- 著者
-
荒木 俊之
- 出版者
- 地理科学学会
- 雑誌
- 地理科学 (ISSN:02864886)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.66-80, 2018-06-28 (Released:2019-08-21)
- 参考文献数
- 11
本稿では,神戸市灘区の水道筋商店街を事例に,大都市圏中心都市における地域型商店街をとりまく環境の変化を捉えたうえで,商店街の店舗構成の変化を明らかにした。水道筋商店街は,近隣地区の人口と世帯数が2000年以降に増加傾向にあり,現在も約300の店舗等が立地し,商店街を通行する者の数も多い。しかし,周辺地区に大型店の立地が進んだこともあり,水道筋商店街の年間商品販売額は1991年をピークに減少を続けている。こうした状況下,水道筋商店街では機能変化と地区間格差の拡大が進んできた。具体的に,機能変化としては,対個人サービス店および飲食店の店舗数が増加する一方で,買回品店および専門店などの店舗数の減少が確認された。また,地区間格差の拡大については,地区間での空き店舗率の差の拡大,チェーン店の出店状況の違いが確認された。水道筋商店街は近年,対個人サービス店および飲食店の店舗数の増加に加え,集客力のある食料品中心のスーパー,さらにドラッグストアなど新たなチェーン店が立地するようになった。その結果,多くの地域住民が水道筋商店街で最寄品を日常的に購入する傾向が強まり,集客力を維持していることから,政府からも成功した商店街として高い評価を受けるようになった。すなわち水道筋商店街は,地域型商店街から近隣型商店街へとその性格を変化させることで,衰退を免れ,現在も存続しているとみることができる。