著者
古井 博康 稲熊 隆博 石黒 幸雄 木曽 真
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.777-782, 1997-08-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

1.トマチンの簡易的定量方法の確立を目的として,吸光度を用いた測定方法を検討した.他に報告のある測定方法(HPLC法, GC法,バイオアッセイ法)による値を指標に,試料の調製法を検討した結果,あらゆるステージでのトマチン含量測定が可能になり,吸光度法の有効性が確認できた. 2.新しい吸光度法を用いて,栽培種トマト中のトマチン含量を調査した結果,果実では,緑熟期で16.5mg/100gFW,催色期で4.4mg/100gFW,完熟期で0.3mg/100gFWと,登熟過程において急激に減少することが確認された.また,果実(完熟期)においても,果肉部に比べ,表面の皮部や種子の周りのゼリー部にトマチンが多く分布する傾向が認められた. 3.トマト植物全体におけるトマチンの分布状態を調査したところ,果実,茎,根の器官に比べ,花や葉の器官に多く含まれることが確認された. 4.品種間におけるトマチン量の差について調査した結果,栽培種に比べ,病気に対する抵抗性の強い野生種であるL. pimpinellifolium, L. peruvianum, L. hirsutumのほうが,トマチン含量が多いことが認められた. 5.トマチンの分布状態が植物全体では一定でなく,器官,ステージ,品種の差によって含量に差が現われることから,トマチンがトマトの生態防御機構に関係を有していることが考えられた.本研究を行なうにあたり,終始ご指導,ご鞭撻を賜りました,東京大学名誉教授中村道徳先生,お茶の水女子大学名誉教授福場博保先生に深く感謝致します.
著者
横田 正 大嶽 徹朗 鈴木 里英 衛藤 英男 大嶋 俊二 稲熊 隆博 石黒 幸雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 45 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.449-454, 2003-09-01 (Released:2017-08-18)

Lycopene has aroused public interest owing to its role in preventing oxidative damage, cancer and aging, etc. These activities are considered to be due to its high ability of scavenging active oxygen species. In the present work, we have examined the products formed by the photosensitized oxygenation, hydrogen peroxide oxidation, m-chloroperbenzoic acid (mCPBA) oxidation and peroxinitrite oxidation of lycopene. We also isolated two oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group from tomato puree. In photosensitized oxygenation (singlet oxygen oxidation), we isolated apo-6'-lycopenal and 6-methyl-5-hepten-2-one. The reaction is supposed to proceed via 1,2 addition of singlet oxygen to 5,6 double bond of lycopene. In hydrogen peroxide and m CPBA oxidation, we isolated oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group (2,6-cyclolycopene-1,5-diol, 2,6-cyclolycopene-1,5-epoxide, 1,16-didehydro-2,6-cyclolycopene-5-ol and 1-methoxy-2,6-cyclolycopene-5-ol). It is proposed that the formation for these compounds occurs by rearrangement of lycopene 5,6-epoxide. In peroxinirite oxidation, we could classify the products into three types, 1) oxidative cleavage products, 2) non-cleavage oxidative products that have C40 carbon skeleton, and 3) Z-isomers of lycopene. The reaction pathways to form these compounds will be discussed.
著者
坂本 秀樹 森 啓信 小嶋 文博 石黒 幸雄 有元 祥三 今江 祐美子 難波 経篤 小川 睦美 福場 博保
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-99, 1994
被引用文献数
1 23

トマトジュースの連続飲用による血清中のカロテノイドの濃度の変化を調べた。また同時に飲用による血清中のコレステロール濃度の変化も調べた。65名の被験者を1日1本, 2本, 3本のトマトジュース飲用区と対照のリンゴジュース1本の飲用区の4区分に分け, 連続4週間の摂取を行った。<BR>1) リコペン濃度は飲用本数の増加に従い有意に増加し, 2本以上の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は3倍以上となった。<BR>2) β-カロテンは, トマトジュース中の含有量はリコペン量の約1/30であるにもかかわらず, 血清中において有意な増加を示し, 3本の区分では飲用後の飲用前に対する血清中濃度は約2倍近くとなった。<BR>以上の結果より, トマトジュースの飲用は血清中のリコペンとβ-カロテンの濃度上昇に有効であることが明らかとなった。<BR>3) トマトジュース中のリコペンはall-<I>trans</I>型がほとんどであるのに対して, 飲用後の血清中ではcis型の増加も見られたことから, 体内ではリコペンの異性化起きていることが示唆された。<BR>4) いずれの試験区においても, 血清中のLDL-コステロールをはじめとする脂質の増加は見られず, トマトジュースの飲用によるカロテノイドの血清中の濃度上昇は, 血清脂質濃度の上昇を促さないと考えられた。
著者
原田 聰 福田 至朗 田中 有引 石黒 幸雄 佐藤 隆英
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.429-434, 1995-12
被引用文献数
2

L. chmielewskii. L. hirsutum and L. peruvianum などのトマト野生種における果実でのショ糖含有形質は,単一劣性遺伝子に支配されていると考えられている.我々は,この因子がインベルターゼであると考え,インベルターゼ遺伝子とショ糖含有形質との関係について検討した.既に,トマト栽培種果実からの細胞壁結合型インベルターゼ。DNAをクローニングしており,その塩基配列を基に,栽培種とL. chmielewskiiを材料として,PCR法を用いた多型解析を行なった.その結果,増幅断片長に差が認められた部分が存在したため,それぞれの断片の塩基配列を決定した.大部分の塩基配列は一致していたが,最後のイントロン(第6)において,L. chmielewskiiの方が栽培種より計11bp短いのが認められ,その中にはlO bpの連続した"AAAAGGTTTT"という特徴的な配列が存在した