著者
竹井 和人 村田 伸 甲斐 義浩 藤野 英己 村田 潤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3021, 2009

【目的】転倒は多くの危険因子により発生する.転倒予防において、支持面である床と唯一の接触部である足底、とくに足趾が重要な役割をはたすことは既に多くの報告がなされている.足趾は支持機構としての働きのほか、感覚の情報入力においても重要である.足趾機能の評価指標として足把持力は多くの研究で用いられている.また、足趾に対する訓練として足趾歩行、ビー玉移動などがあるが、床上に置いたタオルを足趾でたぐりよせるタオルギャザーは、臨床で多く用いられるトレーニング方法である.そこで、本研究では、タオルギャザーによる足把持力トレーニングの効果について検討した.<BR><BR>【方法】健常成人女性19名(平均年齢20.3±0.5歳、平均身長159.6±5.5cm、平均体重52.4±7.6kg)を対象とし、6週間の足把持力トレーニングを行った.トレーニングはタオルギャザーとし、タオルの上に0.5kgから2.0kgの重りを段階的に増加させながら実施した.運動頻度は週4日で、1日あたり10回×2セットとした.トレーニング前、トレーニング3週間後、6週間後に足把持力を測定し、各測定値は反復測定ANOVA検定、およびFisherの多重比較検定を行いトレーニング効果の判定を行った.<BR><BR>【結果】足把持力値はトレーニング開始前10.1±2.6kg、トレーニング開始3週間後12.8±2.6kg、6週間後では13.0±2.6kgであった.足把持力は3週間後では有意な増加がみられ、6週間後では3週間後と比較して有意な変化はみられなかった.<BR><BR>【考察】健常成人女性を対象に足把持力トレーニングとしてタオルギャザーを実施したところ、開始3週間後には有意な増加が認められたが、3週間から6週間の間では有意な増加は認められなかった.タオルギャザーを用いた足把持力のトレーニング効果について、開始後4週間で効果がみられたとする報告や、開始後10週間で訓練の効果がみられたとする報告などがある.しかし、トレーニング種目が複数であったり、トレーニング実施が被験者の自主性にゆだねられていたり、足把持力のトレーニング効果については必ずしも明確とはいえない.本研究では、トレーニングには験者が毎回立会い、確実に実施できているかを確認しながらおこなった.筋力増強訓練の効果について、筋力訓練を開始した直後の筋力増加は神経系の促通によるもので筋肥大は伴わないと考えられている.また、筋肥大を伴う筋力増加は最低6週間程度の運動の継続が必要であるといわれていることからも、今回、開始3週間で有意に増加した足把持力は神経系の影響によるものと考えられる.タオルギャザーによる足把持力トレーニングは比較的早期に訓練効果が得られることが示唆された.
著者
竹井 和人 村田 伸 甲斐 義浩 村田 潤
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.79-81, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
10 6

