著者
舟木 淳子 矢野 みどり 菊池 佐和子
出版者
福岡女子大学
雑誌
福岡女子大学家政学部紀要 (ISSN:02883953)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.29-32, 1994-01-25
被引用文献数
1

氷核活性細菌をアイスクリーム製造に利用できるかどうか検討するためにE.coli-inaAを用いて実験を行った。(1)アイスクリームミックスをドライアイスで冷凍すると-20℃の冷凍庫で冷凍した場合の約1/6の時間で凍結し, ドライアイスで冷凍した場合は急速凍結, -20℃の冷凍庫で冷凍した場合は緩慢凍結といえる。(2)官能検査とレオメーター測定により, 急速凍結したアイスクリームの方が緩慢凍結したアイスクリームより良い品質であることがわかった。(3)アイスクリームミックスは-5℃では通常凍結しないが, E.coli-inaAを添加すると-5℃で凍結した。また-10℃で凍結させるとE.coli-inaAを添加したものは無添加のものの約1/2の時間で凍結した。(4)これらのことから氷核活性細菌を利用することにより膨大なエネルギーを使用することなしに急速凍結が行え, よい品質のアイスクリームが製造できる可能性があることがわかった。
著者
舟木 淳子 矢野 みどり 早渕 仁美 荒井 綜一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.546-551, 1996-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

福岡県産豆腐味噌漬けの熟成過程における呈味,テクスチャーおよびタンパク質の変化について検討し,次のような結果を得た.(1) 豆腐味噌漬けは漬け込み日数が長くなるほどチーズ様の味が増し,柔らかくなることが官能検査およびレオメーターによる咀嚼試験から確かめられた.(2) 豆腐の総窒素に対する水溶性窒素の割合(タンパク質溶解率)は漬け込み前の水切り豆腐で13%であったものが漬け込み後2日で41%に達し,以後やや増加した.TCA可溶性画分中の遊離アミノ酸は熟成に伴って著しく増加し,漬け込み8日で水切り豆腐の26倍に達した.主な遊離アミノ酸はアルギニン,グルタミン酸,リジン,ロイシン等であった.(3) 電気泳動によりタンパク質の分解を調べた.熟成に伴ってβ-コングリシニンサブユニットおよびグリシニンの酸性サブユーットに対応する各バンドが消失し,20kd以下のバンドが増加した.(4) 走査電子顕微鏡により構造的変化を観察したところ,漬け込み日数の増加に伴ってタンパク質の網目構造が次第に崩れ,組織間の空間の拡がりが認められた.
著者
松本 真実 石橋 あや 高田 千夏 朝倉 富子 伊藤 圭祐 阿部 啓子 舟木 淳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.34, 2006

<BR>【目的】ミラクルフルーツの果実に含まれるタンパク質ミラクリンは、そのもの自身は無味であるが、これを味わった後に口に入れた酸を甘く感じさせるという性質を持つ。この効果は数時間持続し、その間、酸はショ糖のように甘く感じられる。このように一時的に味覚を変える物質を味覚修飾物質という。糖尿病や肥満が社会問題になっている先進諸国において、非グリセミック(低カロリー)甘味料は健康面でのベネフィットから注目され、また酸味の強い食品の摂取を容易にするという利点もある。本研究ではミラクルフルーツの甘味誘導効果の基礎的性質を得ることを目的とした。<BR><BR>【方法】ミラクルフルーツの果肉を100mM酢酸緩衝液で十分洗った後、0.5 M塩化ナトリウム溶液で抽出した後、70%飽和硫安沈殿画分を得、10mM酢酸緩衝液(pH5.5)で透析し、凍結乾燥して粗精製ミラクリンを得た。1mg/mlのミラクリン水溶液1mlを口に含んだ後、各種酸溶液、苦味溶液、塩化ナトリウム溶液について官能評価をおこなった。また、甘味誘導効果を消失させるものについても検討した。<BR><BR>【結果】粗精製ミラクリンによって、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸等、各種酸溶液に甘味が誘導された。特にクエン酸溶液やアスコルビン酸溶液は強い甘みを感じ、その味はスクロース溶液の味と類似していた。しかし、苦味溶液や塩化ナトリウム溶液の味の変化はみられなかった。また、塩化ナトリウム溶液で口をゆすいだ時は、蒸留水で口をゆすいだ時よりも甘味誘導効果が減少した。<BR>
著者
西原 百合枝 池口 舞 田﨑 奈緒子 藤本 彩花 朝倉 富子 舟木 淳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017-08-31

