著者
池田 幸代
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-90, 2011-09-30

本研究では、地域に密着した経営を行う企業が成長していくために必要な要因について明らかにすることを目的としている。そのために北海道札幌の代表的な菓子メーカーである「(株)きのとや」を事例として取り上げている。そしてこの企業の成長プロセスをいくつかの時期に分け、経営戦略の様々な視点から分析を行っている。この企業は創業時より、店舗の立地上の不利益や限定された販売エリア、厳しい競争環境といった様々な困難に直面してきた。しかし、この企業は、成長過程のそれぞれの時期において、戦略上の対応を変えることで成長を続けてきた。企業の成長の過程では、戦略ポジショニングの変更と製品開発を行うとともに、戦略ポジショニングを支える組織能力の構築がすすめられていた。このように、本研究は、企業がいかにしてこうした直面する問題を克服してきたかについて明らかにするものである。
著者
西村 明 小泉 宣夫
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.79-92, 2004-02-20
被引用文献数
3

いくつかの種類のディジタルオーディオ機器におけるサンプリングジッター測定の結果を示した。解析信号を用いたジッター測定は、CD-Rメディアの製造メーカの違い、信号のビットパターン、ディジタル信号伝送系、DAC, ADCそしてプレーヤのクロック発振器など、複数の要因が、オーディオ機器の微細なジッター特性に影響を与えていることを示した。ジッター測定を通じて得られた最大のジッター成分振幅は、ジッター周波数2 Hz以上において、2nsを下回った。従来の周波数変動検知実験の結果と比較すると、この程度のジッターが音質に与える影響を聴取者が検知することは困難であると予想される。
著者
松下 博宣 東京情報大学看護学部
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-11, 2022-09-30

本研究は,下総台地に鎮座する下総七年祭神社,藤原時平神社,天満宮等の配置形象に含意される意味を探索的に特定することである.下総三山の七年祭りに参加する9社,八千代市の時平神社4社,ならびに下総地域に点在する天満宮,天神社を実際に訪れ,神社の位置をGoogleマップ上にプロットして,神社群の位置(緯度,経度,標高)を特定し,各神社の由緒書を収集し,関連する史料を分析した.その結果,①三山七年祭神社パラレログラム,②八千代時平系神社群トライアングル,③天満宮ラインA,B,④下総道真信仰系レクタングルという神社の呪術的配置形象が空間的に構成されていることが明らかになった.本研究の発見にもとづき,これらの神社の配置形象が,同地域に特有の水害リスクを暗黙的に示唆する可能性について論考した。
著者
池田 幸代 イケダ ユキヨ Yukiyo Ikeda
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.53-67, 2012-03-01

本研究では、介護事業サービスを提供する企業が安定した経営を行うために、現在直面する問題を解決することを目的としている。その中で、ここでは介護事業所が利用者をいかにして確保するかに着目した。調査では、主にデイサービスや訪問介護サービスを提供している東京都内の介護事業所の利用者を対象に、インタビュー調査を実施した。それによると利用者は第三者評価などの公開された情報を利用して、介護事業所の選択を行っているのではなく、ケアマネージャーや知り合いによる紹介によって事業所を選択していることが明らかとなった。介護保険制度が導入された当初、利用者の自由意思に基づく選択が行われるとみられていたが、実はそうではないことがわかる。そこで本研究では、利用者確保のために、介護事業所がどのような対策をとるべきかを考える。The purpose of this research is to solve the problems currently faced by public nursing-care service providers for their stable business operation. In the interview survey, it gave most attention to service users of day-care service and attendant service providers in Tokyo area. The result shows that those users did not choose the providers by utilizing the open information which is guaranteed by the third-party evaluation, but often times being introduced by care-managers or acquaintances. When nursing-care insurance system was launched, it was estimated that choice of the service becomes free contract, but the result shows to the contrary. Based on this finding, this paper considers the measures to be taken by public nursing-care service providers to attract service users by understanding customer needs and effective marketing activities.
著者
茂住 和世 モズミ カズヨ Kazuyo Mozumi
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.63-69, 2006-02-20

