著者
井上 知洋 東原 文子 岡崎 慎治 前川 久男
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.435-444, 2012 (Released:2013-09-14)
参考文献数
24
被引用文献数
6 3

本研究では、学齢期の定型発達児(N=120)における読字能力と音韻処理能力の関連の発達的変化、ならびに読み困難児(N=10)における読みの困難と音韻処理の特性および両者の関連性について検討した。課題はひらがな単文字、単語、非単語の読字課題と、モーラ削除課題、非単語復唱課題を用いた。その結果、定型発達児における読字能力と音韻処理能力の関連の様相は学年段階ごとに異なり、通常の読字発達過程における両者の関連の発達的変化が示唆された。また読字課題の反応時間を音読潜時と発話時間に分けて分析したところ、読み困難児に共通する特徴として単語に対する音読潜時と非単語に対する発話時間、さらにモーラ削除課題の遂行時間の延長が認められた。これらの結果から、ひらがなの読み困難のメカニズムにおいては、単語全体として認識する能力の発達の障害と、音韻意識の障害の二点が強く影響していることが示唆された。
著者
渡邉 はるか 前川 久男
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.351-359, 2011 (Released:2013-09-14)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では、通常の学級に在籍する362名の定型発達児と33名の特別な教育的ニーズ(Special Educational Needs; 以下SENとする)のある児童に対して、学業適応感、学校生活適応感に関する質問紙調査を実施した。本研究の目的は、渡邉(2009)の尺度を改訂し、学業適応感が学校生活適応感へ与える影響の再検討およびSENの有無が学校生活適応感へ与える影響を検討することである。学業適応感は、因子分析の結果、学業満足感と学業困難感の2因子が抽出された。学校生活適応感に対する学業適応感の影響を検討するために重回帰分析をした結果、学業満足感の影響が確認され、学業困難感の影響はみられなかった。また、学校生活適応感の要因として、特別な教育的ニーズがあることの影響が示唆された。以上より、学校生活適応感に影響を及ぼす要因として、学業満足感に注目することができ、あらためて児童の学習面のニーズに注目する必要性が指摘できる。
著者
室谷 直子 前川 久男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.51-59, 2005-03

本研究では、読み障害児においてワーキングメモリ(WM)と読みプロセスとの関連性を明らかにすることを目的とした。読み障害児10名、生活年齢対照群26名、読みレベル対照群20名にWM課題としてリーディングスパンテスト(RST)とリスニングスパンテスト(LST)、および5つの下位項目から成る読み検査を実施し、各々の相関係数を算出した。その結果、両対照群においては各々RSTとLSTとが有意な相関を示した項目はほぼ同じであったのに対し、読み障害児ではRSTは文理解と、LSTは推論と有意な相関を示した。このことから、健常児ではWM課題の実施手続きの違いが読みとの関係性にあまり影響しないのに対し、読み障害児では能動的な音読を伴う条件(RST)ではWMを介して統語的な処理が促進され、受動的な聞き事態(LST)ではWMを介して推論といった意味内容の統合・調整の関わる処理が促進される可能性が示唆された。
著者
四日市 章 河内 清彦 園山 繁樹 長崎 勤 中村 満紀男 岩崎 信明 宮本 信也 安藤 隆男 安藤 隆男 前川 久男 宮本 信也 竹田 一則 柿澤 敏文 藤田 晃之 結城 俊哉 野呂 文行 大六 一志 米田 宏樹 岡崎 慎治 東原 文子 坂尻 千恵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要 : インクルーシブ教育を理論的・実践的両側面から捉え、国内外の障害に関する理念・教育制度の展開等について歴史的に解明するとともに、特定地域の幼児・親・教師を対象として、障害のある子どもたちのスクリーニング評価の方法の開発とその後の支援について、長期的な研究による成果を得た。
著者
石川 由美子 岡崎 慎治 前川 久男
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.71-78, 1999-01-30

ウエルドニッヒ-ホフマン病は、進行性筋委縮性疾患で、筋力の低下からADL(日常生活動作)の全介助および人工換気管理が施されるケースが多い。そのため、言語的および非言語的コミュニケーション手段のほとんどを生後すぐから剥奪されてしまう。このような疾患をもつ患児の在宅での人工換気管理が進められている現状では、最小制約環境(LRE)の保証だけではなく、早期からのコミュニケーション手段の開発と指導が重要となろう。そこで本研究では、弁別学習の適用がコミュニケーション能力の基盤となる音声(単語)、絵、文字の関係性の獲得と理解に有効となるかについて検討した。その結果、指導の有効性と患児の多様な意志の表出の可能性が示唆された。