著者
伊藤 千夏 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-11, 2019-06-01

インターネットやSNSの利用については過剰利用をはじめとして有害な側面が注目されてきたが,近年ではSNS相談窓口による援助要請促進の取り組みが進められている。しかし,援助要請機能を含め, SNSの有益な側面についてはいまだに検証が十分ではない。そこで本研究は,インフォーマルな援助要請におけるSNSの利用方法とその効果を記述することを目的として,面接調査による質的検討を行った。その結果, SNSを利用した援助要請行動では,発信の際の自己表現によって得られるサポートの種類が異なることがわかった。SNSはこれまで過剰利用や対人関係の阻害といった点で、問題視されてきたが,本研究は援助資源としての可能性を見出したものである。
著者
金子 杏弓 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-28, 2018-06-01

本研究では,援助要請行動を悩みの相談行動と定義し,相談行動に対する被援助志向性,心理的負債感,抑うつの影響性を検討した。大学生297名を対象に質問紙調査を行った結果,相談行動に影響するのは悩みの経験および被援助志向性であることが示された。悩みの経験が多いほど,また,被援助志向性が高いほど相談行動を多く行っていた。心理的負債感および抑うつは相談行動に影響を及ぼさないことが示された。今後は,相談行動以外の援助要請行動や,援助要請をする相手による違いについても検討する必要がある。
著者
柳内 桃代 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院総合人文社会科学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:2436326X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.179-190, 2021-06-01

本研究ではネガティブ情動への着目の必要性を示すため,開示抵抗感における対他的要因及び対自的要因の強さによる援助要請行動の特徴を明らかにしたうえで,ネガティブ情動への評価が開示抵抗感に及ぼす影響を検討した。その結果,開示抵抗感において対他的要因が高い場合,関係性に影響を与えにくい,且つ状況を説明しやすい相手を選択する傾向が見られた。更にネガティブ情動を抱く自分への嫌悪感が高い場合,相手からの否定的な印象を予期し,ネガティブ情動の開示を悪いことと捉える可能性が示唆された。
著者
鈴木 比香乃 高橋 知音
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-75, 2018-06-01

本研究では、過敏型自己愛の攻撃表出に至るプロセスを解明するために,自我脅威場面において喚起される恥や不安が攻撃表出に与える影響を,過敏型と誇大型の高低を組み合わせた4タイプごとに比較検討した。大学生266名を対象に無記名の質問紙調査を実施した結果、過敏型と誇大型の傾向がともに高いと,恥や不安は攻撃表出の抑制としづ適応的な働きをするが,過敏型の傾向のみが高い場合は,恥や不安が攻撃表出を促進するという不適応的な働きをすることが示された。
著者
北津 加純 高橋 知音
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.39-49, 2017-06-01

感情のラベリングの方法の違いが,感情変化や認知的負荷に及ぼす影響について検討した。その結果,感情のラベリングを行う際に,自分自身で、ラベルを生成するよりも選択肢をもとに感情をラベリングした方が,画像による不快度や覚醒度が低下した。また,認知的負荷については自分で、ラベルを生成する条件が最も高かった。感情ラベルを選択肢から選ぶことで,自身の感情状態との距離化が生じ,不快度,覚醒度が小さくなる可能性が示唆された。認知的負荷がかからず感情制御効果も高い,選択肢を用いたラベリングは,今後カウンセリングなどの臨床場面での応用が期待される。
著者
西 くるみ 高橋 知音
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
no.19, pp.57-70, 2020-06-01

本研究では,援助要請先の対象を大学の学生相談室と想定し,援助要請をしやすくする際に必要とされる情報は何かを分類すること,相談室へ援助要請するために必要とされる情報は人によって異なるかどうか検言すするととを目的に研究を進めた。必要な情報は「相談室の実績」「相談相手」「相談室のシステム」に分類できることが示された。実際の介入には不気味イメージを払拭できるような情報提供が効果的であること示唆された。スティグマについてはこちらから介入できる効果的な情報は得られなかった。また,「情報があれば行く」という状態になるためには,少なくとも不利益イメージが低くなることが必要であるということが示された。
著者
長谷川 彩香 高橋 知音
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
no.19, pp.95-106, 2020-06-01

