著者
中村 光一 稲葉 次紀 若松 勝寿 仲野 〓 河崎 善一郎 依田 正之
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

平成10年度冬季ロケット誘雷実験は、準備・撤収を含めて平成10年10月26日から12月5日までの間、石川県奥獅子吼山山頂の北陸電力試験用送電線30号鉄塔付近で実施された。今年度は、鉄塔誘雷6回、地上誘雷10回の計16回の誘雷に成功した。この16回を加えると昭和52年度からの通算成功回数は187回(過去のエアー砲通算2を含まず)となる。本実験では火薬ロケット、火薬を使わないエアー砲、も試みた。主な研究項目は次の通りである。(1)鉄塔誘雷:160m長のナイロン糸でワイヤを絶縁することにより、鉄塔誘雷を目指す。鉄塔側では、碍子間電圧、塔脚電位、鉄塔脚に接続した針付き接地電極への分流、などの測定。(2)地上誘雷:接地されたスチールワイヤを火薬ロケット、エアー砲、ウォータロケットにより引き上げ、地上への誘雷を目指した。限流式避雷針の特性試験、雷エネルギー測定、雷管石の生成。(3)ロケット搭載型電界計による空間電界の測定、(4)雷測定:雷撃電流、地上電界、磁界変化、放電路の光学観測、雷鳴による放電路再現、液晶雷警報器の屋外試験、鉄塔コロナ電流、搭頂電界測定。(5)4km離れたベースでは地電流測定を行った。(6)誘雨ロケットによる誘雨試験も併せて行った。誘雷を目的としたロケットは21回打ち上げて16回成功した。他に、エアーロケットに200m長のロープを取り付け、地上に回収する方式の試験も実験した。結果の一覧を表1に示す。60m鉄塔への誘雷には160m長のナイロン糸を使用した。9回の内6回成功し、1回は山側下相導体に誘雷した。中国式限流避雷針と従来形避雷針を6m置いて並列させ、その上空20mに誘雷を導き、いづれの避雷針に誘雷するかのテストを試みたが、別の場所に誘雷した。ウォータロケットは、飛行高度が不充分で誘雷に到らなかった。本研究は、平成8年度から、3年間の継続研究であり、3年間の合計誘雷成功数は、36にのぼる。この実験を通して上述の(1)〜(6)に関し、多くの成果が得られた。
著者
若松 勝寿 櫻野 仁志 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.93, no.70, pp.17-23, 1993-05-28

静岡県の沼津(高専)と石川県の津幡(石川高専)および獅子吼高原で観測した23例の雷鳴から次の観測結果を明らかにしている。(1)雷鳴の圧縮波形の特徴から雷鳴を3種類に分類できる。(2)複数の雷放電で生じたように繰り返して轟き継続時間が30秒以上の長い雷鳴が冬季雷で多く観測される。(3)雷鳴の平均卓越周波数は平均140Hzで、伝搬距離と共に低下する。(4)卓越周波数が低下するのは、伝搬中に音が重畳して形成された高い周波数成分は吸収減衰し、同相付近で重畳した振幅の大きな低い成分が残ることによる。
著者
若松 勝寿 堀井 憲爾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.468-476, 1993-07-01
参考文献数
14

本論文は雷鳴の発生と伝搬、ロケット誘雷実験による雷鳴の観測法及び雷鳴解析による雷放電路の再現方法について述べている。雷鳴に含まれる特徴音を使用し、短い時間窓の相関解析から雷撃点近傍の雷放電路を詳細に再現し、最終電撃距離や雷撃進入角度が求められることを示している。自然雷の雷鳴に近い継続時間の長い雷鳴では、ゼロ交差数から相関解析の時間窓を決定して雷放電路を連続再現している。また、多重雷では支配的な雷鳴を形成する雷鳴から再現できることを示している。