著者
髙田 協平 羽田 麻美 渡邊 康志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p>沖縄島南部には第三紀の島尻泥岩と第四紀の琉球石灰岩が分布する。この地域では,島尻泥岩分布域において比高が小さく幅の広い谷を持つ低平な丘陵が,琉球石灰岩分布域では平坦な台地や段丘が形成されている(兼子・氏家, 2006)。さらに,石灰岩地域では円錐カルストや石灰岩堤(ライムストーンウォール)が分布する。本研究の目的は,与座岳周辺の残丘地形(円錐カルストを構成する円錐丘や泥岩丘陵)を対象とし,異なる地形・地質条件下における残丘の形態的特徴を明らかにすることである。</p><p>残丘の地形計測は,1948年米軍作製の1/4,800地形図を用いた。抽出する残丘は,2本以上の閉曲線で囲まれている(比高1.5m以上)かつ基底長が10m以上のものと定義した。本条件で抽出した計275個の残丘(石灰岩174個,泥岩101個)を対象に,QGISを用いて比高や底面積を計測するとともに,1/50,000地形分類図(国交省,国土調査)と1/50,000地質図(産総研)を重ね合わせて考察をおこなった。</p><p>地質別に残丘の形状を比較すると,石灰岩の残丘(以下,石灰岩残丘)は比高1.53〜54.6m(平均3.98m),底面積62〜98,291m2(平均4,112m2)であり,泥岩の残丘(以下,泥岩残丘)は比高1.53〜38.12m(平均4.77m),底面積108〜229,979m2(平均7,204m2)であった。残丘の底面積が大きいと,比高も大きい傾向がみられる。当該地域の石灰岩は,兼子・氏家(2006)によれば砕屑性石灰岩,サンゴ石灰岩,石灰藻球石灰岩の三種類に分類される。これら石灰岩の岩種別に残丘の形状を比較すると,砕屑性石灰岩において,残丘の比高が他よりも2倍程度,底面積が4倍程度大きい。また,残丘の基底面の形状の歪みを計算したところ,石灰岩残丘は泥岩残丘に比べて真円に近い傾向があった。一方で,石灰岩残丘のうち,石灰岩堤上に形成された残丘は,歪みが最も大きく基底面が楕円形をなしており,石灰岩堤がもつ直線的な形態の影響を受け,発達したものと考える。</p>
著者
漆原 和子 清水 善和 羽田 麻美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.102-117, 2015-03-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
22

ルーマニアの南カルパチア山脈チンドレル山地のジーナ村において,聞取り調査,空中写真および衛星写真判読,夏の宿営地となる山頂部の植生調査を行い,1989年の社会主義体制崩壊の前後と2007年のEU加盟後のヒツジ移牧の変化を検討した.調査地域では,3段の準平原面を利用した二重移牧が行われてきたため,放牧地や移動経路は切り拓かれて広大な草地が成立していた.社会主義体制下では約4万頭のヒツジを山頂部で放牧していたが,体制崩壊後は山頂部でのヒツジが激減し,2010年には3,500頭となった.その結果,森林限界付近のPicea abiesと山頂部のPinus mugo, Juniperus communisがその分布高度を上げて草地に侵入していることが明らかになった.侵入稚樹の最高樹齢はおおむね20~25年を示すことから,社会主義体制の崩壊直後から樹木が侵入していることがわかった.EU加盟後のヒツジの総頭数は社会主義体制当時の数に匹敵するまでになったが,山頂部へのヒツジの移動頭数は減少を続けている.
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。
著者
羽田 麻美
出版者
日本地形学連合
雑誌
地形 (ISSN:03891755)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.41-52, 2007-01-25

Rillenkarren are well developed on the surface of pinnacles at four karst areas, i.e., Akiyoshi Plateau, Hirao Plateau and Yamazato (Okinawa) in Japan and Lipica in Slovenia. Total 325 rillenkarren on total 67 pinnacles were selected for measurements. The width and depth of rillenkarren were measured using a carpenter's profile gauge and the slope angles of the trough of rillenkaren, i.e., slope angles of pinnacles, were measured using a clinometer. The results are as follows: 1) the slope angle of pinnacles with rillenkarren ranges between 29°and 65°in Akiyoshi and Hirao Plateaus, while it takes between 40°and 77°in Yamazato and Lipica; 2) the width of rillenkarren in four areas ranges between 1.5 cm and 6.5 cm, and it is a little narrower at Yamazato than that of the other three areas; 3) there is a difference in depth of rillenkarren, i.e., it ranges between 0.2 cm to 2.1 cm at Akiyoshi and Hirao Plateaus, between 0.4 cm to 4.2 cm at Yamazato and between 0.7 cm to 3.2 cm at Lipica; and 4) there is a common characteristic in all areas between the slope angle of pinnacles and the shape of rillenkarren, i.e., both of depth and width of rillenkarren become larger with increasing in slope angle of pinnacles.