著者
荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2013 (Released:2013-08-23)

【はじめに】節分に巻きずしを食べる習慣の起源・発祥には諸説がある。江戸時代から明治の初めに大阪の商人達が、商売繁盛、無病息災を願って行われたものが、その後大阪鮓組合や大阪海苔問屋協同組合の販売促進の宣伝により大阪を中心に広がり、1989年広島のセブンイレブンが最初に「恵方巻き」として販売し全国に広がったとされる。【目的】本学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」において調査した行事のうち、認知度、喫食経験ともに高値であった節分の行事食の中から、巻きずし(のり巻き)に注目し、47都道府県におけるその喫食変化を調べることにより、県や地域の違いを掘り起こすことを本研究の目的とした。【方法】特別研究のデータを各都道府県単位で、その調査単位に10年以上居住する対象者のみを抽出し、「節分認知」「節分経験」「喫食経験」「巻きずしの喫食状況」「巻きずしの調理状況や食べ方(以前)」「巻きずしの調理状況や食べ方(現在)」「変化した時期」の項目について集計し、その喫食変化について検討した。【結果】節分に丸かぶり寿司あるいは、恵方巻きと呼ばれる太巻きずしを食べる習慣は、他の地域に比べ、大阪府を中心に近畿圏に多くみられた。「福巻寿司発祥の地の碑」がある栃木県においても、大阪より少ないが、他の関東圏より「毎年食べる」が多く、「途中から」と答えたものは少なかった。「外で食べる」が以前も現在も少なく、「買う」か「家庭で作る」が多かった。これは、巻きずしの食習慣の発祥に由来すると思われる。
著者
岸田 恵津
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.184, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】野菜を蒸すと甘く感じる傾向がある。本研究では,キャベツの蒸し加熱による甘味の変動について,糖含量測定と官能評価等により検討を行った。<BR> 【方法】キャベツは兵庫県産のものを市場で購入して試料とした。蒸し加熱は通常の100度蒸し(10分,20分)に加え,低温スチーミング鍋を用いた70度(20分,30分),電子レンジ加熱(30秒,60秒)により行った。糖含量はF-キットを用いてグルコース,果糖,ショ糖を定量した。官能評価は女子大学生22人をパネルとし,各蒸し加熱における最適加熱時間の試料に対して,甘味,硬さ,シャキシャキ感,総合評価等について評点法で行った。 <BR> 【結果】生キャベツの糖含量は,グルコース1.9g/100g,果糖2.0g,ショ糖0.2gであった。加熱方法別に糖含量を比較すると,いずれの加熱方法でも各糖含量は,生との間に有意差は認められなかった。官能評価では,硬さ,シャキシャキ感は生,70度,電子レンジ,100度の順に評点が高値であった。甘味の評点は逆の順で,100度が最も甘いと評価され,生に対して100度蒸しのみに有意差が認められた。好みと総合評価は,いずれの試料でもほぼ同程度であり,試料間に有意差はなかった。官能評価の項目間の相関を調べると,硬さと甘味の評点間に負の相関を示した。 <BR>100度蒸しが最も甘いと評価されたが,糖含量はいずれの加熱方法でも変化せず甘味と対応しないこと,甘味の感じ方には感覚的な硬さなどのテクスチャーの違いが関係していることが示唆された。
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.147, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。
著者
高橋 洋子 安藤 友里恵 山口 智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.152, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】 新潟県内の家庭で親しまれてきた郷土料理のうち、これまで研究の対象にされたことが殆どなかった‘くじら汁’に着目した。地域や世代による喫食経験や喫食状況を明らかにするとともに、その背景について検討することを目的とした。【方法】 2012年10~12月に、新潟県内在住の男女を対象にアンケート調査を行い、868名の回答を年代・性別・居住地域に分けて分析した。【結果】 ‘くじら汁’について、新潟県内の次のような状況が明らかになった。