著者
石神 優紀子 山﨑 薫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.178, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】三宅島の灰干しは、火山灰と火山灰の間に素材を挟み込み、低温熟成させた干物である。火山灰は水分を吸い上げる特性を活かし、空気に触れさせないように食材を乾燥させて仕上げる。比較的水分含量が高く、旨味が増して味は格別といわれている。灰干しは一般的に魚やワカメなどの水産物や肉などが主流であり、野菜の灰干しはあまり事例がないため、三宅島の新規特産品開発候補として、野菜の灰干し試作を行った。【方法】製造方法に関しては、魚類の灰干し作成法を応用して用いた。今回、使用した火山灰は入手量の関係上、桜島火山灰を550℃で焙煎し、使用した。17種類の野菜を素材に灰干しを行い、試食、加えて水分含量を測定した。【結果】試食結果として、赤パプリカはトマトのような甘みを、黄色パプリカはフルーツのような甘みを感じたという意見を多く得た。また、ニンジンは甘く、食べやすくなり、生のニンジンを食せない、ニンジンは嫌いだというパネルからも好評価を得た。他にもナス、キュウリ、サツマイモ、カボチャが好評であった。ナスはアオジソの様な爽やかな香りがし、心なしか甘く、食べやすくなった。キュウリは生の状態時の青臭さがなく、スイカの様な爽やかな香りがし、甘くて食べやすくなった。サツマイモとカボチャは、より甘くなるだけではなく、風味も増し、しっとりした食感を得ることができた。しかし、白菜とエリンギであった。この2つは野菜に灰の匂いが移り、土臭かったりゴム臭かったりし、後味が悪く、灰干しに向かない野菜は葉物野菜とキノコ類であるということも分かった。灰干し野菜は生またはゆで処理のみの状態の野菜と比較した場合、水分含量に大きな差は認められなかった。
著者
山﨑 薫 石神 優紀子 奈良 一寛 石丸 佳奈 綿貫 仁美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】相模原市川尻財産区が所有する本沢梅園には3haの敷地に約1000本の梅の木が栽培されており,開花時には「本沢梅園まつり」が開催され,収穫期には「梅のもぎ採り」が体験できる。その梅を原料に城山湖里地里山観光振興協議会が開発した梅ジュース「梅ほ乃香」が製造されている。「梅ほ乃香」の飲用以外の活用法と新たな梅関連産品開発相談を受けていることから,本研究は地域に愛され,息の長い商品展開をできる産品提案を目的とした。 【方法】本沢梅園産白加賀を使用した「梅ほ乃香」を使用し,菓子を中心に試作提案品を18品に絞り込んだ。梅ゼリーに関しては,当該地域で開催された「しろやま得の市」に訪れた男女55名を対象に試食とアンケート調査を行った。加えて本学学生39名を対象に,順位法を用いて3種類の梅ゼリーの官能評価も行った。 【結果】ゼリーやグミ,飴等では爽やかな甘酸っぱさが感じられ,羊羹や大福等の和菓子では餡の甘さと梅の酸味の相性が大変好ましかった。マフィンやパウンドケーキ,生キャラメルの試作時にバターを使用した結果,梅の風味が薄くなったため,サラダ油に替え,最終調整を行った。しかし,乳製品でもチーズや牛乳,ヨーグルトとの相性は良いことが分かった。アンケート調査の結果は,回答者の9割以上が総合的に高評価を示した。食感に関しては,かたさに好みの差が認められたため,性別・年齢層を統一し,官能評価を行った結果,パネル間に有意差は認められなかった。よって,性別・年齢層に関係なく,提案品の食感の好みは個人差と判断した。現在,好評を得た梅ゼリーの商品化を目指し,味や食感,副原料の更なる検討,消費または賞味期限,販売価格の検討も進めている。
著者
山﨑 薫 石神 優紀子 綿貫(吉澤) 仁美 奈良 一寛 池田 加奈 飛川 由梨枝 田中 友里恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】自然界には多くの有用微生物が存在し,近年,自家製の天然酵母を使用したパン作りが注目されている。そこで,自然豊かな本学町田校舎敷地内に生息する野草から野生酵母を採取することを目的とし,パン製作への応用を検討した。【方法】試料に本学の敷地内から採取した12種類の野草を用い,各試料を1.0%糖液に浸け,30℃で24~48時間培養後,普通ブイヨン寒天培地等にて培養,目視にて形状別にコロニーを釣菌し,液体培地に培養,酵母様の細菌が単一になるまで寒天培地から釣菌,液体培地への培養を繰り返し行い,目的の酵母を単離した。単一になった菌は形状や構造などを肉眼・顕微鏡観察,カタラーゼ活性試験等を行った。加えて,糖の資化性試験を行った。市販ドライイーストを比較対照のためにポジティブコントロールとして使用した。単離野生酵母を食品(パン)に応用するために,市販温州ミカンを活用した自家製天然酵母パンの製作方法を参考に,市販温州ミカン発酵液+ノアザミ酵母(本学敷地内より分離)発酵液を調整し,実際にパン製作をして市販ドライイーストで製作したパンと比較した。【結果】一試料から平均3~5種の形状が異なるコロニーを確認し,野草から7種の酵母様の細菌を採取した。糖資化性テストの結果,いずれも病原細菌ではないことが明らかになった。単離ノアザミ酵母発酵液に市販温州ミカン発酵液も併用した自家製天然酵母パン製作を行ったところ,発酵時間は市販ドライイーストを用いた場合の約3倍近くかかったが,ドライイースト利用時に劣らない発酵力が認められた。今後は単離した野生酵母のみにて,パン製作に必要な発酵力を持たせる条件を探索していく予定である。
