著者
山田 弘之 加藤 昭彦 石永 一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.13-18, 2000-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
10
被引用文献数
4 5

目的:早期癌を発見するのが目的の一つである人間ドックにおいて,甲状腺癌発見を目的とした超音波検査の導入が普及してきている.この導入がもたらした結果と当院で発見された甲状腺癌の詳細を検討し,その意義を考察した.対象:1989年から1998年までの10年間に,山田赤十字病院の検診センターで施行した人間ドックにおいて発見された甲状腺結節性病変のうち,手術によって癌であることが確認された78例と,同期間に当科において手術を行ったそれ以外の甲状線癌287例と対象とした.また,ドックによって発見され手術を行った良性疾患26例も検討対象に含めた.方法:ドック群と対象群287例において,手術時年齢,TN分類(なかでもT1とT4について),遠隔転移の有無,性比を比較した.結果:ドック群には44歳以下の症例が24例30.8%含まれ,対象群の60例20.9%に比して高率であった.また,ドック群には微小癌が41例52.6%含まれており,対象群の100例34.8%に比して高率であった.逆にドック群には気管食道など周囲臓器に浸潤した症例が1例1.3%に過ぎず,対象群の21例7.3%に比して低率であった.一方で,ドック群にも遠隔転移を認めた症例が1例あり,対象群の3例1.0%とほぼ同率であった.なお,ドック群には22例28.2%の男性症例が含まれ,対象群の28例9.8%に比して高率であった.結論:ドックで発見される甲状腺癌には若年者が多く,また微小癌が多い一方で,周囲組織特に気管食道などへの浸潤例が少なかったことから,ドック群には予後良好な症例が多いと考えてよい,微小癌の良好な予後を考えると,ドックによって不急の微小癌手術が増えていること,更にドックによって結果的に不要であつた良性疾患手術があったことから,穿刺吸引細胞診など精査の対象とすべき症例を嚴選することが頭頸部外科医に求められる.
著者
加藤 明彦 山田 弘之 山田 哲生 石永 一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.45-50, 1997-01-20
参考文献数
9
被引用文献数
12 3

当科において超音波ガイド下吸引細胞診 (FNA) を施行し, 手術により組織学的に確認された甲状腺腫瘍333症例につき検討を行った. 正診率は92.4%, 特異性は100%, 感受性は88.3%であった. またFNA陽性例のうち2回目以降に陽性となった症例が24例 (12.8%) あり, 反復穿刺が重要であると思われた. FNAを手術適応の決定に際し重視することで, 甲状腺手術例における悪性腫瘍の割合が増加し, 不要不急の手術を減少させることが可能になるものと考えられる. 一方, 超音波ガイド下にFNAを行うことで, FNAの診断精度を上げる努力をするとともに, 偽陰性例を見逃さないような総合診断を心がけるべきであると思われた.
著者
平田 智也 石永 一 竹内 万彦
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.775-780, 2020

<p>Inflammatory pseudotumor is a benign disease that is histopathologically characterized by the presence of non-specific chronic inflammatory cells. Clinically, these tumors often show neoplastic growth, and it is difficult to differentiate them from neoplastic lesions by imaging findings alone. Inflammatory pseudotumors have been found to occur at various sites, but are rarely found in the head and neck region. Although surgical excision and steroid therapy are effective, no evidence has been established yet. We report a case of an inflammatory pseudotumor that occurred in the cheeks.</p><p>A 51-year-old man with right cheek swelling and pain had visited a local physician a month earlier and antibiotics had been prescribed. Since the symptoms did not improve, CT was performed as an aid to diagnosis, and an abscess or neoplastic lesion was suspected in the cheek. Cytologic examination revealed many neutrophils and histiocytes, but no evidence of malignancy. MRI showed an abscess in the masseter muscle with spread of the inflammation to the surrounding tissues. Antibiotics and steroid therapy were initiated and the swelling diminished in size. When the steroid was withdrawn, the swelling enlarged again. Therefore, inflammatory pseudotumor, non-epithelial tumor, and malignant lymphoma were considered in the differential diagnosis. An excisional biopsy was performed and the diagnosis of inflammatory pseudotumor was established. A subset of the cells was positive for IgG4, but there was no definitive evidence of IgG4-related diseases.</p><p>Treatment of inflammatory pseudotumors includes surgical resection, steroid therapy, radiation therapy, chemotherapy; the efficacy of steroid therapy has been reported for inflammatory pseudotumors in the head and neck region. Although evidence has still not been established, steroid maintenance therapy is effective for preventing recurrence. The patient is currently receiving steroid maintenance therapy on an outpatient basis, and has shown no evidence of recurrence of the inflammatory pseudotumor.</p>
著者
千代延 和貴 石永 一 大津 和弥 竹内 万彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.757-762, 2015-06-20 (Released:2015-07-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

魚骨異物は口蓋扁桃や舌根部に多く認められ, 視診のみで診断可能なことが多いが, 口腔咽頭の粘膜下に刺入した魚骨異物は診断および摘出が困難な場合が多い. 今回舌筋層内に迷入した魚骨異物症例を経験した. 症例は49歳男性で, 鯛を摂食した直後から咽頭痛を自覚し, 近医耳鼻咽喉科にて粘膜下異物が疑われ当科紹介となった. 視診上は口腔咽頭に魚骨を認めず, CT を撮影すると舌筋層内に魚骨異物を認めたため, 緊急手術を行った. 術中にも触診では魚骨を発見できなかったため, 術中 CT 撮影を行い, 魚骨の存在位置を確認し摘出し得た. 本症例は魚骨が舌筋層内に迷入したまれな症例であり, 異物の存在位置の評価に術中CTが有効であった.
著者
湯田 厚司 石永 一 山中 恵一
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スギ花粉症の次世代治療に期待される舌下免疫療法を本邦で初めて小児例で検討し、安全性と有効性を確認した。同法は小児でも安全に施行でき、成人よりも効果的であった。本研究の遂行で様々な課題もわかり、特に本法が有効であったスギ花粉症例で、合併するヒノキ花粉症に無効な例が半数近く存在した。治療と同時に作用機序解明に免疫学的変化の検討も行った。治療により、誘導性制御性T細胞の増加、治療有効群でスギ花粉特異的IgG4の増加、治療無効群で血清IL-33の増加が確認できた。血清L-31, IL17Aには変化がなかった。