著者
田中 康男 長田 隆 代永 道裕 山下 恭広 荻野 暁史
出版者
日本家畜衛生学会
雑誌
家畜衛生学雑誌 (ISSN:13476602)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.157-163, 2013-02

豚死体からの腐敗臭気の発生経過と成分特性把握を目的とした基礎的検討を行った。この結果、半導体式臭気センサーの測定値(臭気レベル)、臭気強度および臭気不快度は、腐敗開始後約一週間でピークに達し、その後急激に低下した。臭気成分としては、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル、トリメチルアミン、ノルマル酪酸が検出された。臭気成分の内、アンモニア、二硫化メチル、トリメチルアミンは腐敗死体に消石灰を散布することで若干上昇したが、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチルは散布により顕著に低下した。この結果より、腐敗臭気は消石灰を散布した時点で特性が変化することが示唆された。一方、臭気指数については、消石灰の散布前後でほとんど差が無かった。消石灰散布状態で腐敗した場合と散布せずに腐敗した場合を比較すると、前者の方が臭気発生ピークの出現が遅くなり、しかもピーク高が低くなった。このことから、消石灰散布は、臭気を抑制した可能性が示唆された。臭気センサーで測定した臭気レベルは、官能的な臭気の指標である臭気強度・臭気不快度と有意な相関関係のあることが示唆された。よって、迅速かつ経時的な腐敗臭モニタリングに臭気センサーが有効な可能性がある。
著者
寳示戸 雅之 波多野 隆介 村野 健太郎 林 健太郎 神山 和則 荻野 暁史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

<発生>農業に由来するアンモニア発生量を発生源別にできるだけ正確に見積もり、これを1kmメッシュ地図として示すとともに畑地、水田、草地からの発生量実態を観測した。<実態>国内27地点の大気中アンモニア、アンモニウム塩濃度を観測するとともに、栃木県の集約酪農地帯において湿性沈着、乾性沈着を観測し、地域内発生量からみた「大気を介した窒素循環」の実態を推定した。<影響>北海道標津川流域を対象として河川水の濃度と投入窒素量の解析から、流域に投入された窒素の一部は河川へ流出するものの残りは硝酸態窒素となり、脱窒を介して河川への炭酸イオンを増加させることを推定した。
著者
實示戸 雅之 池口 厚男 神山 和則 島田 和宏 荻野 暁史 三島 慎一郎 賀来 康一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.467-474, 2003-08-05
被引用文献数
23

耕地土壌表面における窒素収支を,投入窒素量と収奪量の差から求めた土壌残存窒素が余剰降水量に全量溶けたと仮定する年間平均溶脱水窒素濃度推定値を用い,都道府県別に評価した.その結果,以下のことが示された.1.年間亜平均溶脱水窒素濃度推定値の全国平均は7.8mg NL^<-1>,北海道を除く府県平均で8.8mg NL^<-1>,北海道で2.9mg NL^<-1>である.都道府県間のばらつきが大きく,30mg NL^<-1>を超えるなど極端に高い県と,値がマイナスを示す県とに分かれた.2.溶脱水窒素濃度推定値が高い府県では家畜ふん尿窒素負荷が高い場合が多い一方で,これらを含む多くの県において化学肥料窒素施用量のみでは溶脱水窒素濃度推定値を説明できなかった.3.現状の化学肥料窒素施用量の3割を削減することで,平均溶脱水窒素濃度推定値の全国平均が7.8→5.4mg NL^<-1>(-31%)に,府県では8.8→6.3mg NL^<-1>(-38%)に低下した.4.高度処理が可能なふん尿について窒素成分を除去し系外に排出する効果はそれほど大きくないが,これは前提となる処理可能量自体の問題と思われる.5.すべての休耕地を利用することにより,溶脱水窒素濃度推定値が全国平均で7.8→5.9mg NL^<-1>(-24%),府県平均では8.8→6.6mg NL^<-1>(-25%)と大きな削減効果が,さらに化学肥料削減の併用でさらに大きな効果が推定された.6.ただし今回の試算は,都道府県単位としたこと,年間平均溶脱水窒素濃度の性格,アンモニア揮散を窒素負荷減少要因と見なしたことなど,重要な精度低下要因が内包されており,改善の余地が残されている.