本研究では,評価懸念が強く自分の本一音を我慢して相手を気遣う傾向があると,親しい友人への援助要請に消極的な態度や抵抗感が高まるかどうか検討することを目的とした。大学生183名を対象に無記名の質問紙調査を実施した。調査では「親しい友人」を一人想起させ,その友人に対する被援助志向性と気遣いを測定した。その結果,評価懸念が高く自分の気持ちを我慢してまで相手を気遣う傾向にある人は,相手が親しい友人であっても援助要請に抵抗感をもつことが明らかになった。
著者
森川 知美 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.41-50, 2019-06-01

大学生を対象に,過去の関係性攻撃の被害経験についての自責傾向と他責傾向を調査した。その結果,過去の関係性攻撃の被害を自責的に捉えている群のほうが他責的に捉えている群よりも過剰適応尺度の「自己不全感」において有意に得点が高いという結果となった。このことから,過去の関係性攻撃の被害経験を自責的に捉えることがその後の精神的健康に負の影響を及ぼす可能性があることが示唆された。学校現場における関係性攻撃による被害者への対応として,攻撃を受けた要因について自責的に捉えないような支援が必要であることが明らかとなった。
著者
上村 桃香 茅野 理恵
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
no.17, pp.29-40, 2018-06

教育現場の抱える課題に対し,その課題固有な教師の効力感に焦点を当て,いじめ対応教師効力感に関する研究を行った。研究Iの教育学部生を対象にした調査から,教員養成課程の学生がいじめ対応の行動イメージに対して,漠然としたイメージしか持っていないことや,いじめに対応することに対して不安な気持ちを抱いていることが明らかとなった。研究Ⅱでは,いじめ対応教師効力感尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討し,十分な結果が得られた。研究Ⅲにおいて,いじめ対応教師効力感と被援助志向性との関連を検討した結果,被援助志向性を高めることがいじめ対応教師効力感を高める要因となる可能性が示された。
著者
山田 萌 水口 崇
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.16, pp.115-128, 2017-06-01

視覚的な注意の調整は, 他者の視線を手がかりにするとされていた。これに対して, 他者の行為の観察も視覚注意の調整効果を有することが報告されてきた。本研究では把持行為の手がかり効果について検討した。大学生24名に対し,把持行為の画像を見せ,ターゲット刺激提示後からボタンを押すまでの反応時間 (ReactionTime: RT)を測定した。その際,視点,ターゲット刺激の一致性,手がかりの抽象度の影響を分析した。結果,視点の影響が示され,自他いずれかの視点から行為を観察するかによって調整効果が異なることが示された。さらに, 自己視点では,手がかりの抽象度によって不一致よりも一致の方が, RTが短くなり,把持手がかり効果が確認された。この点は,従来の知見と異なっていた。得られた結果について,観察した行為と結びついた脳の運動プログラムの活性化,前頭前野の運動性言語野の賦活などから考察した。
著者
金子 杏弓 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-28, 2018-06-01

本研究では,援助要請行動を悩みの相談行動と定義し,相談行動に対する被援助志向性,心理的負債感,抑うつの影響性を検討した。大学生297名を対象に質問紙調査を行った結果,相談行動に影響するのは悩みの経験および被援助志向性であることが示された。悩みの経験が多いほど,また,被援助志向性が高いほど相談行動を多く行っていた。心理的負債感および抑うつは相談行動に影響を及ぼさないことが示された。今後は,相談行動以外の援助要請行動や,援助要請をする相手による違いについても検討する必要がある。
著者
金子 杏弓 高橋 史
出版者
信州大学大学院教育学研究科心理教育相談室
雑誌
信州心理臨床紀要 (ISSN:13480340)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-26, 2017-06

本研究では,被援助志向性に影響を及ぼす感情的側面として心理的負債感を仮定し,心理的負債感を感じやすい者ほど他者に対する援助要請への志向性が低いという仮説を検証した。大学生・大学院生92名を対象に質問紙調査を行った結果,被援助志向性と心理的負債感の聞には統計的に有意な相関がみられず,仮説は支持されなかった。この結果は,被援助志向性と心理的負債感がそれぞれ独立して援助要請行動に影響を及ぼしている可能性を示唆している。今後は,被援助志向性および心理的負債感が援助要請行動に及ぼす影響について検証を重ねる必要がある。