著者
中村 博昭 鳥居 猛 鈴木 武史 吉野 雄二 山田 裕史 松崎 克彦 廣川 真男 石川 佳弘
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度に基礎を確立した複素および1進の反復積分の関数等式の導出法(Wojtkowiak氏との共同研究)を延長して,具体的な実例計算をさらに検証した.とりわけ古典的な高次対数関数について知られている分布関係式(distribution relation)の1進版を導出することに成功した.分布関係式は,様々な特殊値を代入することで,高次対数関数の特殊値の間に成立する様々な関係式を組織的に生み出す重要なものであり,1進の場合にも並行してガロア群上の関数族(1-コチェイン)を統御する要となることが期待されるが,前年度までに得られた関数等式との整合性についても検証を行った.8月にケンブリッジのニュートン数理科学研究所で行われた研究集会"Anabelian Geometry"において口頭発表を行った.このときの講演に参加していたH.Gangl氏,P.Deligne氏から今後の研究指針を考える上で有用になると思われるコメントを頂戴することが出来た.また分布関係式の低次項の解消問題に関連して,有理的な道に沿った解析接続の概念にっいて考察を進める必要が生じた.こうしたテーマに関連して研究分担者の鳥居氏には,有理ホモトピー論に関する情報収集を担当していただき,また研究分担者の鈴木氏には,量子代数やKZ方程式との関連で組みひも群の数理についての情報収集を担当していただいた.以上の研究成果の一部は,共同研究者のWojtkowiak氏と協力して,"On distribution formula of complex and 1-adic polylogarithms"という仮題の草稿におおよその骨子をまとめたが,まだ完成に至っていない.周辺にやり残した問題(楕円ポリログ版など)もあり,これらについて一定の目処をつけてから公表までの工程を相談する予定になっている.
著者
金子 晃 笠原 勇二 竹尾 富貴子 菊地 文雄 山田 道夫 三村 昌泰 成田 希世子 塚田 和美 真島 秀行 松崎 克彦 山本 昌宏 北田 均 バランディン アレクサン 薩摩 順吉
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

偏微分方程式の基礎理論の研究においては,ジェブレイ級の解の接続問題において,接続可能性を方程式の特性帯の重複度とジェブレイ指数に関連付けた新しい結果を得た.解の漸近挙動・スペクトルの研究では,定数係数線型偏微分方程式が劣指数的増大度の解を持つための条件を追求し,リウビユの定理の拡張を得た.また,枯草菌のコロニーパターン形成過程の数理モデルを提出し,計算機によるシミュレーションにより2次元パターンを再現し,それが相転移的メカニズムで起こることを明らかにした.さまざまな逆問題の研究では,双曲型方程式に対する逆問題の一意性を係数の正則性を弱めた形で導き,逆問題のリプシッツ安定性を最も望ましい形で示した.また,密度一定の2次元図形について,2方向からの投影データによる再構成問題の一意性が成り立つ場合に,その離散化版の実用的な再構成アルゴリズムを与え,安定なことを示した.一意性が成り立たない場合に適当な重み函数を見出してそれを最大にする解を計算機により探索し,非常に面白いパターンが得られることを発見した.偏微分方程式の数値解析的研究では,中厚平板のモデルであるライスナー-ミンドラン平板に対して新しい安定化混合型4辺形有限要素を開発し,ロッキングを起こさずに薄板モデルに漸近することを検証した.また,乱流のシェルモデルにおいて,相似則を満たすカオス解を追跡しリヤプノフスペクトルを得,それが波数空間において特徴的な波数の周辺にのみ大きな値を持つことを見出した.このアトラクタ次元が大きな極限での漸近表式を導き,数値計算との良い一致を検証した.更にスケール変換に対して不変な積分作用素に適合する双直交ウェーブレットを構成し,応用を与えた.また,修正8節点セレンディピテイ要素が3次の補間誤差を持つことを示し,具体的な問題に対する有効性を確認した.
著者
松崎 克彦
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

低次元トポロジー、擬等角写像の理論、タイヒミュラー空間論、双曲幾何学を使いながら、双曲的3次元多様体の剛性定理、離散群の極限集合上の作用のエルゴード性の研究、リーマン面のタイヒミュラー空間および射影構造の研究に関して成果をあげた。[1]では、リーマン面の射影構造を、展開写像のSchwarz微分により正則2次微分の空間として表現するときのいくつかの注意をあたえた。[2]では、グリーン函数を持たないような双曲的リーマン面に対応するフックス群の特徴づけに関するレビューをした。フックス群のMostow剛性についてのAstala-Zinsmeisterの定理の簡単な証明も紹介している。[3]では、非定数有界調和函数を許容しないリーマン面を、その正規被覆に対応するフックス群の保存性に関する条件で特徴づけた。[4]では、リーマン面のタイヒミュラー空間を普遍タイヒミュラー空間内に実現したとき、面積有限なリーマン面のタイヒミュラー空間の埋め込みが基点の変化に対して離散的であることを証明した。[5]では、有限型リーマン面の射影構造で展開写像が被覆となっている表現に対して、モノドロミ-表現の核が一致するとき、それらの表現は展開写像の像の間の等角写像で共役の関係にあるという基本定理を証明した。[6]では、有限生成クライン群間の代数的同型が幾何学的に誘導されるためのシャープな条件を与えている。但し、論文の番号は上の表に並べた順番にふられている。