著者
福田 博美 後藤 正樹 岡本 陽 山田 浩平 五十嵐 哲也 山田 玲子
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.167-174, 2022-03-29

学校における子供の「おもらし(尿便失禁)」の援助の現状を示し、排泄支援に関する課題を明らかにすることを目的とした。養護教諭の調査から、学校種を問わずほとんどの学校で「おもらし」は起こっており、養護教諭が主たる援助者として対応していた。養護教諭・教諭共に、教員養成段階で「おもらし」の対応は学ぶ機会が少ないという学習の課題があった。さらに、教員の「おもらし」に対する対応の知の蓄積がなされていない課題、医療機関との関係の課題、「おもらし」の片付けのマニュアルが嘔吐の消毒のように作成されていないという感染拡大を予防する危機管理の側面の課題も見つかった。「おもらし」の着替えやお尻を拭くといった子供への対応や汚れた床などの片付けは、十分な時間が無く、人手不足を感じる負担に思う支援であった。今後、排泄に関する学習機会を、養成教育および現職教育において効果的に提供する方法や、科学的根拠に基づいた学校での「おもらし」への支援のマニュアル作りが望まれる。
著者
豊浦 正広 五十嵐 哲也 齋藤 豪 寺田 貴雅 茅 暁陽
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:21888949)
巻号頁・発行日
vol.2016-CG-162, no.1, pp.1-7, 2016-02-01

カラー写真などの任意の画像から多色織ジャカード織物パターンを生成する.ジャカード織物は数百本から数千本の並列化された経糸と緯糸が交差して構成され,各格子点での経糸と緯糸の上下を定義することで模様を作り出すことができる.多色織パターンは,各行各列の経糸色・緯糸色と格子点での上下関係を示す二値画像によって表現できる.従来法ではグレースケール画像のみを対象にしたり,カラーチャンネルごとに独立に処理したりしていたために,入力画像が持つ色調や陰影を十分に保つことができなかった.本研究では多色織パターンの生成のために (1) 任意色の経糸・緯糸による画像二値化,(2) 入力画像に適切な糸色の自動選択を提案する.実験では,生成されたパターンから製織した結果を示し,提案手法の有効性を示す.
著者
五十嵐 哲也 萩原 久子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.264-276, 2004-09-30

本研究では, 中学生の不登校傾向と幼少期の父母への愛着表象との関連を検討した。480名の中学生を対象とし, 以下の結果が得られた。1)「別室登校を希望する不登校傾向」は主に母親の「安心・依存」と「不信・拒否」, 「遊び・非行に関連する不登校傾向」は両親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。また, 「在宅を希望する不登校傾向」では異性親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。一方, 「精神・身体症状を伴う不登校傾向」は, 「分離不安」との関連が強かった。2)女子では, 幼少期の母親への愛着がアンビバレントな型である場合や, 父母間の愛着にズレが生じている場合に不登校傾向が高まる傾向が示された。女子はこうした家族内における情緒的不安定性への感受性が強く, 不登校傾向を示しやすいと言える。3)男子では, 「在宅を希望する不登校傾向」得点が高く, 幼少期の父母両者に対する愛着の「不信・拒否」と関連があることが特徴的であった。これは青年期以降の社会的ひきこもりに見られる状況と一致しており, 登校しながらも在宅を希望している男子の中に, 思春期時点ですでに同様の傾向が示されていると言える。
著者
五十嵐 哲也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.64-76, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
43
被引用文献数
9 4

