著者
秋山 理 中村 正和 田淵 貴大
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.655-665, 2018-11-15 (Released:2018-12-05)
参考文献数
16

目的 喫煙は様々な健康被害をもたらすため,健康増進のためには禁煙が重要である。喫煙者が喫煙の自身への有害性を認識していることは禁煙を試みることに寄与することが知られている。一方,これまで受動喫煙の他者危害性についての認識と禁煙との関連はよく調べられていない。そこで本研究では,日本の一般住民を対象としたインターネット調査にて,現在喫煙者における受動喫煙の他者危害性の認識と禁煙への関心との関連を検討した。方法 2017年1月27日から3月13日にかけて日本の一般住民を対象としたインターネット横断調査を実施した。回答者のうち,現在習慣的な喫煙を行っている15-71歳の男女1,586人(男性1,128人,女性458人)について,喫煙の自身への有害性の認識および受動喫煙の他者危害性の認識と禁煙への関心との関連について,多変量調整ロジスティック回帰分析を行った。結果 現在喫煙者のうち,男性では81.6%,女性では88.2%が受動喫煙の他者危害性を認識していた。現在喫煙者のうち,男性では52.7%,女性では64.6%が禁煙への関心があると回答した。多変量調整ロジスティック回帰にて検討した結果,喫煙の自身への有害性の認識もしくは受動喫煙の他者危害性の認識のいずれかを説明変数としてモデルに投入した場合のオッズ比はそれぞれ2.53, 2.92であった。喫煙の自身への有害性の認識と,受動喫煙の他者危害性の認識との両方を説明変数としてモデルに投入した場合で,両者とも有意に禁煙への関心と正の関連があることが示された。結論 現在喫煙者のうち,受動喫煙の他者危害性を認識している者は,認識していない者に比べて禁煙への関心が高かった。喫煙の自身への有害性の認識と,受動喫煙の他者危害性の認識とはそれぞれ独立に禁煙への関心と正の関連を認めた。本研究は,横断研究であり因果関係を調べたものではないが,受動喫煙の他者危害性の認識を高めることが禁煙への関心を持つことに繋がる可能性を示唆しており,今後のタバコ対策を推進するための基礎資料となる。
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 酒井 理恵 岩﨑 正則 角田 聡子 邵 仁浩 葭原 明弘 宮﨑 秀夫 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.76-84, 2018 (Released:2018-05-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

【目的】在宅高齢者を対象として簡易嚥下状態評価票(EAT-10)を用いて,嚥下状態と栄養状態の関連について明らかにすることを目的とした.【対象および方法】新潟市の85歳在宅高齢者129名を対象とした.口腔と全身の健康状態に関するアンケートを郵送し自記式にて調査を行った.調査内容は,EAT-10,現在歯数,簡易栄養状態評価(MNA-SF),主観的健康観,老研式活動能力指標,Oral Health Impact Profile-49(OHIP),嚙める食品数である.これらの因子について,EAT-10の合計点数が3点以上を嚥下機能低下のリスク有り群とし,3点未満の群との比較検討を行った.【結果】EAT-10によって,嚥下機能低下が疑われたものは52.7% であった.嚥下機能低下のリスク有り群ではOHIP 高値(p<0.001),嚙める食品数低値(p<0.001)と有意な関連がみられ,主観的健康観で“あまり健康ではない”者の割合が有意に高く(p<0.001),MNA-SFで“低栄養”の割合が有意に高かった(p=0.007).さらに,MNA-SF を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,栄養状態と嚥下機能には有意な関連がみられ,EAT-10の点数が高くなるほどMNA-SF で“低栄養のリスク有りまたは低栄養”となるオッズ比が有意に高かった (p=0.043).【結論】在宅高齢者の嚥下機能低下と低栄養状態との関連性が示唆された.
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 岩﨑 正則 角田 聡子 片岡 正太 茂山 博代 濃野 要 葭原 明弘 小川 祐司 安細 敏弘 宮﨑 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.136-146, 2021 (Released:2021-08-15)
参考文献数
37

わが国では,年々超高齢者数が増加している.健康度の高い在宅超高齢者の食生活の実態を把握することは健康寿命延伸の有益な知見になると考えられる.そのため著者らは,在宅超高齢者を対象として,食事パターンを同定し,栄養素摂取量,栄養状態および嚥下状態との関連について明らかにすることを目的として本研究を行った. 新潟市の91歳在宅高齢者86名を対象として,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ),簡易栄養状態評価(MNA-SF),簡易嚥下状態評価票(EAT-10)による調査を行った.食品群別摂取量から主成分分析を行い,食事パターンを同定し,それらと栄養素摂取量の関連を検討した.さらに,各食事パターンと食に関連する因子,MNA-SFおよびEAT-10との関連を比較検討した. 主成分分析の結果,4つの食事パターンが同定された.それぞれの主成分得点三分位によって栄養素摂取量を比較したところ,肉,魚,野菜類の摂取量が多く,ご飯,パンが少ない「副菜型」では,高得点群ほどたんぱく質やビタミンDなどの栄養素摂取量が多く,栄養状態も良好な者が多かった.また,MNA-SFで低栄養と判定された群では対照群と比べて嚥下機能低下のリスクのある者の割合が有意に高かった. さらに,「副菜型」の食事パターンでは居住形態や共に食事をする人の有無との関連も示唆された.