著者
福田 麻莉
出版者
日本教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:1344946X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-14, 2019 (Released:2021-05-08)
参考文献数
28

本研究は,認知カウンセリングの事例分析を通じて,授業および家庭学習における中学生の教科書・ノートの活用を促す方法についての示唆を得ることを目的とした.本事例では,カウンセラーはカウンセリング中,数学の教科書を活用し,また,クライエントに学習内容についての説明を求めることで,教科書の内容や構成についての理解を促し,家庭学習中に分からないことがあった際に自発的に教科書を見返すようになることを狙った.カウンセリングを通じて,クライアントは家庭でも教科書を自発的に使用するようになり,また,数学の用語や概念の意味を重視する学習観を抱くようになった.さらに,授業中のノートテイキングにも変化が見られ,用語や概念の意味についてのメモを取ることができるようになった.分析を通じて,教科書やノートを活用できる,自立的な学習者を育成する上での効果的な介入方法についての示唆が得られた.
著者
原田 恵理子 福田 麻莉 神野 建
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2014-09-30

本稿は、大学生を対象とした文章力を向上させる授業実践の効果を検討することを目的としたものである。調査対象者は大学1年生13名であり、計15回の授業実践を実施した。実践の効果の指標として、読み方略尺度と自由記述による文章力テストを用い、実践前と実践後に測定を行った。t検定を行った結果、実践を通じて命題的方略の使用が増加したことが明らかとなり、本研究で実施した授業実践に一定の効果があることが示された。
著者
福田 麻莉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.346-360, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
33
被引用文献数
4

本研究では, 家庭学習でのつまずき場面における, 数学の教科書・参考書の利用量・利用の質に対し, 教科書観, 有効性の認知, コスト感, 学習観ならびに, 授業中の教師による教科書・参考書の使用の程度が及ぼす影響を検討した。中学生・高校生1,850名を対象に質問紙調査を実施し, 仮説に基づき構成したモデルを用いて多母集団同時分析を行った。その結果, 中学生・高校生集団ともに, 教師が授業中に教科書を積極的に使用していると生徒が認識しているほど, 「教科書・参考書は家庭学習でも利用する道具である」という教科書観を抱いていること, また, そうした教科書観が有効性の認知, コスト感を介して, 教科書・参考書の利用量および自律的な利用方法にポジティブな影響を及ぼしていることが明らかとなった。以上の結果から, 数学の授業において, 教師が教科書・参考書を 積極的に使用することの重要性が示された。ただし, 有効性の認知と依存的な利用方法との間にも正の関連が示されたことから, 質を高めるためには更なる工夫が必要であることが示唆された。