日本人大学生に、就職模擬面接というフォーマルな場面で彼らが過去に参加したプロジェクトについての説明を求めた。それを録音したものを書き起こし、その話し方のわかりにくい部分を抽出し、それらを言語的要因ごとに分析した。その結果、聞き手の理解を妨げる要因は19項目見つかり、それらは大きく、語彙・文法・表現・内容という4つのグループに分けられた。これらのわかりにくさの諸相の背景には、話すことが音声による情報伝達であること、及び、聞き手が知らない内容についてわかりやすく説明することの難しさがあると思われる。このように明らかになった彼らの話し方の問題点は、就職活動を控えた学生たちの話し方の訓練のために有用な情報であると言えよう。
著者
原田 恵理子 福田 麻莉 神野 建
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2014-09-30

本稿は、大学生を対象とした文章力を向上させる授業実践の効果を検討することを目的としたものである。調査対象者は大学1年生13名であり、計15回の授業実践を実施した。実践の効果の指標として、読み方略尺度と自由記述による文章力テストを用い、実践前と実践後に測定を行った。t検定を行った結果、実践を通じて命題的方略の使用が増加したことが明らかとなり、本研究で実施した授業実践に一定の効果があることが示された。
著者
原田 恵理子
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-18, 2013-09-30
被引用文献数
1

本研究では、高校生のネットいじめの実態について調べ、ネットいじめの実態に応じた支援のあり方を検討した。高校生325名を対象にした質問紙調査を行い、パソコンと携帯電話によるネットの使用、伝統的いじめとネットいじめの併存、傍観者の経験、ネットいじめに対する支援のニーズを検討した。その結果、伝統的いじめとネットいじめの併存は1%、傍観した経験は7%であった。また、多くの生徒がネットいじめに対する教育を希望し、学校及び学級に対する心理教育の重要性が明らかとなった。
著者
山口 豊 中村 結美花 窪田 辰政 橋本 佐由理 松本 俊彦 宗像 恒次
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.13-20, 2014-03-01

近年、教育界において自傷行為が数多く報告されている。自傷行為については、わからないことが多く、予防支援のためには、心理的要因を検討することが望まれる。そこで、本研究では、自傷行為と心理特性との関連を予備的に検討する。関東地方A高校2年生1クラスの39名に対し、2010年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は(1)属性(性別)(2)学校について(学校満足度)・家庭について(居心地・愛着)(3)故意に健康を害する行為(経験・念慮)の有無(4)自傷行為(経験・念慮)の有無( 5)心理的要因に関する尺度(5項目)であった。結果は、次のとおりである。(1)喫煙(経験1人・念慮3人)、飲酒(経験18人・念慮3人)、ダイエット(経験4人・念慮6人)、過食嘔吐(経験8人・念慮3人)、過量服薬(経験0人・念慮2人)であった。(2)自傷行為有(経験4人・念慮3人)、無32人であった。(3)特性不安、抑うつ、自己否定感の各尺度値が基準値を超え、特性不安尺度、抑うつ尺度、自己否定感尺度間に強い正の相関がみられた。(4)自傷行為(経験・念慮)と心理特性尺度との相関については「抑うつ」「自己否定感」において有意、「特性不安」において有意傾向であった。(5)自傷行為(経験・念慮)有無2群における心理特性については、有群が無群に比して「抑うつ」「自己否定感」において有意に、「特性不安」において有意傾向で課題が見られた。これらのことから、次のことが考えられる。心理的課題を抱える生徒は複数の心理的問題を同時に抱え、学校生活の大変さがうかがわれた。健康を害する行為や自傷行為の一定数は、そのことに関連している可能性が推察される。特に、自傷行為(経験・念慮)については、統計学的に心理的課題との関連が推測され、対象者の一部が、自傷行為という行為を通して、心理的課題に独自に対応しているのではないかと考えられる。自傷行為予防支援に向けての本格的調査が必要である。
著者
鈴木 英男 安岡 広志 圓岡 偉男 神野 建 新島 典子
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-32, 2012-09-30

