著者
立川 隆治 平田 したう 福島 典之 平川 勝洋 夜陣 紘治
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.396-408, 1999-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
16

広島大学耳鼻咽喉科および関連施設耳鼻咽喉科外来を受診した慢性副鼻腔炎患者106例を対象として, 無作為にE群 (エリスロマイシン単独群) とEC群 (エリスロマイシン, カルボシステイン併用群) の2群に分けて8週間治療を行い, 臨床効果を検討するとともに投与前と投与8週後に後鼻漏を採取し, その成分の変化を検討した。1) エリスロマイシン単独およびカルボシステインとの併用投与により, いずれにおいても自覚症状, 他覚所見およびX線所見の改善が認められた。全般改善度において中等度以上の改善を認めた症例はE群で48.1%, EC群では42.3%であった。軽度改善以上で比較すると, E群の77.8%に対しEC群では92.3%とやや高い改善率であった。2) 慢性副鼻腔炎治療前の後鼻漏成分では, 重症例ほどシアル酸 (S), フコース (F) の濃度は高く, 治療後の改善度の高かった症例では, S/F値の低下, フコースの上昇が認められた。3) エリスロマイシン単独およびカルボシステイン併用投与による慢性副鼻腔炎の治療効果にはS/F値の低下が密接に関与することが示され, 慢性副鼻腔炎の治癒過程においてS/F値がその指標となりうることが示唆された。
著者
益田 慎 長嶺 尚代 福島 典之
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.40-45, 2014 (Released:2014-06-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4

発達性ゲルストマン症候群は発達障碍の 1 つで,書字困難と計算困難から重篤な学習障碍に進展する可能性がある。今回,4 歳から10歳までの間経過を追うことができた発達性ゲルストマン症候群の男児を経験したので症例報告する。当科初診時には本例の語彙は少なく,人物画が描けないことが特徴的であった。就学前の 1 年間に言語聴覚療法を実施したところ,語彙は増え読字は可能となったが,書字は困難であり自分の名前すら平仮名で表記することはできなかった。また就学時に 5 つのものを数えることができなかった。就学後すぐに学習に支障をきたしたが,学校現場が学習困難を発達性ゲルストマン症候群と結びつけて認識したのは 9 歳のときであった。本例の経験上,発達性ゲルストマン症候群を早期に診断し,学校現場に障碍特性を理解してもらう上で,人物画検査は有用であった。
著者
平位 知久 福島 典之 呉 奎真 世良 武大 安藤 友希 服部 貴好 伊藤 周 田原 寛明 益田 慎 小川 知幸
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.1673-1679, 2022-12-20 (Released:2023-01-01)
参考文献数
24

新型コロナウイルス感染症 (The novel Coronavirus disease 2019, COVID-19) に対して気管内挿管を行った症例の一部において, 声門後部炎症, 声帯固定, 声門下肉芽, 声門下狭窄, 気管狭窄等の喉頭気管狭窄症を来し, 再挿管または気管切開による気道確保を余儀なくされたという報告が相次いでいる. 海外において同病態は COVID-19 関連喉頭気管狭窄症と呼称されている. 当科ではこれまでに3例の COVID-19 関連喉頭気管狭窄症を経験した. それらの病態は両側声帯固定, 声門後部炎症, 声門下肉芽, 声門下狭窄とさまざまであったが, いずれの症例も治療抵抗性であり, 発症から長期間が経過した現在も気管孔閉鎖には至っていない. COVID-19 関連喉頭気管狭窄症の要因としては, 長期挿管管理, 挿管時の喉頭粘膜損傷, 気管内チューブのサイズ不適合, 挿管管理中の腹臥位療法, 患者側背景として糖尿病, 高血圧, 心疾患等の既往歴, 肥満, 上気道炎の合併などが考えられている. いったん発症すると遷延化し難治性となる場合もある. 従って COVID-19 に対して挿管を必要とする症例においては, 適切な挿管操作, 挿管管理を行うことにより抜管後の喉頭気管狭窄症の発症を予防するだけでなく, 挿管前から上気道炎の有無, 程度の評価を含め, 耳鼻咽喉科による積極的なかかわりが重要であると考えた.
著者
平田 したう 立川 隆治 福島 典之 夜陣 紘治 松島 隆浩 熊谷 信二 森田 栄伸
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement3, pp.195-200, 1997-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
8

上気道感染症に対するネブライザー療法は広く行われている保存的療法の一つであるが, 室内環境や, 医療従事者への影響についての検討は極めて少ない。今回我々は, ネブライザー施行中のネブライザー粒子の飛散状況や換気扇の効果を検討した。医療従事者の血中ネブライザー薬液濃度は, 検出できなかったが, ネブライザー施行中にネブライザー粒子がかなり飛散するのが肉眼的に確認された。また密閉空間においてネブライザーを噴出させ, ネブライザー薬液を採取し測定したところ, ネブライザー装置と同じ高さの方が50cm上方よりも約10倍多く検出され, 換気扇を使用することにより約5分の1に減少した。さらに実際の外来診療室では, 換気扇を作動させなかった日にはネブライザー装置から7m離れた位置でもネブライザー薬液が検出され, ネブライザー装置の近くでは, 換気扇を使用してもあまり効果が得られなかった。今回の検討から, ネブライザーを施行する際換気扇を使用することは当然と考えられるが, 現状よりも強力なドラフト装置や, フードを低く設定する, あるいは複数の箇所に設置するなどの必要性が示唆された。
著者
福島 典之
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.953-966, 1990-06-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
29

This study was designed to investigate the effects of acoustic deprivation and stimulation following acoustic trauma.Symmetrical bilateral cochlear lesions were produced in 33 chinchillas by exposure to a high intensity pure tone (117dBSPL, 2kHz) for 15 minutes. Cochlear thresholds were derived from the cochlear action potentials (CAP) taken prior to and one day after exposure. Then the incudo-malleolar complex of one side was removed so that one cochlea was normally stimulated during the recovery period, while the other was deprived of sound. After a period of one to twelve weeks the OAP's on the non-deprived (nonoperated) side were measured. Hair cell damage in the acoustically deprived cochlea was assessed with scanning electron microscopy. In order to quantify the degree of damage to the sensory epithelium, a hair cell damage scale was implemented based on stereociliary integrity.The control group consisted of six chinchillas with unilateral ossiculectomy but no sound exposure, and four which received sound exposure only. The cochleas of these animals also were analyzed by scanning electron microscopy.The most significant result of this study was that the cochleas with acoustic deprivation during the recovery period sustained a higher degree of damage than the acoustically stimulated cochleas.Another result was that symmetrical cochlear lesions could be produced by strict monitoring of sound pressure balance in both middle ear cavities. Finally, careful ossiculectomy did not affect cochlear morphology.