著者
秋澤 紀克 小澤 一仁 芳川 雅子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.5, pp.269-291, 2021-05-15 (Released:2021-09-29)
参考文献数
77
被引用文献数
1

地球表面に露出しているかんらん岩は,過去においてマントルに存在していた物質であり,マントル物質の化石である.かんらん岩が経験した圧力-温度-変形史(P-T-d-t経路)を復元することができれば,どのようにマントルが地球内部で運動し,それに伴いどのように温度変化と変形が進行したのかを明らかにすることができる.そのP-T-d-t経路を,かんらん岩の地表への上昇による“化石化”の時点から連続的かつできるだけ過去に遡ることができれば,長期間にわたるマントルダイナミクスの理解を深めることができる.日高変成帯南部に位置する幌満かんらん岩体では,かんらん岩に記録された過去のP-T-d-t経路を詳細に読み解く研究が盛んに行われてきた.本稿では,幌満かんらん岩体のP-T-d-t経路の研究に焦点をあてレビューを行い,定置に至るまでの最終上昇時からできるだけ過去に遡って幌満かんらん岩体が辿った運動・熱・変形史を整理・概観し,新たな提案をする.
著者
土谷 信高 柴田 知之 芳川 雅子 足立 達朗 中野 伸彦 小山内 康人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

オマーンオフィオライト中の珪長質岩類は,海嶺期のもの,後期火成岩類に伴われるもの(衝上開始期),オフィオライト層序の下部に貫入する花崗岩質小貫入岩類(大陸衝上期)の3種類に区分できる.本報告では,これらのうちワジ・フィズ上流ザイミ付近のマントルかんらん岩中に貫入するものと,南部のハイレイン・ブロックのワジ・ハイミリアのマントルかんらん岩に貫入する大陸衝上期の花崗岩質小貫入岩体について,年代と岩石化学的特徴を述べる.これらの珪長質岩類の年代は,これまでに得られていた海嶺期および衝上開始期のものとほぼ同じかやや若い.また全岩化学組成は,海嶺期および衝上開始期のものと著しく異なることから,これらとは全く起源物質が異なることが分かる.詳細な検討から,ザイミのものは基底部変成岩類の白雲母を含むものの脱水分解溶融で,またワジ・ハイミリヤのホルンブレンドを含む岩石は角閃岩の部分溶融で説明可能である.
著者
芳川 雅子 荒井 章司 柴田 知之 石丸 聡子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.374, 2011 (Released:2011-09-01)

スラブや堆積物由来成分によるマントルウェッジのより詳細な改変過程を明らかにするため、西南日本弧背弧域福岡県玄界島沖の黒瀬に産するマントルかんらん岩捕獲岩6試料の鉱物の主要元素組成および単斜輝石のSr-Nd同位体・微量元素組成を求めた。その結果、フラットからV型のコンドライト規格化微量元素組成パターンを示し相対的に低いNd同位体比を示すタイプ2(Yoshikawa et al., 2010)の捕獲岩が多く認められることがわかった。これらの捕獲岩試料中の単斜輝石は様々な程度の負のZr・Ti異常を示し、単斜輝石のCeN/YbN比とスピネルのCr#(100xCr/Cr+Al値)に相関がなく、さらに非常に肥沃したSr-Nd同位体組成を示すものが含まれ、起源マントルが部分溶融した後に沈み込むスラブや堆積物由来の成分による交代作用を被った可能性が高いことを示唆している。
著者
森下 知晃 小澤 一仁 鈴木 勝彦 芳川 雅子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,本来直接観察・サンプル採取を行えない日本列島のような島弧深部相当(最上部マントル/下部地殻)でのプロセスを理解するために,アルバニアなどに露出するオフィオライトに着目し,野外調査および,採取した試料の解析を行った。その結果, 島弧深部相当,特にマントル相当の岩相について下位から上位にかけて(1)中央海嶺とは異なり,流体の流入を伴うようなマグマ活動に関連した岩相が上位にかけて増加すること(2)かんらん岩層の上位には,シリカの付加が普遍的に観察されること(3)これまで中央海嶺環境で形成されて来たと考えられていた西側部分について,一部が島弧でのマグマ活動および加水作用をうけていることを明らかにした。