著者
石神 優紀子 山﨑 薫 奈良 一寛 南澤 瞳 綿貫 仁美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.195, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】神奈川県相模原市緑区城山地域は境川の上流域に位置し,当地域では季節の自然と触れ合えるイベントの一つとして「小松コスモスまつり」が行われており,地場産物販売とコスモスの摘み取りが人気を博している。地域活性も兼ね,コスモスを使用した産品開発相談を同地域より受けたことから,本研究では新たな地場産物販売品の検討を行うため,食用コスモスの特性を捉えた後,利用法含め,地元の方々に受け入れて頂ける産品提案を目的とした。 【方法】食用コスモスが入手可能となる旬期までは同じキク科である食用菊等を代用し,花の特徴やイメージを掴み,コスモスを使用した産品開発アイディアに繋げることも行った。次いで,食用コスモスの花弁(濃ピンク,桃色,白,黄色)を用い,試作を行い,最終提案として7品に絞り込んだ。また,平成27年度「小松コスモスまつり」スタッフを対象に花弁色が濃ピンク色の食用コスモスでソースを作成したブラマンジェの試食会を行い,その他の試作品については写真を用い,アンケート調査も実施した。 【結果】食用花の花弁を利用したシロップ漬けは花種によりシロップ液が青臭く,渋みが目立った。しかし,食用コスモスで作成したシロップは青臭さや渋みが認められず,特に濃ピンク花弁使用シロップ液を煮詰め作成したソースは色鮮やかで凡庸性の高いものに仕上がった。男性20名,女性13名の総計33名から得たアンケート調査結果は試食結果含め,総体的に高評価を得ることができ,クラッシュゼリーやピクルス等,いずれも商品化を進めて欲しいとの結果を得た。食用コスモスの調理・加工特性を捉えることにより,更なる産品提案や家庭での利用可能なレシピ提案も計画している。
著者
石神 優紀子 山﨑 薫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 食用花の有する機能性に着目し、本研究では食用花抽出物が抗菌作用を有しているか、品種や同じ品種間でも花色により抗菌作用に違いが認められるか検討を行った. <b>方法</b> ペーパーディスク法にて、供試菌株に<i>Staphylococcus</i> <i>aureus</i> NCTC10788(以下、<i>S</i>. <i>aureus</i>)、<i>Echerichia</i> <i>coli</i> NCTC12923を用いた.供試菌株は滅菌生理食塩水でMcFarland No.0.5相当(1.5&times;10<sup>8</sup>cfu/mL、透過度74.3%)に調整し、使用した.試料20種は採取後、洗浄し、花弁のみにした後、乳鉢で磨砕し、ろ紙No.2を用いてろ過し、搾汁液を得た.搾汁液は無菌化にてフィルター(孔径5&mu;m)滅菌処理した.滅菌済みペーパーディスク(直径8mm)に、各弁搾汁液を添加・吸収させ、調製菌液を塗抹した培地中央部に置き、一晩(約18時間)35℃下で培養後、ハロー形成(阻止円)を確認した.<b>結果</b> 阻止円が認められた試料中、ベゴニア(<i>Begonia</i> <i>semperflorens</i>&ndash;<i>cultorum</i>)花弁色の赤では<i>S</i>. <i>aureus </i>NCTC10788において67%の確率で、ピンクでは両供試菌株において23%の確率で10mm以下の阻止円を確認した.白において阻止円は認められず、赤とピンクにおいて阻止円が確認された事から、ベゴニア含有アントシアニンが抗菌性に関与しているのではないかと考えている.
著者
山﨑 薫 奈良 一寛 石神 優紀子 杉村 愛
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 市販グミには様々な色があり,華やかだが,花の色素を活用しているものは大変少ない.よって,食用花の活用を検討している中,食用花に含まれる色素をグミに活用した場合,どの程度,色付けにいかせるのか検討した.<br><b>方法</b> 食用花として本学で栽培しているマリーゴールド(オレンジ・イエロー),カーネーション(レッド),八重桜(ピンク),キンギョソウ(レッド・ホワイト・イエロー),ペチュニア(レッド・ホワイト),ベゴニア(レッド),ジニア(オレンジ),ガザニア(イエロー),バラ(レッド)の9品種,花弁色違い含め13品目を試料とした.花弁色素と甘酸っぱさを生かせる条件を検討し,シロップを作成後,グミ作りに用いた.食用花試料本体,作成シロップ及びグミ,各々の色差とpH測定を行った.<br><b>結果</b> 電子レンジ使用により,花弁色が抜けることが抑えられ,鮮やかな色合いを出すことができた.作成グミの色差測定結果の特徴として,ゼラチンが黄色を有していたため,その影響を受けたものもあった.pH測定の結果,レモン果汁添加前のシロップは中性でレモン果汁添加後,酸性になったが最終的に作成したグミはゼラチン等の素材の影響を受け,中性となった.官能評価の結果,一番好しかったものは八重桜のシロップを用いたグミであった.グミにおける色素の安定性も認められ,果汁を用いたグミと同様,活用できると判断した.食用花シロップは他の料理にも活用できると考えている.