本研究は, 中学進学に伴って変化した不登校傾向に対し, どのような学校生活スキルが関与しているのかという点を検討した。383名に対し, 小学6年と中学1年の時点で調査が実施され, 以下の結果が得られた。1)小学校段階では, 学習に関連するスキル不足があらゆる不登校傾向の増大と関連していた。また, 「休養を望む不登校傾向」はコミュニケーションスキル, 「遊びを望む不登校傾向」は集団活動や健康関連のスキルが関与していた。2)中学校段階では, 学習, 健康維持, コミュニケーションのスキルがほぼ全ての不登校傾向と関連していた。3)中学進学に伴う変化については, 中学校での学習や健康維持のスキルが全般的に関与していた。また, 「別室登校を希望する不登校傾向」増加には, 集団活動スキルの関与が特徴的であった。「遊び・非行に関連する不登校傾向」が増加した者は中学校での進路決定スキル, 「精神・身体症状を伴う不登校傾向」が増加した者は中学校でのコミュニケーションスキルの低さが特徴的であった。「在宅を希望する不登校傾向」が増加した者は, 中学校段階でのあらゆる学校生活スキルの低さが認められた。
著者
阿部 学 藤川 大祐 山本 恭輔 谷山 大三郎 青山 郁子 五十嵐 哲也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.67-72, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

本研究では,脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラム「私たちの選択肢」の開発を行った。授業においては,クラスの雰囲気といじめ抑止の関係について学んでもらうことをねらい,選択と分岐という工夫を取り入れた動画教材を活用した。実践結果についての考察から,本授業の有効性が概ね示された。
著者
伊東 宏樹 五十嵐 哲也 衣浦 晴生
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.15-20, 2009 (Released:2009-03-24)
参考文献数
30
被引用文献数
11 12

京都市北部の京北地域の広葉樹二次林においてナラ類集団枯損被害により林分構造がどのように変化したのかを調査した。毎木調査の結果, 胸高断面積合計でもっとも優占していたのはソヨゴで, 以下, イヌブナ・ミズナラ・コシアブラ・タムシバの順だった。ミズナラは半数を超える個体が枯死していたが, その枯損木を含めると, ミズナラの胸高断面積合計がもっとも多くなり, ナラ類集団枯損発生以前にはミズナラがもっとも優占していたことが推定された。個体位置が枯損被害発生源に近いほど, また個体サイズが大きいほどミズナラの死亡率が高かった。ミズナラの枯損により発生したギャップで更新し, 今後少なくとも短期的には林冠層で優占することが期待された樹種は, タムシバ・コシアブラ・イヌブナだった。マルバマンサク・ソヨゴも中層から下層で優占度が高まる可能性のあることが予想された。
著者
五十嵐 哲也 茅野 理恵
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.43-51, 2018-09-30 (Released:2018-12-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究は,小中学生の登校への動機づけについて,自己決定理論に則って測定することができる尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的として実施された。その結果,自己決定理論の4つの枠組みに沿った尺度が作成され,内的整合性,構成概念妥当性,併存的妥当性,交差妥当性が確認された。また,概ね自己決定性の高い登校への動機づけは小学生の方が高く,自己決定性の低い登校への動機づけは中学生の方が高いことが示された。
著者
青山 郁子 藤川 大祐 五十嵐 哲也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.189-192, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
14

本研究は,小・中学生の「ネットいじめの芽」の経験,そうした状況における深刻度の認識,対処の自信・対処行動について調査した.調査対象者は小・中学生419名,調査時期は2015年2月である.結果は,ネットいじめの芽の状況に関して男子よりも女子の方が多く経験を報告した.対処の自信において性差と学校間に有意な差は見られなかった.深刻度の認識では,小学生の方が問題の深刻さを認識していた.また,小学生の方が概ね積極的な対処行動を回答する一方で中学生は回避的な対処行動を選択してした.これらの結果から,予防においては,いじめの問題の深刻度の共有とともに,問題解決へのより適切な対処行動が取れるよう,発達段階に応じた予防対策の必要性が示唆された.
著者
五十嵐 哲也 萩原 久子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.264-276, 2004-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
5 5

