著者
佐藤 洋子 良村 貞子 森下 節子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.小児入院施設の安全対策:(承諾が得られた小児入院3施設安全管理マニュアル、施設設備の検討)1)事故発生状況:調査前年度の病院別事故発生状況は、転落事故が23件、転倒事故3件であったが、その他の事故はなかった。2)3病院いずれも事故防止のための入院時資料を作成していたが、保護者を対象とするものが多く、小児を対象とする資料は、ビデオ・写真など、視覚的理解を促すものであった。3)3病院いずれも事故防止目的で環境整備(点滴、ベッド柵に関する安全使用表示。点滴スタンド脚の5脚化等、用具の工夫。クッションフロア・プレイルーム等環境の工夫)を実施していた。4)事故防止のために、B病院は7歳以上の患者を対象とする転倒・転落予測ツールを使用していた。2.入院患児の保護者の意識(質問紙回収率88.3%):1)保護者が入院中起こりやすいと考えている事故は、1位転落、2位転倒、3位打撲・外傷であった。2)事故防止実施上の責任を保護者と回答した者は、91.5%であった。保護者が看護師に期待する事故防止策は「環境整備を徹底してほしい」60.4%、「子供の行動を注意して観察してほしい」10.4%であった。以上のように、小児入院環境下では事故(転倒・転落、誤飲や窒息・打撲や外傷・火傷等)防止をするためのさまざま対策がとられていた。しかし、小児入院施設としての統一的な安全基準はなく、施設の工夫に任されていることが明らかになった。また、保護者は事故防止の責任を保護者にあると認識していた。保護者が、看護師に求める事故防止対策は、入院環境の整備が多いことが示された。このようなところから、看護師は、小児の病状を観察し、安全な環境を整備することが必要であり、安全基準の策定、保護者ならびに小児に対する教育等、具体的な事故防止の支援を進めることが今後の課題と考える。
著者
上野 祐可子 佐伯 和子 良村 貞子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.143-149, 2017 (Released:2017-03-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2

目的 幼児が咀嚼力を獲得するためには,児の口腔形態の変化や機能の発達に見合った硬さの食物を,適切な時期に摂取することが重要である。しかし,1 歳半児の養育者は,児に硬い物を与える必要があるという意識は高いが,児の発達段階より硬すぎるものを目安とする傾向にあった。そこで,1 歳半児の養育者が児の口腔発達に合った食物を与えているかを検討するため,日頃児に与えている食物の硬さの実態を把握し,歯の萌出状況との関連を明らかにすることを目的とした。方法 1 歳半健診を受診した 1 歳半児の養育者を対象に,児の口腔発達の指標として歯の萌出状況を,養育者が児に与える食物の硬さの指標として15品目の食物摂取状況を質問紙により調査した。調査票は無記名で,同意を得られた者のみに研究者もしくは保健師が直接配布し,郵送法により回収した。分析には χ2 検定,Fisher の直接確率検定を用いた。調査は,所属大学の倫理委員会の承認を得て実施した。結果 調査票配布501部,回収210部(回収率40.9%)中,有効回答は202部(有効回答率40.3%)であった。歯の萌出に関しては,切歯が 8 本未萌出である児が17人(8.4%),臼歯が 1 本も萌出していない児は30人(14.9%),上下同じ位置に萌出している臼歯の噛み合わせが2組未満の児が56人(27.7%)であった。歯の萌出と食物の硬さの関連は,「ステーキ・ソテー 1 切れ」を臼歯の噛み合わせが 2 組未満の児の方が,2 組以上ある児より有意に食べていた(P=0.001)。結論 1 割程度の児は,歯の萌出が一般的な発達の目安よりも遅かった。また,臼歯の萌出に適した硬さよりも硬い食事が提供され,十分な咀嚼ができないまま嚥下をしていることが示唆された。特に生野菜や肉類を児に与える時は,調理法にも注意を払うよう促し,乳臼歯の萌出状況に合わせた硬さの食物を提供する必要があると考える。
著者
下田 智子 八幡 磨並 山本 留美加 及川 幸子 良村 貞子
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.15-29, 2012-06

