としたMIA症候群の危険にさらされている.今回維持透析施行中の患者のgeriatric nutritional risk index(GNRI)を測定し,栄養状態について検討し,血漿CRP,IL-6,Fetuin-A,8-OHdG等の各種パラメーターを測定し,それらとの相関等について検討した.対象:当院で安定した維持血液透析施行中の患者138名.内訳は男性95名,女性43名.平均年齢69±11歳(38から88歳)で平均透析歴58±60か月(3から390か月)である.方法:GNRIはBouillanneらが提唱し,Yamadaらが改変した計算式より求めた.血漿IL-6,Fetuin-A,8-OHdGはenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にて求めた.結果:GNRIは加齢により次第に低下し,年齢と有意な負の相関を示した.また男性に比べ女性で有意な低値を示し,原疾患では糖尿病性腎症の有無では有意な差は認められなかった.生化学パラメーターとしては,血清アルブミン(p<0.0001),Fetuin-A(p<0.01)と正の相関を示し,CRP(p<0.0005),IL-6(p<0.0001),8-OHdG(p<0.0001)と負の相関を示した.結論:透析患者の栄養状態を反映する上で,GNRIは簡易に計測できる指標となりえると考えられた.また栄養,炎症,動脈硬化,酸化ストレスとGNRIの間には密接な関連があることが示唆された.
著者
樋口 輝美 石川 由美子 山崎 俊男 水野 真理 大川 恵里奈 瀬戸口 晴美 柳沢 順子 中島 詩織 安藤 英之 及川 治 井下 篤司 阿部 雅紀 上野 高浩 相馬 正義
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.119-127, 2014 (Released:2014-03-06)
参考文献数
30
被引用文献数
3

【目的】透析患者におけるレボカルニチンの腎性貧血に及ぼす効果を検討する.【対象】当院にて維持透析施行中の患者192名のうち,選択基準を満たした対象患者153名に対し内服希望のアンケートを実施し,内服希望患者群113名(内服群)と内服希望のない患者群40名(非内服群)とした.【方法】今回の臨床試験においては,内服希望患者による介入試験であり,非ランダム化比較試験である.内服群はレボカルニチンを20mg/kg/日(最大用量1,200mg/日)を投与した.Erythropoiesis stimulating agents(ESAs)はrecombinant human erythropoietin(rHuEPO)とDarbepoetinα(DA)を使用しているため,rHuEPOとDAの比を200:1としrHuEPOの換算量とし,週あたりのESAs使用量,ESAs治療反応性の指標としてerythropoiesis resistance index(ERI)をESA doses/kg/g/dL/週として算出した.【結果】対象患者の患者背景は,内服群で,非内服群に比し有意に男性患者が多く,原疾患は糖尿病性腎症が多く,有意にクレアチニン,尿酸,アルブミンとTIBCの高値を認めたが,その他両群間で有意な差は認めなかった.1)内服群,非内服群とも試験開始前から6か月まで目標Hbに達し,両群間で有意な差は認めなかった.2)内服群のESAs使用量は6か月目に有意な低値を認め,非内服群に比し,6か月目で有意な低値を認めた.3)内服群でESAs doses/kg/dL/週は6か月目で有意な低値を認め,非内服群に比し,開始3,6か月で有意な差を認めた.【結論】レボカルニチンは透析患者の腎性貧血におけるESAs使用量の低下と,ESAsへの反応性を改善させることが示唆された.
著者
樋口 輝美 堀田 直 石川 由美子 山道 慎也 會所 拓斗 二階堂 杏子 瀬戸口 晴美 山崎 俊男 大川 恵里奈 安藤 英之 及川 治 小林 伸一郎 阿部 雅紀 岡田 一義
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.477-482, 2015 (Released:2015-08-28)
参考文献数
21