(1)認知・喫食状況:認知度・喫食経験度とも若い世代ほど低く、70歳以上では全員が「食べたことがある」のに対し、19歳以下では認知度が48%・喫食経験度は21%であった。なお、喫食回数は全ての年代で減少傾向にあり、喫食経験者の62%が「以前に比べて食べる回数が減った」と回答した。これらのことから、鯨肉の流通状況の変化が‘くじら汁’の認知・喫食状況に影響を及ぼしている様子が示唆された。(2)嗜好性:性別では男性に、年齢では年代が高いほど、好まれる傾向にあった。独特のにおいと油っぽさ、食感などにより、好き嫌いが分かれ、喫食経験者のうち「好き」は46%、「嫌い」は24%であった。(3)具材と喫食時期:塩くじらのほか、新潟市周辺では‘なす’、中越地方では‘ゆうがお’が多く使われ、夏に食す人が多かった。一方、下越地方の阿賀町では‘うるい’(山菜)を使用し、春に食す人が多くみられ、地域による使用具材の特徴と、それを反映した喫食時期が明らかになった。今後は、他県の‘くじら汁’と比較するなどして、新潟県の郷土料理としての‘くじら汁’の実態を明らかにしていきたい。
著者
藤原 智美 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.129, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】食品廃棄物である茶殻は旨味成分が茶葉の約80%も流出しており、飲料としての価値はないが、5大栄養素は変化しておらず、カテキン類も60%近くが残存しており、まだまだ多方面で利用可能である。全国の食品廃棄物リサイクルの用途は肥料・飼料化が75%を占めており、茶殻の肥料化は、新たな商品価値を生み出すと考えられた。また高抗酸化能やグルタミン酸が豊富な事で知られる「茶樹きのこ」はお茶の樹に生息するきのこであり、茶殻を利用した菌床開発により茶樹きのこのような付加価値の高いきのこを栽培できるのではないかと考え、菌床開発および収穫後の成分分析を行う事を目的とした。【方法】菌床はおがくずと米糠が1瓶あたり10:9になるように配合し、含水率を80%に調整したものを基本培地として、茶殻を米糠の10、30、60%置換した培地の計4培地を用意した。1瓶あたり15gの菌を接種後、菌糸蔓延→菌かき→子実体形成の工程を踏み、ヒラタケを栽培した。採取後、HPLC法にて遊離アミノ酸、グアニル酸、DPPH法により抗酸化能の測定を行った。【結果】米糠を30%茶殻に置換することで、他の培地より子実体の形成・成長が早く栽培が容易になることが明らかとなったが、60%置換すると菌糸がうまく蔓延できないことが判った。成分分析の結果、遊離アミノ酸は茶殻を添加することで、アラニン、アルギニン、セリン、チロシン、ロイシン、グルタミン酸が有意に増加し、減少する遊離アミノ酸は見られなかったのに対し、核酸関連物質のグアニル酸は有意に低下してしまうことが判った。今回得られた成分値の変化が味に違いをもたらすのか、官能評価によって今後検討していく。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 曽根 保子 伊坂 亜友美 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.75, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】アスコルビン酸(ASA)は調理過程において容易に酸化、加水分解されてジケトグロン酸(DKG)になる。ASA酸化生成物は反応性が高いジカルボニル構造を有することから、タンパク質とのメイラード反応が懸念される。近年このメイラード反応が生体内においても進行し、様々な疾病に関わることが報告され、飲食物由来のメイラード反応生成物の健康への影響についても関心が向けられるようになった。本研究ではASA酸化生成物と食品タンパク質との反応生成物の生体への影響について検討を行った。【方法】食品の加熱調理のモデル系として、ASA、DKG(50mM)とカゼイン(10mg/ml)との反応をリン酸緩衝液(0.1M、pH6)中、70℃で一定時間行い、ジカルボニル化合物の生成をHPLC法により定量した。また、反応生成物の高分子画分を用いて、ヒト腸管上皮モデル細胞Caco-2について増殖への影響をMTT法により、AGEレセプター(RAGE)のmRNA発現をリアルタイムRT-PCR法により調べた。【結果】DKGとカゼインとの加熱反応の過程において、数種のジカルボニル化合物の生成が確認され、その中でグリオキサール(GO)量は反応初期において高く、反応時間15分以降GO量が著しく減少した。DKGとカゼインとのメイラード反応生成物(DKG-Casein)の培養細胞への影響を調べたところ、GOおよびMGの場合よりも低濃度での細胞増殖抑制が示された。さらにCaco-2のRAGEのmRNA発現は、DKG-Casein処理により、カゼイン処理の約1.4倍に有意に上昇した。よって、食品中のASA由来メイラード反応生成物が生体に影響を与える可能性が示唆された。
