著者
寿楽浩太 土田 昭司 下 道國 神里 達博
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.542-548, 2018 (Released:2020-04-02)

東京電力福島第一原子力発電所事故から7年。福島県の農畜産物の価格が,事故前の水準に戻らない。風評被害はなぜ,起こるのか。この問題にはどう対処すればいいのか。原子力学会の理事会と社会環境部会は春の年会でこれをテーマにしたセッションを企画し,この問題に対する解決策を探った。ここでは登壇した4人の講演と,その後の質疑の概要を紹介する。
著者
神里 達博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.875-886, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
18

本稿は,近年急速な発展を遂げる情報技術が,社会の中で適切に発展していくための条件について,科学技術の社会史や生命科学の倫理問題の経緯を踏まえつつ,考察するものである。具体的には,科学技術観の歴史を簡単に確認したうえで,1970年頃に広がった「科学技術に対する懐疑」の思想について議論する。また,生命科学,とりわけ分子生物学において,倫理的な問題意識が登場した背景について検討する。さらに,このような動きの延長線上にあるものとして,「ヒトゲノム計画」に伴って提唱された「ELSI」という研究プログラムについて確認する。そのうえで,情報技術におけるELSIの現状と可能性を,EUと日本の事例を参照しつつ,考察する。
著者
神里 達博
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.331-342, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
75
被引用文献数
4 2

我が国においては2002年をピークに, 「食」が大きな社会問題となった. 本論文は, このかつてない「食品パニック」が形成されるに至ったメカニズムの解明を試みるものである. 具体的には, まず, 最大の「トリガー」となったBSEに関して, 何故ゆえにそのような社会的インパクトを持ちえたのかを, BSEの疾病としての特殊性を検討することで明らかにした. 更に, BSE問題がある程度収束した後に食品問題のピークが現れている点にも注目し, それらを構成する事例を詳細に検討した. これにより, 食品問題の増加は当該時期に新たなリスクが生じたというよりも, BSEを契機に社会的なアジェンダが「食」に誘導され, 注目が集まった結果, 古くから存在する食の問題群が掘り起こされたと見ることに妥当性があることを論じた. 最後に, これらの知見を踏まえ, 今後の類する問題解決のための一定の方向性を示した.
著者
神里 達博
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.318-332, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
61
被引用文献数
1 2

科学技術研究に伴う,倫理的,法的,社会的影響について,主として人文社会科学的観点から検討を行う研究プログラムを「ELSI」と呼ぶ.本稿では,この思想と実践が,前世紀末の米国において生まれた経緯とその後の展開について,歴史的に概観する.この検討は,情報技術の分野においてELSI的課題と向きあう上でも,価値ある示唆を与えてくれるものと考えられる.