著者
茅野 理恵 宮崎 紀枝
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では、まず大学生のピアサポーターによる若者向けゲートキーパー養成講座プログラムの開発を行う。大学生を対象とした調査等により、ピアサポーターによるゲートキーパー養成講座だからこそ有効となるプログラム内容について明らかにする。次に、ピアサポーターによる若者向けゲートキーパー養成講座において開発したプログラムを実施する。ピアサポーターは、前年度の講座修了者の中から養成。講座の実施については、現在の連携大学を順次拡大させ複数の大学が合同で講座に参加できる形での実施を目指す。さらに、ピアサポーターによるゲートキーパー養成講座プログラムの効果の検証を行う。
著者
柳内 桃代 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院総合人文社会科学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:2436326X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.179-190, 2021-06-01

本研究ではネガティブ情動への着目の必要性を示すため,開示抵抗感における対他的要因及び対自的要因の強さによる援助要請行動の特徴を明らかにしたうえで,ネガティブ情動への評価が開示抵抗感に及ぼす影響を検討した。その結果,開示抵抗感において対他的要因が高い場合,関係性に影響を与えにくい,且つ状況を説明しやすい相手を選択する傾向が見られた。更にネガティブ情動を抱く自分への嫌悪感が高い場合,相手からの否定的な印象を予期し,ネガティブ情動の開示を悪いことと捉える可能性が示唆された。
著者
五十嵐 哲也 茅野 理恵
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.43-51, 2018-09-30 (Released:2018-12-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究は,小中学生の登校への動機づけについて,自己決定理論に則って測定することができる尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的として実施された。その結果,自己決定理論の4つの枠組みに沿った尺度が作成され,内的整合性,構成概念妥当性,併存的妥当性,交差妥当性が確認された。また,概ね自己決定性の高い登校への動機づけは小学生の方が高く,自己決定性の低い登校への動機づけは中学生の方が高いことが示された。
著者
森川 知美 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.41-50, 2019-06-01

大学生を対象に,過去の関係性攻撃の被害経験についての自責傾向と他責傾向を調査した。その結果,過去の関係性攻撃の被害を自責的に捉えている群のほうが他責的に捉えている群よりも過剰適応尺度の「自己不全感」において有意に得点が高いという結果となった。このことから,過去の関係性攻撃の被害経験を自責的に捉えることがその後の精神的健康に負の影響を及ぼす可能性があることが示唆された。学校現場における関係性攻撃による被害者への対応として,攻撃を受けた要因について自責的に捉えないような支援が必要であることが明らかとなった。
著者
上村 桃香 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
no.17, pp.29-40, 2018-06

教育現場の抱える課題に対し,その課題固有な教師の効力感に焦点を当て,いじめ対応教師効力感に関する研究を行った。研究Iの教育学部生を対象にした調査から,教員養成課程の学生がいじめ対応の行動イメージに対して,漠然としたイメージしか持っていないことや,いじめに対応することに対して不安な気持ちを抱いていることが明らかとなった。研究Ⅱでは,いじめ対応教師効力感尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討し,十分な結果が得られた。研究Ⅲにおいて,いじめ対応教師効力感と被援助志向性との関連を検討した結果,被援助志向性を高めることがいじめ対応教師効力感を高める要因となる可能性が示された。
著者
茅野 理恵 飯田 順子
出版者
信州大学教育学部附属次世代型学び研究開発センター
雑誌
信州大学教育学部附属次世代型学び研究開発センター紀要 教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.17, pp.107-116, 2018-12-25

The purpose of this study is to collect retrospective data from university students in order to develop a teachers' training program to encourage students' help-seeking behavior and to improve teachers' responsiveness toward students' concerns. 283 college students completed a questionnaire asking to rate the difficulty they felt when consulting their teachers on certain issues and to write freely why they felt so. The results indicated that the experience of loss was rated high among the issues as something that should not to be consulted with teachers. Regarding the reasons for the difficulty, 516 excerpts were obtained from the free description and were classified using the KJ method into 6 categories: "reserved," "sense of worry," "sense of trust," "sense of resistance," "skill and opportunity," and "attitude toward help-seeking,". Implications of how these results can be applied to promote students' help-seeking behavior were discussed.
著者
茅野 理恵
出版者
長野県教育委員会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

目的:本研究では,児童生徒がどのような体験を喪失体験として感じているのか,そして教師は児童生徒がどのような喪失の体験をしていると考えているのかを明らかにし,さらに兜童生徒の認識と教師の認識との差異を検討することを目的とする。調査方法:質問紙調査法。対象者:大学生268名,教師324名(小103名,中109名,高112名)。調査時期:大学生2010年11月~12月。教師2011年9月~12月。大学生への実施については,臨床心理を専門とする研究協力者が調査実施前に喪失についての質問があることを説明し,最近喪失体験をした者や思い出すことが辛い経験をしている者は回答しないようお願いをした。調査内容:大学生は、小学校から高等学校までを振り返って「失った」と感じた出来事についてその内容を自由記述。教師は,児童生徒が学校生活の中で「失った」と感じるであろう出来事にはどのようなものがあると考えるか自由記述で回答を求めた。結果と考察:自由記述の回答をKJ法によって分類した結果,大学生の回答〔小学生〕,〔中学生〕,〔高校生〕,教師の回答〔小学校教師〕,〔中学校教師〕,〔高等学校教師〕の全てで共通する分類項目は「死別体験」,「親の離婚・不和」,「ケガ・病気」,「いじめ・対人関係トラブル」,「大切な物の紛失・破損」,「部活での敗北」,「学習のつまずき・受験の失敗」,「卒業」,「友人の転校・退学」,「自身の転校」であった。小・中のみに共通であったのは「教師からの叱責」。中・高では「失恋」,「メンバーや委員の落選」であった。児童生徒にのみ見られた項目は,中・高に共通で「キャラを演じること」,「夢の実現が不可能と知った時」,「以前は感じられた感情になれなかった時」であった。教師のみに見られた項目は,小・中に共通で「虐待」,「クラス替え・教師の転任」,「嘘の露見」,中・高で「目標の達成」,「不登校」であった。児童生徒の経験と教師のとらえは多くが共通していた。大学生の回答にのみ分類された項目に注目すると,人や物などの実態のあるものの喪失が伴わず,自分の中での感情の動きによってのみで生じている出来事であるととらえることができる。今後の課題:本研究では,何かを「失った」と感じた出来事についての調査を行ったが,その出来事によって具体的に何を失ったと感じたのかまで検討できていない。今後,この喪失感の構造についてより明らかにしていきたいと考える。また,本研究の結果からは,教師が児童生徒が喪失感を抱いているであろうと思われる体験の多くをとらえることができていると考えられた。しかし,茅野(2010)にあるように,その喪失体験が児童生徒にもたらす影響については十分に認識されてはいない。今後,喪失感がどのような問題につながる可能性がるのかの認識を高め,より適切なサポートの在り方を検討し,いかに実践していけるかが今後の課題である。