近年、Facebook、Twitter、mixi、GREE、Mobageの爆発的普及と、スマートフォンと呼ばれる携帯電話の登場により、掲示板、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用者数が急増している。高校生の携帯電話所持率も高く(95.1%)、携帯電話による子どもたちの被害も急増している。その内容は、いじめ、詐欺、異性間トラブル(強姦、児童売春)などの深刻な被害である。他方で、利用者は、被害者になるだけでなく、ネットの匿名性により、容易に加害者にもなり得る。いったん加害者になれば、匿名性は失われ、犯罪者となることもある。携帯電話を使用することは、被害者や加害者になり得るリスクを含んでいる。筆者らは過去9年にわたり国内20校以上の高校において携帯電話の情報モラル教育を実施してきた。高校生にとって理解しやすい内容にするため、筆者らの情報モラル講演は、本人追跡性について詳説、さらにデモンストレーションも行っている。本稿は、携帯電話利用にともなって生じる社会問題の複雑さ・深刻さについて分類、解説した上で、これまでの高校教育現場での情報モラル教育の実践をふまえ、効果的な情報モラル教育の一つの考え方を示すことを目的としている。本稿が高校教育現場で日夜問題に直面している関係者各位の手助けになることを期待したい。
著者
岩本 俊彦
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-86, 2012-09-30

ツーリズム・マーケティングは、ツーリズムの活性化のためにマーケティングのコンセプトや政策、戦略を援用するものである。ツーリズムの目的地は、地域の歴史的背景、自然環境等に依拠する個性を保持しており、個性をツーリスティック・リソーシズとして活用している。他方で、わが国ではリスク分散を企図して、差異化とは反対に、総合的な施設の配置や総合的なパッケージを通じたツーリズムの標準化、画一化が進行してきた。パッケージ・ツアー、デスティネーションにブランドを付与して、ニュー・ツーリズムを導入しながら業容拡大を図るツーリズム産業の差異化政策の構造の複合性に着目する。そのうえで、ツーリズム産業の現在の課題と克服を通じた活性化のための差異化の態様を論じていく。
著者
斉藤 浩一 サイトウ コウイチ Koichi Saito
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.1-9, 2004-02-20

本稿では、まずキリスト教圏における「妬み」とわが国の特性を聖書と古事記から考察し、どのような存在として捉えられ、変遷を経てきたか、「妬み」と「嫉妬」の混迷に係わる問題を考察する。さらに、わが国における「妬み」の封印と官僚制の問題を指摘する。最後に、「妬み」が問題となる今日的意義を再確認する。以上から、わが国における「妬み」の病理性を明らかにし、それを低減する教育上の提言を行うものである。
著者
大山 一志 藤井 博英 Oyama Hitoshi Fujii Hirohide 日本赤十字秋田看護大学 東京情報大学看護学部 Japanese Red Cross Akita College of Nursing Faculty of Nursing Tokyo University of Information Sciences
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.21(2), pp.19-33, 2018-03-01

統合失調症患者における精神科訪問看護の目的の一つに、再発兆候の早期発見が重要な要素とされている。本研究では精神科訪問看護に携わる看護師が、統合失調症患者の再発兆候をどのようなところで観察し、捉えているかを明らかにするべく看護師への聞き取り調査を行った。結果、精神科訪問看護に携わる看護師は、統合失調症患者の病状悪化に、【生活様式の逸脱】【病的体験の増悪】【治療意欲の低下】【コミュニケーションの変調】が伴うことを経験的に体得しており、これらの局面から再発兆候をモニタリングしていた。
著者
池田 幸代 イケダ ユキヨ Yukiyo Ikeda
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-90, 2011-09-30