著者
石神 優紀子 山﨑 薫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.178, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】三宅島の灰干しは、火山灰と火山灰の間に素材を挟み込み、低温熟成させた干物である。火山灰は水分を吸い上げる特性を活かし、空気に触れさせないように食材を乾燥させて仕上げる。比較的水分含量が高く、旨味が増して味は格別といわれている。灰干しは一般的に魚やワカメなどの水産物や肉などが主流であり、野菜の灰干しはあまり事例がないため、三宅島の新規特産品開発候補として、野菜の灰干し試作を行った。【方法】製造方法に関しては、魚類の灰干し作成法を応用して用いた。今回、使用した火山灰は入手量の関係上、桜島火山灰を550℃で焙煎し、使用した。17種類の野菜を素材に灰干しを行い、試食、加えて水分含量を測定した。【結果】試食結果として、赤パプリカはトマトのような甘みを、黄色パプリカはフルーツのような甘みを感じたという意見を多く得た。また、ニンジンは甘く、食べやすくなり、生のニンジンを食せない、ニンジンは嫌いだというパネルからも好評価を得た。他にもナス、キュウリ、サツマイモ、カボチャが好評であった。ナスはアオジソの様な爽やかな香りがし、心なしか甘く、食べやすくなった。キュウリは生の状態時の青臭さがなく、スイカの様な爽やかな香りがし、甘くて食べやすくなった。サツマイモとカボチャは、より甘くなるだけではなく、風味も増し、しっとりした食感を得ることができた。しかし、白菜とエリンギであった。この2つは野菜に灰の匂いが移り、土臭かったりゴム臭かったりし、後味が悪く、灰干しに向かない野菜は葉物野菜とキノコ類であるということも分かった。灰干し野菜は生またはゆで処理のみの状態の野菜と比較した場合、水分含量に大きな差は認められなかった。
著者
井部 奈生子 大坪 俊輔 肥後 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.193, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】小麦粉の代替素材として米粉・雑穀粉(全粒粉を含む)を有効活用する方法を模索する課題に取り組み、約6年間の実験期間中に、すいとん、クレープ、パンケーキ(焼き、蒸し)、クッキーの5種類の調理加工品を作成し官能評価を行ってきた。そこで、今まで行った各穀粉の官能評価結果を整理することにより、嗜好性を満足させる調理加工品を作る上での問題点を明らかにしようとした。 【方法】1)薄力全粒粉、ライ麦粉、日本米粉、玄米粉、赤米粉、そば粉、あわ粉、ひえ粉の各試料粉体30~100%に薄力小麦粉を加えた穀粉に、水または副材料(牛乳、卵、砂糖、バターまたはショートニング)を加え、すいとん(ゆで加熱、製品水分約80%)、クレープ(焼き加熱、製品水分約80%)、パンケーキ(熱風加熱、製品水分約50%)、パンケーキ(スチーム加熱、製品水分約57%)、クッキー(オーブン加熱、製品水分約7%)を作成し、2)男女学生n=16~206をパネルとし、硬さ、もちもち感、口どけ、色調、総合的な嗜好について官能評価を行った。 【結果・考察】1) 5種類の調理加工品とも、総合的な嗜好に最も大きく影響する項目は味・あと味であり、2) クッキー、パンケーキ、クレープ、すいとんの順に穀粉間の味・あと味に対する評価の差が大となり、3)ひえ、はと麦、赤米の味・あと味が悪いと評価された。4)柔らかさ(硬さ)、もちもち感などの食感に対する評価の差は、パンケーキ(スチーム加熱)で最大となり、5)赤米、日本米、あわは柔らかくもちもちしていると評価されたが、6) クッキーでは粘弾性が強いこれらの穀粉が最も硬いと評価された。7)粉の焙焼がクッキーの食感を改善し、オレンジピールなどの食材の混合が味・あと味を改善したので紹介する。
著者
福島 祐里 水田 美咲 高村 仁知