見守りは,援助者が対象者に対し,必要な介助や支援ができるような体制を整えて,意図的にその行為や様子を観察することである。また,看護師は患者の自立に向けた健康回復への支援において見守りを行うことが多いが,意図的な見守りが患者や家族に認識されていない場合もある。そこで,本研究では自立に向けたケアの一場面である嚥下障害の患者に対する食事時の見守りに着目し,その実態を参加観察法で調査した。A病院の神経内科・外科病棟で収集したデータは10場面であった。その結果,以下の点が明らかになった。 1.嚥下障害のある患者の食事時の看護師による見守りは,患者の状態に応じて,自立に向け,代償的な直接的ケアも合わせ行われていた。 2.見守りは,患者の自立に向け,個別的アセスメントに基づき,その項目や時間が変化していた。 3.「姿勢を整える」などの見守り時の看護師の直接的ケアは,姿勢の保持を観察することより他者に容易に理解可能な行為であった。
著者
良村 貞子 下田 智子 小笠原 克彦 岡崎 光洋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高精度TV会議システムを活用し、大震災で被災した宮古、気仙沼、大船渡、石巻を含む全国9か所の調剤薬局に送信機器を、大学に受信機器を設置し、実務経験10年以上の看護職者を相談員として遠隔健康相談を行った。相談の内容は血圧、体重コントロールや食事、育児、皮膚のトラブルおよび糖尿病の自己管理など多様であった。遠隔健康相談員の確保は容易でなかった。健康相談では個人情報保護が重要となるため、新たなクラウドを活用し、他者がアクセスできない状況で、潜在看護職者の協力を得て、在宅での受信時にiPadを活用し、問診、視診が実施可能か検証を行った。iPadは健康相談には十分活用可能であることが明らかとなった。
著者
矢野 理香 森下 節子 岩本 幹子 中澤 貴代 良村 貞子
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.3-14, 2005-10-26

本研究の目的は、看護過程の理論的枠組みと実践の統合を目指した帰納的な教授方略の効果を明らかにすることである。授業の展開;1年次、学生は右半身麻痺のある事例に、技術を実践して、ロールプレイをし、VTRを作成した。また技術が対象者にとって安全・安楽であったかを客観的に評価した。2年次、学生はこの学習を想起し、看護過程の理論的枠組みについてグループワークをした。研究対象;本看護学科2年次の学生80名。研究方法;授業評価アンケートを実施し、度数分布を算出した。また学生に、授業から理解できたことについてレポートを記述してもらった。その内容を類似する内容に分類してカテゴリを抽出した。結果・考察;アンケートの結果、80%以上の学生が授業は有益であったと回答していた。レポートでは、【実践をもとにした理論の理解】【看護過程と各理論の関連性】【理論をもとにした実践の評価】【看護過程と相互作用・コミュニケーションの関連性】の4つのカテゴリが抽出された。以上から、帰納的な教授方略は、理論と実践の統合を深める点で有効であったと考えられた。Purpose; The purpose of this study is to clarify the effect of the inductive learning strategy that aims at the integration of the theoretical framework for nursing process and practice. Class structure; First-year nursing students role-played simulations involving a case of right hemicorpus paralysis. They practiced skills they had already learned and taped their group's demonstrations, then evaluated them objectively. In second year they continued their studies into the theoretical framework of nursing process through group work. Methods; The sample consisted of 80 second-grade nursing students from a junior college. The students reported their understanding obtained through the class. Those contents were classified by similarities of contents and categorized. The authors reviewed the class evaluation questionnaire and calculated the frequency distribution of each item. Results and discussion; From the contents of the reports, the following four categories were obtained. 1.Relation between nursing process and each theory, 2.Understanding of theory based on practice, 3.Evaluation of practice based on theory, 4.Relation between nursing process, interaction and communication. In the questionnaire, more than 80 percent of the students answered that the class was useful. The authors therefore consider that the inductive learning strategy was effective in deepening integration between theory and practice.