著者
千原 一泰 木村 幸弘 本定 千知 竹内 健司 定 清直
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.197-202, 2013 (Released:2013-08-31)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

Spleen tyrosine kinase(Syk)は,福井大学医学部において単離された非受容体型チロシンキナーゼである.SykはIgE受容体活性化を介したマスト細胞のヒスタミン放出やサイトカイン産生,マクロファージのファゴサイトーシス,破骨細胞の活性化,さらにB細胞の分化や活性化に必須の役割を担っている.また,最近の研究からある種の癌や自己免疫疾患,真菌やウイルス感染との関連も明らかになってきた.Sykが細胞機能の根幹に関わる重要な分子であることが次々と明らかとなるにつれ,その阻害薬の開発と種々の疾患に対する臨床応用への期待が高まっている.このような強い要望に応え,これまでに多くのSyk阻害薬が開発されてきた.しかし,そのすべてが臨床治験にまで至らなかった.ところが近年,新たなSyk阻害薬が開発され,アレルギー性鼻炎や関節リウマチへの有効性が脚光を浴びている.特にR788(フォスタマチニブ)は経口Syk阻害薬として開発され,米国において第III層試験が実施されている.本稿ではSykの発見の経緯,構造と生理機能を踏まえた上で,新しいSyk阻害薬について概説したい.
著者
岩田 重信 竹内 健司 岩田 義弘 戸田 均 大山 俊廣
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.14-21, 1995-01-20
被引用文献数
10 1

われわれは声の強さの調節に関し, 声門下圧を経声門的に抽出し, PS-77発声機能検査装置とPI-100自動解析プログラムにより, 声の強さ, 高さ, 呼気流率, 声門下圧, 声門抵抗, 声門下パワー, 喉頭効率を求めた.対象は正常者9例 (男性4例, 女性5例) で, 楽な発声と胸声とファルセットにて, crescendo発声を行わせた.楽な発声条件では, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率の値は性差を認めず, 声門下パワーは女性に比し, 男性に高い値を示した.crescendo発声では, 胸声区は声の強さの増加に比し, 呼気流率はほとんど変化を認めないが, 声門下圧, 声門抵抗, 喉頭効率は直線的な比例関係を示し, ファルセットでは, 胸声の同じ強さで比較すると, 呼気流率, 声門下圧, 声門下パワーは増大しているが, 喉頭効率は著しく低下していた.
著者
宮村 達男 宮村 逹男 (1990) 原田 志津子 竹内 健司 田中 幸江 湯浅 田鶴子 斎藤 泉 KUO George HOUGHTON Mike RUTTER William J.
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

非A非B型肝炎の起因因子はそれまでの種々の状況証拠からウイルスであることが想定されていたが、通常のウイルス分離方法や、抗原抗体検出系に基づく方法でその因子を同定することができなかった。共同研究が開始された1982年から、感染したチンパンジ-の肝組織または、血漿からRNAを抽出し、そのcDNAをライブラリ-化して、非A非B型肝炎ウイルス遺伝子の断片を得ることを試みた。1988年に、カイロンのグル-プが、λ gtllを用いたイムノスクリ-ニングによりその発現産物が非A非B型肝炎患者の血清と特異的に反応するcDNA断片を得ることに成功した(Choo et al.Science 244,359ー362;文献1)。日本で全く独立にそれまでに収集、解析されていた輸血後非A非B肝炎の患者の血清中に病型に対応してこの抗体の産生が認められた。更にこの患者に実際に輸血された血液の供血者にもこの抗体が検出された(文献2及び4)。この抗体は日本の非B型の肝がん患者の実に60〜70%にも検出される(文献3)。カイロングル-プはgene walkingによりこのcDNAが長さ約9.5キロベ-スの一本鎖RNAをそのゲノムとしてもつ全く新しいRNAウイルスであることをつきとめ、これをC型肝炎ウイルス(HCV)と名付けた(Choo et al.1989,Science 244,359ー362;Choo et al.1991,Proc.Natl.Acad.Sci.in press)。一方予研側は、このカイロンとの共同研究から塩基配列の情報を得て、日本人の供血者からHCVのcDNA断片を直接PCR法によって増幅、クロ-ン化した(文献6、7、9、12)。つまり日本とアメリカとで、各々ヒトと実験的に感染させたチンパンジ-の血液からHCVcDNAを得ることができた。この2つのHCVのcDNAの塩基配列とアミノ酸の配列を比較、更に類似していることが以前から提唱されているフラビウイルスのそれと比較した。フラビウイルスとの類似性もさることながら、ウシ下痢症ウイルスなどペスティウイルスとの一部の相同性もみつかり、これら3種のウイルスが互いに類似しながら全く別のウイルスであることが明らかとなった。この間、カイロングル-プは、HCVの非構造遺伝子NS4の領域を酵母で発現させ、その発現産物を利用した特異抗体検出ELISAを作出した。この検査法の有用性を世界で最初に示したのがこの協同研究による日本での患者及び、供血者での血液検査であった。その結果1989年の11月、日本が世界に先駆けて、このHCV抗体アッセイを輸血のスクリ-ニングに用いることとなった。このHCV抗体アッセイ系はその後世界中で輸血用血液のスクリ-ニングに用いられるようになっているが、C型肝炎の診断には必ずしも適さない点があった。我々の初期の検討により抗体が陽転するまでに数カ月を要することが示されていたからである。日本でのクロ-ン化されたHCVの遺伝子構造を詳細に調べた。まず、ウイルスの構造蛋白をコ-ドする構造遺伝子をサルCOS細胞でSRαプロモ-タ-の統御下で組換え、更にバキュロウイルスを用いて昆虫細胞でヌクレオキャプシド(コア)蛋白を発現させることに成功した(文献14、15、16)。これらの蛋白に対する抗体が患者血清中に特異的に検出されることにより同定することができた。これにより遺伝子の機能を同定されたのみならず、この蛋白を用いたELISAが、C型肝炎の早期診断やより感度の高い輸血血液のスクリ-ニングにも応用可能であることが示された。現在世界各国の協同研究者とその有用性を検討している。このコア蛋白にひきつづきエンベロ-プ蛋白の発現実験にも成功した(論文準備中、Matsuura et al)。分子量約35キロダルトンの糖蛋白である。この蛋白及びその下流にあるNS1の領域の発現産物を用いて今後、ワクチンやγーグロブリン製剤の実用化を検討してゆきたい。
著者
竹内 健司 遠藤 守信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)の構造、CNTの均一分散技術および細孔共連続構造ポリマーであるポリマーモノリス技術を最適に融合することにより、軽量高強度樹脂複合材の技術基盤の構築を目的としている。目標を達成するために複合材に適したCNTの検討に加えてポリマーモノリス材の調製および構造解析について検討した。調製したポリマーモノリス/CNT複合材は、ポリマーソリッド材のような脆性破壊が起こらず、CNT未添加のポリマーモノリス材よりも高い初期応力、圧縮破断強度、柔軟性を有し、圧縮後も構造の割れや破断が見られないことを示した。