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.182, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】熱帯に位置するインドネシアは日差しが強く、ここで生育する植物は紫外線による酸化を防ぐため、強い抗酸化性を有しているとされる。インドネシア産メリンジョ(Gnetum gnemon L.)は高い機能性を有し、現地ではメリンジョチップス(ウンピン)などとして食用とされているが、口内に残る特徴的な苦みが国外における普及を妨げている。本研究ではメリンジョの有効利用を目指し、メリンジョ粉末を用いた菓子の開発を試みた。【方法】メリンジョ粉末を用いた焼き菓子としてパウンドケーキ、揚げ菓子としてドーナツ、生菓子としてプリンの3種を作成した。メリンジョ粉末量はそれぞれ0~20%とした。官能評価により嗜好性を評価するとともに、機能性成分であるgnetin C含量をHPLCにて定量し、抗酸化活性をOxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) 法で評価した。【結果】生菓子であるプリンでは、gnetin Cおよび抗酸化活性が保持されていたのに対し、焼き菓子であるパウンドケーキではプリンの約1/2に、揚げ菓子であるドーナツでは約1/4に減少した。しかし、プリンでは苦味が強く感じられたのに対し、パウンドケーキやドーナツでは苦味が減少した。また、弱い苦味を有する方が嗜好的には好まれる傾向にあった。
著者
大野 智子 鎌田 好美 佐々木 玲
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2013 (Released:2013-08-23)
被引用文献数
1

【目的】これまでに、ゼラチン、寒天、米粉をゲル化剤に用いて、秋田県の郷土料理のひとつである「豆腐カステラ」の高齢者用ソフト食の開発を試みてきた。本研究では、高齢者施設等で利用されている3種のゲル化剤を使用し、物性および食味を比較検討することを目的とした。【方法】材料は、絹ごし豆腐、上白糖、鶏卵とし、ゲル化剤には介護食用寒天、ゼラチン寒天、ソフティア2を用いて3試料を調製した。物性の測定は、消費者庁が定める特別用途食品「えん下困難者用食品許可基準」の試験方法に準拠した。試料を直径40mm、高さ20mmの容器に15mm充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な万能試験機(5544 社製:INSTRON)を用いて、直径20mm、高さ40mmの樹脂製のプランジャーにより、圧縮応力10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。得られた記録曲線から硬さ、付着性、凝集性を算出した。さらに、20代女子学生をパネルとし、評点法を用いて食味に関する官能評価を行った。評価項目は、外観、色、硬さ、べたつき、飲み込みやすさ、口中でのばらつき、口中での残留感、おいしさ、総合的評価の9項目とした。【結果】物性測定の結果、硬さ、付着性、凝集性のいずれも介護食用寒天とソフティア2を使用した試料がえん下困難者用食品許可基準Ⅱに該当した。ゼラチン寒天を使用した試料は他の試料に比べて有意に硬く、基準に該当しない結果となった。官能評価では、外観、硬さ、べたつき、飲み込みやすさ、口中での残留感、おいしさの6項目に関して有意差が認められ、ソフティア2、介護食用寒天、ゼラチン寒天の順によいと評価された。
著者
山口 享子 桑田 寛子 石井 香代子 木村 安美 高橋 知佐子 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.165, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】日本各地で伝承されてきた年中行事や通過儀礼のハレの日の食事が、親から子へ伝承されない傾向にある。そこで、それらの認知状況、調理状況や食べ方、これらが変化した時期などについて調査を行い、全国レベルで比較検討し、地域性(広島県と全国の違い)を明らかにすることが本研究の目的である。【調査】平成21年12月~平成22年8月に行った日本調理科学会の行事食・儀礼食調査において、47都道府県24,858名の学生及び一般(保護者を含む)からの回答を得た。その中から、広島県に10年以上住んでいる人及び住んだことがある人858名(学生及び一般)を抽出し、お節料理について全国調査結果と比較した。