- 著者
-
福田 麻莉
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.3, pp.346-360, 2017 (Released:2018-02-21)
- 参考文献数
- 33
- 被引用文献数
-
4
本研究では, 家庭学習でのつまずき場面における, 数学の教科書・参考書の利用量・利用の質に対し, 教科書観, 有効性の認知, コスト感, 学習観ならびに, 授業中の教師による教科書・参考書の使用の程度が及ぼす影響を検討した。中学生・高校生1,850名を対象に質問紙調査を実施し, 仮説に基づき構成したモデルを用いて多母集団同時分析を行った。その結果, 中学生・高校生集団ともに, 教師が授業中に教科書を積極的に使用していると生徒が認識しているほど, 「教科書・参考書は家庭学習でも利用する道具である」という教科書観を抱いていること, また, そうした教科書観が有効性の認知, コスト感を介して, 教科書・参考書の利用量および自律的な利用方法にポジティブな影響を及ぼしていることが明らかとなった。以上の結果から, 数学の授業において, 教師が教科書・参考書を 積極的に使用することの重要性が示された。ただし, 有効性の認知と依存的な利用方法との間にも正の関連が示されたことから, 質を高めるためには更なる工夫が必要であることが示唆された。