〔目的〕足把持力トレーニングの効果を足把持力の経時的な変化により検討した。〔対象〕健常成人女性19名とした。〔方法〕10分程度の足把持力トレーニング(タオルギャザー)を週4日,6週間継続して実施し,トレーニング前,3週間後,6週間後の足把持力を比較した。〔結果〕トレーニング前と比較して3週間後の足把持力は有意な増加を示した。一方,3週間後と6週間後との間に有意差は認められなかった。〔結語〕足把持力トレーニングによる筋力増強効果は,3週間で生じることが示された。また,足把持力に関与する筋群は,形態的な特徴から6週間のトレーニングでは筋肥大による筋力増強は得られない可能性が推察された。
著者
竹井 和人 甲斐 義浩 政所 和也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1080, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 上肢挙上運動時の上腕骨と肩甲骨の規則的な運動は,腱板を代表とする肩関節周囲筋の協調的な活動によって成り立っている。従来の報告では,上肢挙上運動に外部負荷を加えることで,肩関節周囲筋の筋活動性を変化させても肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節の運動は変化しないことが示されている。すなわち,正常な関節運動は筋活動性の増減に依存せず,筋活動の至適調節によって再現される可能性がある。しかしながら,筋活動の至適調節能の破綻によって肩関節運動が変化するか否かは不明である。そこで本研究では,上肢挙上運動への関与がすでに確認されている肩外旋筋に焦点をあて,肩外旋筋疲労による活動調節能の破綻が肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動におよぼす影響について検討した。【対象と方法】 対象は,健常成人男性18名の利き手側18肩(平均年齢20.4±1.9歳)とした。被験者は,体重の約5%に相当するダンベルを用いて,側臥位にて反復外旋運動を可能なかぎり行った。外旋運動後,筋力測定(ハンドヘルドダイナモメーター)によって外旋運動前より70%以上の筋出力低下(筋疲労)を確認したのち,ただちに上肢挙上運動時(肩甲骨面挙上)の肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動学的データを計測した。測定には,磁気センサー式3次元空間計測装置(3SPACE-LIBERTY,Polhemus社製)および解析ソフトMotion Monitor(Innovative Sports Training社製)を用い,上肢挙上運動5°ごとの肩甲上腕関節挙上角(GHE),肩甲骨上方回旋角(SUR),肩甲骨後方傾斜角(SPT)を求めた。磁気センサーは,胸骨柄,肩峰,上腕骨三角筋粗面にそれぞれ工業用両面テープを用いて強固に貼付した。センサー貼付後,上腕骨,肩甲骨および胸郭における骨格ランドマークのデジタライズ処理によって,解剖学的な座標系を求めた。運動軸は,International Society Biomechanics推奨のISB Shoulder recommendationに従い定義し,上肢挙上角(胸郭と上腕骨のなす角)5°ごとのGHE,SUR,SPTを算出した。なお,測定は反復外旋運動前後にそれぞれ2回計測し,平均値を代表値として採用した。統計処理は,各測定値の再現性について,2回の測定値から級内相関係数(ICC)を求めた。また,各測定値(GHE,SUR,SPT)の外旋筋群疲労前後の比較には,二元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を採用し,危険率5%未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者には研究の趣旨と内容,得られたデータは研究の目的以外には使用しないこと,および個人情報の漏洩に注意することについて説明し,同意を得た上で研究を開始した。【結果】 各測定値のICCは0.99(95%CI:0.96-0.99)で,極めて高い再現性が確認された。上肢最大挙上時の各測定値の平均は,GHEが疲労前84.5±8.2°,疲労後82.1±9.8°,SURが疲労前39.8±5.4°,疲労後39.9±5.4°,SPTが疲労前26.2±7.5°,疲労後24.4±6.3°であり,筋疲労前後での有意な差は認められなかった。上肢挙上角5°ごとのGHE,SUR,SPTを外旋筋群疲労前後で比較した結果,SURは挙上10°から60°の間で,疲労前と比べ疲労後で有意に高値を示した(p<0.01)。一方,GHEおよびSPTでは疲労前後で有意な差は認められなかった。【考察】 本研究の結果より,外旋筋疲労によって上肢挙上60°までの肩甲骨上方回旋角が有意に高値を示した。肩関節外旋筋の1つである棘下筋は,肩甲上腕関節の動的安定化に貢献する重要な筋である。また棘下筋の役割は,肩外旋運動や安定化作用のみならず,上肢挙上運動時の動作筋としての作用を合わせもつことが報告されている。さらに,上肢挙上運動における棘下筋の筋活動性を分析した先行研究では,挙上60°から90°の間でピークに達することを述べている。すなわち,肩甲上腕関節に作用する棘下筋の活動調節能の破綻は,上肢挙上運動に伴う肩甲骨運動の変化をまねくこと,また棘下筋が活動性を高める上肢挙上60°まで肩甲骨上方回旋を増加させることが示された。【理学療法学研究としての意義】 肩甲上腕関節に直接作用する外旋筋の筋疲労は,肩甲骨運動の変化を招くことに留意する必要がある。
著者
竹井 和人 村田 伸 大田尾 浩 安田 直史 甲斐 義浩
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.89-92, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
20

[目的]下肢荷重力および臀部荷重力を端座位で計測可能な装置を作成し,その測定器から得られる測定値の臨床的意義について検討した。[対象]要介護女性高齢者23名(要介護認定:要支援1~要介護1,平均年齢83.8±8.5歳,平均体重44.0±8.6?)とした。 [方法]下肢荷重力および臀部荷重力測定値と身体機能(座位保持能力,歩行能力,下肢筋力)との関連を,ピアソンの相関係数を用いて分析した。[結果]下肢および臀部荷重力は各身体機能との間に有意な正相関が認められた。また,下肢荷重力と臀部荷重力との間に有意な正相関が認められた。[結語]本測定器は,下肢機能の評価に加え,体幹機能を含めた総合的な身体機能評価としての活用が期待できる。