【結果】年中行事を代表する正月に供される食べ物11種類の「一般」の喫食頻度(毎年食べる率)は以下の順番になった。広島県:魚料理>かまぼこ>煮しめ>黒豆>なます>肉料理>数の子>田作り>昆布巻き>だて巻き卵>きんとん。全国:かまぼこ>煮しめ>黒豆>魚料理>肉料理>数の子>なます>だて巻き卵>田作り>昆布巻き>きんとん。お節料理の喫食頻度で一番多かったのは、広島県の一般の魚料理(93.2%)で、全国の一般(81.3%)よりも多く食べていた。広島県の学生の魚料理の喫食頻度は全国とほぼ同じで、約73%の者が毎年食べると答えている。一般の最も少なかったのは広島県も全国もきんとんであった。学生が最も多く食べている物は、広島県、全国ともかまぼこであり、最も少なかったものは昆布巻きであった。家庭で作る頻度が50%以上と多いものは、煮しめ>なます>肉料理であった。
著者
山本 直子 大内 和美 哥 亜紀
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.68, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】 塩麹は、米麹に食塩と水を加え醗酵熟成させたもので、独特の風味とうまみのある調味料である。この塩麹に漬けた肉や魚はうまみが増し、軟らかくなると言われている。これは米麹が産生する酵素が関係していると考えられる。そこで、本研究では塩麹の熟成する過程でのα‐アミラーゼ、グルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼについて、その酵素活性の変動を調べることとした。【実験方法】 塩麹は、米麹に10%の食塩(市販品に準ずる)を加え、しっとりなじむまでよく混ぜ、水を加え懸濁させて調製した。調製後は20℃で7日間熟成させ、その後4℃で冷蔵保存した。調整0日から経時的に酵素活性を測定した。α‐アミラーゼ、グルコシダーゼ及びカルボキシペプチダーゼの活性測定はキッコーマン(株)醸造分析キットを用いた。プロテアーゼ活性は基準みそ分析法に準じて測定を行った。また、pH測定および塩分を測定した。市販塩麹については開封後直ちに、各酵素活性、pH、塩分測定を行った。【結果】 調製した塩麹は0日から熟成完了の7日までの間で、酵素活性に大きな変動は見られなかった。調整後60日においてもほぼ同程度の酵素活性を有していた。市販塩麹は酵素活性があるものとないものに分けられた。活性のあった製品は今回調べた4つの酵素とも活性が見られ、活性のなかった製品は4酵素とも活性が見られなかった。すなわち市販塩麹では酵素が失活している製品も見受けられた。pHは調製および市販塩麹とも5.2~6.1と微酸性で、塩分は8.0~12%であった。
著者
後藤 葉子 中村 眞理子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-08-23)

【はじめに】入院期間の短縮等に伴い、医療機関でのリハビリテーションは終了しものの退院後、実際の生活機能の獲得に至っていない在宅障害者が多い。我々は2004年11月より、このような在宅障害者を対象に調理を通しての在宅支援活動を実施しており、現在は当事者主体のサークル団体として登録し、公的福祉施設を利用して調理活動を継続している。今回はこれまでのサークル活動の経緯から、在宅障害者にとって調理活動のもたらす効果について紹介する。 <BR>【サークルの内容】サークル登録メンバーは在宅障害者6名、家族メンバー3名、支援者(作業療法士)2名である。サークル活動は月1回の3時間半、身体障害者福祉センター調理室にて調理,会食、後片付けといったスケジュールで行い、材料費は実費負担としている。 <BR>【経過】自炊を必要する独居の女性1名からのスタートであったが、徐々に参加者が増え、現在は障害のため家事の役割を喪失した主婦、車椅子の重度障害者、コミュニケーション障害をもつ失語症の独居者、さらに家族の支援も含めた活動へと展開している。当初は身体機能を考慮しながら,我々が意図的にメニュー、調理方法・行程を決定していたが、次第に参加者の自主性を重んじるように心掛け、運営形態も当事者主体のサークル団体とした。現在はメニュー選択や役割分担など参加者間で決定し、料理レシピを自宅で再現する等、各々の役割や責任感、参加者同士の連帯感や協調性を養う場となってきた。 <BR>【まとめ】当事者主体のサークル活動を通じて、食べる楽しみや調理できる喜びの再獲得、また、できないと諦めていたことへの挑戦、障害者同士の交流の機会となっており、意欲的な在宅生活継続に繋がるっているものと考える。