著者
石渡 良志 内田 邦子 長坂 洋光 塚本 すみ子
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.69-76, 2010

A 90 cm sediment core (HAR 99A) from Lake Haruna, Gumma Prefecture, Japan was dated by tephrochronology, lead-210 and cesium-137 methods and was compared stratigraphically with the cores obtained in 1966 (HAR 96B) and 1971 (HAR 71). For the HAR 99A core, the 24-26 cm depth layer was estimated to be AD 1963 by <sup>137</sup>Cs. The tephra layer in 62-66 cm depth was identified to be volcanic ashes from Asama volcano eruption (Asama-A tephra: As-A) in AD 1783. Average mass sedimentation rate (AMSR) for 1963 to 1999 (0-26 cm depth) is 0.050 g cm<sup>-2</sup>yr<sup>-1</sup> and that for 1783 to 1963 (25-62 cm depth) is 0.033 g cm<sup>-2</sup>yr<sup>-1</sup>. AMSR for the 0-62 cm depth obtained by <sup>210</sup>Pb ranges between 0.052 and 0.058 g cm<sup>-2</sup>yr<sup>-1</sup>. In addition, it is proposed that the previous assignment of As-B (AD 1108) for a tephra layer at 40-50 cm depth of the HAR 71 core should be changed to As-A tephra (AD 1783).
著者
河村 公隆 山崎 正夫 石渡 良志
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in organic geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.30-36, 1978-09

1.榛名湖,琵琶湖表層堆積物中にC_<18:2>,C_<18:3α>を含む不飽和脂肪酸を検出した。2.しかしその深度分布は二つの湖で大きく異なる。榛名湖では不飽和酸は飽和酸に対して深さとともに急速に減少するが,琵琶湖では大きな変化は観察されなかった。この差異の原因の一つとして堆積物の質的差異があげられる。3.琵琶湖の場合,5mまでの深さにおいてもC_<18:2>,C_<18:3>ポリ不飽和酸を検出した。それらは,0.2,2,3.5m附近で大きな濃度値を示した。これはポリオ飽和酸の供給量の変動によるものと解釈される。ポリ不飽和酸の供給量は当時の湖の水温,気温の変動を反映している可能性がある。
著者
川上 紳一 大野 照文 高野 雅夫 酒井 英男 石渡 良志
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、ナミビアで採集した縞状炭酸塩岩の解析に基づいて、スノーボール・アース仮説を検証することである。現生代後期の氷河堆積物を覆う縞状炭酸塩岩は温暖な気候で堆積したものと考えられており、地質学における大きな謎であるとされた。氷河堆積物と縞状炭酸塩岩の組み合わせは、地球表面が前面的に凍結したとすると合理的に説明ができる。しかし、そのようなことは気候学的にありえないとされてきた。申請者らは、ナミビアで採集したラストフ縞状炭酸塩岩の化学的分析を行い、縞の解析から堆積速度の見積もりを試みてきた。層厚14mの縞状炭酸塩岩は、酸素、炭素同位体比からみて、3つの区間に区分されることが明らかになった。酸素同位体、炭素同位体比の変動は、スノーボール・アース仮説から導かれる論理的帰結と合致しているものと解釈された。現生代後期の炭酸塩岩の堆積環境の解析に、酸素同位体比が利用できることを世界に先駆けて示すことができた。一方、縞の解析では、区間2にメートルオーダーの明瞭な堆積サイクルが認められていた。このサイクルは、カルサイトに富んだ部分とドロマイトに富んだ部分の繰り返しで特徴づけられる。それぞれのサイクルには、ミリメートルスケールのラミナがあり、メートルスケールの堆積サイクルには、約1500枚のラミナが含まれていることが明らかになった。ラストフ縞状炭酸塩岩のラミナが1年ごとの環境の繰り返しを反映していることを論じた。一方、ナミビアのマイエバーグ縞状炭酸塩岩にはミリメートルスケールの縞とセンチメートルスケールの縞が形成されている。このような縞が潮汐リズムを反映したものである可能性を指摘した。この解釈によるとマイエバーグ縞状炭酸塩岩の堆積速度は、約25cm/年となる。これらの縞の解析から縞状炭酸塩岩に記録された炭素同位体比の変動の時間スケールは、数1000年であると見積もられた。これは新生代古第三紀の突発的温暖化事件(LPTM)における炭素同位体比の変動の時間スケールに比べ、一桁近く小さいことになる。以上の結果を総合すると、われわれが採集した氷河堆積物を直接覆う縞状炭酸塩岩の地球化学的特徴は、スノーボール・アース仮説と符合していることが明らかになった。