著者
野村 真未 石田 健一郎
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-51, 2017 (Released:2018-04-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

細胞が細胞としてあり続けるため,また自己増殖するためには,エネルギー生産や細胞分裂は欠かすことができない機能であり,これらの機能はすべての細胞が持ち合わせている.一方,主に単一の細胞のみで生活する微細藻や原生生物に目を移してみると,各々の細胞は実に多様で,特殊な機能を有していることが分かる.例えば,珪藻の細かくて精巧なガラスの殻形成や,ハプト藻のハプトネマの急速なコイリング,渦鞭毛藻のベールを使った捕食,そして,有殻アメーバの細胞外での殻形成など,これまでの細胞研究から得られた知見では説明できない現象が多数存在する.本稿では,有殻アメーバの殻形成という現象に焦点をあてた.有殻アメーバは,仮足以外の細胞質を殻の外に出すことはなく,殻を細胞分裂に先立って新たに構築し,新規殻へ娘細胞を送り込むという分裂様式を持っている.驚くべきことに,新規殻は細胞外の鋳型のない空間に,レンガ状の鱗片を仮足を使って積み上げることで構築される.Paulinella chromatophoraは,安定した培養系の確立された数少ない有殻アメーバの一種である.我々は,P. chromatophoraを材料として,有殻アメーバによる被殻構築という現象が,細胞のどのような構造や機能により引き起こされるのかを理解することで,細胞が持つ機能の可能性を探ってきた.
著者
石田 健一郎 白鳥 峻志
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

食作用(phagocytosis)は原核生物にはないとされてきたが、我々は近年、バクテリアなどを食作用のように細胞で包み込んで捕食する2つの原核生物を発見し、培養株(SRT547株およびSRT713株)の確立に成功した。本研究では、これら2つを含む近縁バクテリアの比較ゲノム解析から、この食作用に似た捕食に関連する遺伝子を推定するとともに、それら遺伝子の機能を解析し、原核生物で初めて発見された“食作用”のメカニズムとその進化を明らかにする。これにより、真核細胞の基本性質である食作用の起源の理解に示唆を与え、真核細胞の誕生やミトコンドリアと葉緑体の獲得を含む細胞進化の理解に繋がる新知見を提供する。
著者
中山 卓郎 石田 健一郎
出版者
日本原生生物学会
雑誌
原生動物学雑誌 (ISSN:03883752)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.27-31, 2008

<p>It is widely believed that all known plastids originated from a single primary endosymbiosis in which a cyanobacterium was engulfed and retained by a heterotrophic protist. However, there is an interesting organism called <i>Paulinella chromatophora</i> that may change this widely accepted view.</p><p><i>P. chromatophora</i>, a cercozoan protist, is a fresh water testate amoeba that contains two cyanobacterium-like structures called "cyanelles" in the cell. Past researches have failed to cultivate the cyanelles separately from the host cells and demonstrated that the cyanelles divided within the host cells and were handed over to daughter cells. In recent studies, it has been revealed that the cyanelle of <i>P. chromatophora</i> does not share a common ancestor with known plastids but originated from a cyanobacterium that belongs to the <i>Synechococcus/Prochlorococcus</i> lineage.</p><p>These situation led the idea that <i>P. chromatophora</i> represent the second example of the primary endosymbiosis that is in progress. Further study on the symbiotic relationship between the cyanelles and the host seen in this organism would provide important insight for the mechanism of primary plastid acquisition.</p>
著者
中山 卓郎 石田 健一郎
出版者
日本原生生物学会
雑誌
原生動物学雑誌 (ISSN:03883752)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.27-31, 2008 (Released:2017-09-09)
参考文献数
21

It is widely believed that all known plastids originated from a single primary endosymbiosis in which a cyanobacterium was engulfed and retained by a heterotrophic protist. However, there is an interesting organism called Paulinella chromatophora that may change this widely accepted view.P. chromatophora, a cercozoan protist, is a fresh water testate amoeba that contains two cyanobacterium-like structures called “cyanelles” in the cell. Past researches have failed to cultivate the cyanelles separately from the host cells and demonstrated that the cyanelles divided within the host cells and were handed over to daughter cells. In recent studies, it has been revealed that the cyanelle of P. chromatophora does not share a common ancestor with known plastids but originated from a cyanobacterium that belongs to the Synechococcus/Prochlorococcus lineage.These situation led the idea that P. chromatophora represent the second example of the primary endosymbiosis that is in progress. Further study on the symbiotic relationship between the cyanelles and the host seen in this organism would provide important insight for the mechanism of primary plastid acquisition.
著者
野崎 智義 洲崎 敏伸 坪井 敏文 守屋 繁春 津久井 久美子 松崎 素道 橘 裕司 石田 健一郎 小保方 潤一 橋本 哲男 金子 修 稲垣 祐司 井上 勲 永井 宏樹 黒田 誠 永宗 喜三郎
出版者
国立感染症研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

真核生物の進化、及び、オルガネラ(細胞内小器官)の進化は、生物学の最も重要な基本命題である。一般に葉緑体・ミトコンドリアなどのオルガネラは細菌の内部共生によって生まれ、真核生物に革新的な代謝機能を与えた。本研究は(1)オルガネラ進化につながる一次・二次共生関係を生物界から広く検出し、共生を可能とする仕組みを理解する、(2)進化過程にある共生・寄生オルガネラの機能と維持機構を解明する、(3)「内部共生体に駆動される真核生物進化」という新しいパラダイムを確立する、(4) オルガネラ移植等の細胞工学手法による試験管内生物進化に必要な技術基盤を確立することを目指し研究を展開し成果を生んだ。
著者
石田 健一郎
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2009-2011
著者
橋本 哲男 石田 健一郎 稲垣 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フォルニカータ生物群は嫌気環境に生育する鞭毛虫からなる系統群であり、環境DNA解析から多様な生物種の存在が示唆されている。これまでに調べられたいずれの生物も、酸素呼吸を行う典型的なミトコンドリアをもたず退化型のミトコンドリアをもっているため、ミトコンドリアの縮退進化を解明する上で適切なモデル系と考えられる。しかしながら、実際に単離・培養されているフォルニカータ生物の種類は必ずしも多くないため、自然環境中から新奇フォルニカータ生物を見出すことを目的として研究を行った。これまでに数種のフォルニカータ生物を含む10種以上の新規嫌気性真核微生物の単離・培養株化に成功し、一部については記載を行った。