本研究では, 中学生の不登校傾向と幼少期の父母への愛着表象との関連を検討した。480名の中学生を対象とし, 以下の結果が得られた。1)「別室登校を希望する不登校傾向」は主に母親の「安心・依存」と「不信・拒否」,「遊び・非行に関連する不登校傾向」は両親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。また,「在宅を希望する不登校傾向」では異性親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。一方,「精神・身体症状を伴う不登校傾向」は,「分離不安」との関連が強かった。2) 女子では, 幼少期の母親への愛着がアンビバレントな型である場合や, 父母間の愛着にズレが生じている場合に不登校傾向が高まる傾向が示された。女子はこうした家族内における情緒的不安定性への感受性が強く, 不登校傾向を示しやすいと言える。3) 男子では,「在宅を希望する不登校傾向」得点が高く, 幼少期の父母両者に対する愛着の「不信・拒否」と関連があることが特徴的であった。これは青年期以降の社会的ひきこもりに見られる状況と一致しており, 登校しながらも在宅を希望している男子の中に, 思春期時点ですでに同様の傾向が示されていると言える。
著者
五十嵐 哲也
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.211-216, 2010-02

本研究は,小学生における不登校傾向を測定する尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。289名の小学生に対する調査の結果,小学生の不登校傾向は「休養を望む不登校傾向」「遊びを望む不登校傾向」の2因子構造であることが明らかとなった。また,信頼性,妥当性はともに満足できるものであり,本尺度の有用性が実証された。さらに性差を検討した結果,「休養を望む不登校傾向」で女子の得点が高いことが認められた。本研究の結果を見ると,小学生の段階では中学生よりも「学校に行きたくない」と感じる気持ちが複雑化しておらず,より単純化した構造であることが示されたと言える。このことは,中学生において急激に増大する不登校の予防のために,その心的状況がより複雑化する前の小学生の段階から援助を実施することの必要性を示唆していると考えられる。
著者
五十嵐 哲也
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

学校に行きたくない気持ち(不登校傾向)と行かなければならない気持ち(登校義務感)の観点から適応状態を再検証し、登校意欲の改善に有用な学習活動支援を検討した。その結果、不登校傾向が低く登校義務感が高ければ適応が高く、満足感が高い学級で登校意欲が高まることが明らかとなった。また、学習への自信の獲得は有効な支援である一方、特に中学生への学習方略の獲得は、一時的に登校意欲を高めるのみであると示唆された。
著者
青山 郁子 五十嵐 哲也
出版者
愛知教育大学保健環境センター
雑誌
Iris health : the bulletin of Center for Campus Health and Environment, Aichi University of Education (ISSN:13472801)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.7-14, 2011

インターネットは生活に必要なツールである一方で,不健全な傾倒(Problematic Internet Use, PIU)が指摘されている。PIU とはインターネット中毒,インターネット乱用,インターネット依存症などの総称であり,ギャンブル中毒や物質依存に似た症状を見せる。また,孤独感・社会不安・低い自己肯定感など,様々な心理的悪影響を及ぼすとされる。しかし,国内におけるPIU に関する心理社会的研究は少ない。そこで,本展望論文ではPIU に関する近年の研究動向を概観した。また,PIU の原因の一つとされるオンラインゲームに関しても研究動向をまとめた。最後に,今後のPIU 及びオンラインゲーム研究の方法論における注意点を述べた。Internet is now an essential tool for our daily lives; however, problematic Internet use (PIU) and related social and psychological issues are not well-researched in Japan compared with western countries, Korea, and China. PIU is an unhealthy attachment to Internet-based technologies, and also termed Internet addiction, Internet abuse, and Internet dependency. Because PIU is similar to gambling and substance addiction and has various negative psychological effects such as depression, loneliness, anxiety, low self-esteem, and social skill deficit, it is important educational issues. Thus, the purpose of this paper was to review existing research on PIU. Study trends on problematic online game use (POGU) and its relationship with competitiveness and hostility along with theoretical background are also reviewed. Additionally, suggestions for research methodology are argued.