著者
磯田 三津子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.13-23, 2021 (Released:2022-03-31)
参考文献数
15

本論の目的は, 「文化に関連した指導」の中で主張されている社会正義ついて明らかにし, そこで子どもたちが獲得すべき能力は何かを明らかにすることである。アメリカ合衆国には, 「文化に関連した指導」という考え方があり, マイノリティの子どもたちの教育の在り方を考える際に注目されている。こうした考え方に基づいて実践される教育の中で用いられる教材として, ヒップホップがある。本論では, 前述した研究目的を明らかにするために, 「文化に関連した指導」の理論及び, ヒップホップの実践の意義を考察する。考察の結果, 明らかになったことは, 先ず, ヒップホップによる社会正義の獲得を目指す音楽授業の目標が, 人種や民族, 階層といった問題について考え, 社会を改善するために行動できる能力を育成することである。次に, ヒップホップがマイノリティにとって身近な内容を表現しており, 社会を批判的に捉えるのに適した教材だということである。