症例は58歳男性. 糖尿病性腎症による末期腎不全にて血液透析を導入された. 心エコー検査で, EFは48.9%で, E/e’も19.5と収縮障害と拡張障害を認め, LVMIも151g/m2と左室肥大を認めた. ESAsはrHuEPOを9,000単位/週を使用し, ERIはrHuEPO doses/kg/g/dL/週として算出し, 13.5と比較的高値を認め, レボカルニチン1,200mg/日で内服療法を開始した. 開始前と1年後の経過で, EFは48.9%から72.7%, LVMIも151g/m2から107g/m2, NT-proBNPは12,800pg/mLから7,850pg/mLへと改善した. 内服開始前の使用rHuEPOは9,000単位/週で, 開始前のERIは13.5と高値であったが, rHuEPOは3,000単位/週に減量し, ERIは3.9まで低下した. 動脈硬化症の指標のbaPWVは1,832cm/secから1,545cm/secと改善した. また上腕筋面積は, 32.9cm2から39.3cm2に上昇し, ALT, ASTは12U/L, 14U/Lで, それぞれ9U/Lと軽度低下した. レボカルニチンの投与により, 種々のパラメーターが改善した症例を経験したので報告する.
著者
石川 由美
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.14, pp.125-143, 2020-03

1987 年に介護福祉士国家資格が創設されて30 年以上経過した今日,介護福祉現場は深刻な人材不足と,従事者の専門職としての質が問われている状況にある。本稿は,介護福祉士資格創設時の経緯と,関係者による専門性に関わる議論を振り返り,今日まで続く状況の引き金となった問題について整理・考察を行った。当時の実践現場の関係者からは,寮母の資質についての問題意識,専門職としての社会的地位の向上,老人保健施設創設に関わる危機感などから資格制度を望む声が聞かれていた。厚生省は、高まる介護需要に対するマンパワー不足を補うため,シルバーサービスを容認し,それを規制するために資格制度創設を推し進めた。社会福祉関係団体は,長年の悲願であった社会福祉専門職資格の創設に向けて,政府とともに「資格制度創設ありき」で動いた。さらに,隣接職種である家政婦団体と日本看護協会から,介護福祉士資格制度創設についての猛然とした反対があったことや,それにまつわる関係者の軋轢などが,介護福祉の専門性の明確化を阻んだ。その結果、介護福祉の専門性についての十分な議論や立証は置き去りにされ,資格創設当初の躓きは今日まで繋がり,介護実践の関係者が望んだ資格制度とは異なるものとなった。
著者
山崎 美惠子 梶本 市子 矢野 智恵 吉田 亜紀子 中井 寿雄 石川 由美 片岡 亜沙美 中平 紗貴子 岡本 雅佳 高藤 裕子 大沢 たか子 三浦 かず子 棚田 秀子 吉村 澄佳 池畠 千恵子 岡林 美枝 小島 一久
出版者
高知学園短期大学
雑誌
高知学園短期大学紀要 (ISSN:03894088)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.73-80, 2011-03-10

看護学教育のあり方に関する検討会報告で提示された「看護実践能力習得のためにコアとなる臨地実習(平成14年3月26日)」を指針として、本学看護学科の7領域看護実習中における看護実践能力習得の現状の把握と課題を明らかにした。 看護実践能力に関する課題(5項目)、人間関係形成能力に関する課題(7項目)、臨床判断・問題解決能力、マネジメント能力に関する課題(3項目)、看護専門職の役割・責務に関する能力に関する課題(2項目)が得られた。また指針で示されている到達目標の基盤となる「成熟性」に関する課題が新たに抽出された。これらの課題についてさらに検証が必要であるが、本学独自の教育への取り組みの方向性が明確になり、教育の「質」改善にむけた方法の示唆を得た。
著者
石川 由美子 岡崎 慎治 前川 久男
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.71-78, 1999-01-30

ウエルドニッヒ-ホフマン病は、進行性筋委縮性疾患で、筋力の低下からADL(日常生活動作)の全介助および人工換気管理が施されるケースが多い。そのため、言語的および非言語的コミュニケーション手段のほとんどを生後すぐから剥奪されてしまう。このような疾患をもつ患児の在宅での人工換気管理が進められている現状では、最小制約環境(LRE)の保証だけではなく、早期からのコミュニケーション手段の開発と指導が重要となろう。そこで本研究では、弁別学習の適用がコミュニケーション能力の基盤となる音声(単語)、絵、文字の関係性の獲得と理解に有効となるかについて検討した。その結果、指導の有効性と患児の多様な意志の表出の可能性が示唆された。