本研究では、地域に密着した経営を行う企業が成長していくために必要な要因について明らかにすることを目的としている。そのために北海道札幌の代表的な菓子メーカーである「(株)きのとや」を事例として取り上げている。そしてこの企業の成長プロセスをいくつかの時期に分け、経営戦略の様々な視点から分析を行っている。この企業は創業時より、店舗の立地上の不利益や限定された販売エリア、厳しい競争環境といった様々な困難に直面してきた。しかし、この企業は、成長過程のそれぞれの時期において、戦略上の対応を変えることで成長を続けてきた。企業の成長の過程では、戦略ポジショニングの変更と製品開発を行うとともに、戦略ポジショニングを支える組織能力の構築がすすめられていた。このように、本研究は、企業がいかにしてこうした直面する問題を克服してきたかについて明らかにするものである。
著者
茨木 正治 Ibaragi Masaharu 東京情報大学総合情報学部 Faculty of Informatics Tokyo University of Information Sciences
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.75-88, 2019-03-01

政治における言葉の働きを、レトリックに焦点を当てて先行研究を整理し、ネット社会における「政治とことば」の関係を模索する手がかりを求める。伝統的レトリックとその継承が説得の効果を前提としてその技法に重点を当てていたのに対して、20世紀のマス・コミュニケーション理論、および近年の認知革命の影響を受けて登場した「言説」社会心理学は、ことばの「意味」や「効果」は、送り手や受け手の相互作用によって決まるものを強調した。この指摘は議論の余地はあるものの、コミュニケーション内容と表現との関係を見直す契機が生れ、そこにまた政治とことばにみられる権力関係の不透明化を考える手掛かりが生ずるとも考えられる。
著者
岩野 秀明 イワノ ヒデアキ Hideaki Iwano
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.53-61, 2006-02-20

この論文では、筆者は、真理論の部分とdoxa-論の部分を決定的に分離する解釈には賛成しない。我々の仮定は、パルメニデスはそのeonの概念を現象的世界の原理にまで発展させた、そしてそのための方法が「根源的多義性の方法」と我々が名づけるものであった、ということである。Eon(存在)の概念は二様に理解される、一方はマテリアリスティッシュな理解で宇宙と取り、他方はイデア論的にプラトン的イデアと取る。我々は両方を融合する統一的な道を取る。Eonは、真理、理念的宇宙、光(または火)という異なる意味を内包している。この概念的融合に、我々はパルメニデスの哲学的方法の可能性として、根源的多義性というものを見る。また彼の、思考と存在の一致、と、精神と要素の一致、のアナロジーは、根底からこの根源的多義性を支えている。このようにしてパルメニデスのeon(存在)が宇宙論的・宇宙創生論的内容に移行する、ことをこの論文は明らかにしようとするものである。
著者
斉藤 浩一 高橋 郷史 サイトウ コウイチ タカハシ サトシ Koichi Saito Satoshi Takahashi
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-9, 2005-09-20

本研究は、最近言われる「理科嫌い」について、教育心理学的に原因を追求するものである。さらに、教育方法等に提言を行う。本稿では、実際の高校生に対してアンケート調査を行う。ここではまず「理科志向」という概念を設定し、それに満たない者を「理科離れ」の状態にあると定義する。さらに、これまでの理科教育やこれから志向する理科系への意識がどのように、因果関係を持っているか実態を捉え、モデルを構築する。以上によって、どのような教育施策が有効か、提言を行うものである。
著者
原岡 蓉子 圓岡 偉男 Haraoka Hideo Tsuburaoka Yoko 東京情報大学大学院総合情報学研究科 Graduate School of InformaticsTokyo University of Information Sciences
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.55-66, 2019-03-01

2011年3月11日。宮城県牡鹿半島の東南東130kmの海底を震源とする、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。震災後、「絆」という言葉がメディアに溢れ、東北の人々が助け合い、懸命に生きる姿がテレビで連日放映された。私たちは、この大惨事を、日本全体を覆う共通の問題として捉えなくてはならなかった。そのために私たちは、この「絆」のもと、被災者と連帯し、被災者/非被災者の区別を超えて、統一的に行動していくという姿勢を取った。しかし、「絆」は人と人とのつながりを築くという意味で「包摂」を実現していくものであると同時に、その包摂に入らない人、入れない人を作り出す。現に、震災時には、そのような排除の圧力がしばしば見られた。本稿は、震災後に日本社会に蔓延した絆について考察し、そのことから、包摂性と排除性という絆の両義性を明らかにする。