【目的】高齢者は食事摂取量低下などによって、タンパク質やエネルギーなどが不足しがちとなる。本研究では、われわれが嚥下困難者用食品として作製しているパン粥において、不足しやすい栄養を補給することを目的に、タンパク質を多く含む大豆製品を添加したパンを作製し、これらのパンを使用したパン粥の作製を検討した。<br />【方法】パンはホームベーカリー(SD-BMT2000、パナソニック株式会社)を用いて作製した。大豆製品はきな粉、おからパウダー、大豆粉を使用し、それぞれ強力粉重量の20%を置き換えた。これらのパン(きな粉20%、おからパウダー20%、大豆粉20%)について、比容積を測定した。その後、パンのクラムを水とともに攪拌、加熱しパン粥を作製した。パン粥はクリープメータ(株式会社山電)を用いてテクスチャー解析を行った。<br />【結果】パンの比容積は、きな粉20% 3.10±0.06 ml/g、おからパウダー20% 1.50±0.03 ml/gとなり小さかったため、4.35±0.10 ml/gとなった大豆粉20%についてパン粥を作製した。加熱時間5分30秒間のパン粥を45±2℃で測定した場合のパン粥の硬さは0.69±0.06 kPa、付着性は0.42±0.09 kJ/m<sup>3</sup>、凝集性は0.70±0.04となった。20±2℃で測定した場合の硬さは1.46±0.28 kPa、付着性は0.79±0.14 kJ/m<sup>3</sup>、凝集性は0.62±0.05となった。これらの値は消費者庁のえん下困難者用食品たる表示の許可基準に当てはまっており、大豆粉を添加したパンを使用したパン粥は、嚥下困難者用食品として利用できる可能性があると考えられた。<br />本研究の一部は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。
著者
舟木 淳子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,高齢者など咀嚼・嚥下に困難をもつ人でもおいしく食べるために必要な調理方法を示すことを目的とした。そのために,タンパク質を多く含有する食品(豆腐など)のテクスチャーを,タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることにより改変できることを示すことを試みた。プロテアーゼを作用させた豆腐は,やわらかくなめらかであり,対照との間に組織構造の差違が認められた。これはタンパク質のネットワーク構造がプロテアーゼにより切断されたためと考えられた。プロテアーゼ処理によるテクスチャー修飾は他のタンパク質を多く含む食品へ適用することができ,高齢者用食品への応用が可能であると考えられた。
著者
早渕 仁美 舟木 淳子 井上 厚美 柴田 直美 片倉 美穂 河内 幸子
出版者
福岡女子大学
雑誌
福岡女子大学家政学部紀要 (ISSN:02883953)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.37-42, 1991-01-25

調理操作をイラスト化して示し, 従来の文章表記やフローチャート表記との比較検討を行った。3種類の料理(スポンジケーキ, 三色丼, 八宝飯)について, 3通りの方法で作り方を示し, 506名を対象にアンケート調査を行った。文章表記とイラスト表記はほぼ同率でわかりやすいと答えられたが, 比較的馴染みのある料理や, 料理を作り慣れている人の場合は文章表記を, 馴染みのない料理やあまり料理を作ったことのない人の場合はイラスト表記を支持する傾向がみられた。一方フローチャート表記はいずれの場合も支持率が低かった。次にどのような理由であるいはどのような場合に, いずれの表記方法が好まれるかを721名を対象にアンケート調査を行った。「第一印象のよさ」「料理の想像しやすさ」「複数で実際に作る場合のわかりやすさ」はイラスト表記が, 「作業手順のわかりやすさ」「一人で実際に作る場合のわかりやすさ」は文章表記が最も支持された。調理操作をイラストで示すことは, 視覚を刺激して興味を引き, 料理の作り方のポイントや特徴を瞬時に理解させ, 一目でそれがどのような料理であるかを把握させることに役立つのではないかと考えられた。