著者
秦 康範 前田 真孝
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.107-114, 2020 (Released:2022-07-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

我が国は2008年をピークに人口減少局面に入っており、長期的な人口減少社会を迎えている。本研究では、洪水による浸水リスクに着目し、全国ならびに都道府県別の浸水想定区域内外の人口および世帯数を算出し、1995年以降の推移とその特徴について考察することを目的とする。対象地域は全国の都道府県で、使用するデータは500mメッシュの国勢調査(1995年~2015年の5年分)と国土数値情報浸水想定区域データである。地理情報システムを用いた解析の結果、浸水想定区域内人口および世帯数は、1995年以降一貫して増加しており、区域内人口は1995年(33,897,404人)から2015年(35,391,931人)までに1,494,527人増加し、区域内世帯数は1995年(12,165,187世帯)から2015年(15,225,006世帯)までに3,059,819世帯増加していることが示された。都道府県別の浸水想定区域内の人口および世帯数は、1995年を基準とすると、2015年において浸水想定区域内人口は30都道府県が、浸水想定区域内世帯数は47都道府県が、増加していることが示された。区域内人口が減少している地域を含め区域内世帯数が大きく増加しているのは、浸水リスクの高い地域の宅地化が進んでいるためと考えられる。
著者
秦 康範
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.e12-e16, 2020-11-15

全庁的な防災情報システムが積極的に活用され,被害の軽減に有効に機能した事例を筆者は残念ながら聞いたことがない.災害時の情報共有を円滑にするために整備した手前,なかなか広言されないものの,被災自治体への調査を実施すると,むしろ情報システムが機能しなかった例は枚挙に暇がない.「なぜ防災情報システムは使えないのか?」,その背景や理由の一端について筆者の私見を述べる.効果的な防災情報システムを整備するためには,縦割り行政による部分最適から脱却し,全体最適を実現するツールとして防災情報システムを位置づけ,標準的な仕組みを国が推進・整備する必要がある.
著者
秦 康範 原田 悠平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1107-I_1117, 2014 (Released:2014-07-15)
参考文献数
42

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,330件に及ぶ多数の火災が発生した.津波被害の大きい東北地方だけでなく,関東地方においても多くの火災が発生した.本研究では,消防本部から提供された火災データに基づき,出火点の推定地震動を付加した火災データベースを構築し,地震動に起因する火災(地震型火災)の出火原因の内訳を明らかにした.出火原因別に出火日時と累積出火割合の関係を明らかにするとともに,非停電地域における電気火災を取り上げ電力が供給されていれば停電に関係なく電気火災が発生することを示した.推定した震度曝露人口から,出火原因ごとに震度別出火率を算出した.
著者
沼田 宗純 秦 康範 大原 美保 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.643-652, 2010-11-01 (Released:2011-05-12)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では,災害医療情報をリアルタイムに収集し,医療機関・行政・住民等,地域全体で災害医療情報を共有するためのITトリアージシステムを開発した.本システムを山梨大学医学部附属病院で行われた450名規模のトリアージ訓練において適用した結果,リアルタイムにトリアージレベル別の患者数の把握,各診療科の受診患者数の把握,容易なトリアージレベルの変更対応等,トリアージの高度化だけでなく,他病院,行政,住民を含めた地域全体で情報共有が可能となり,迅速な転院対応や住民からの問い合わせ対応が可能であることが確認できた.[本要旨はPDFには含まれない]