著者
後藤 杏里 佐々木 信幸 菅原 英和 角田 亘 安保 雅博
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.242-247, 2008-04-18
被引用文献数
1

We report a 47-year-old right-handed male patient with pure word deafness after suffering an intracerebral hemorrhage. He had been working as a high school teacher before the onset of his stroke. He was emergently admitted to our hospital due to left putaminal hemorrhage and treated conservatively after admission. The patient's neurological findings showed that although his auditory comprehension was severely impaired, he was still able to communicate using written language. Pure-tone audiometry didn't detect any sensorineural hearing impairment. After the diagnosis of pure word deafness was clinically made, we educated the patient and his family, as well as the associated medical staff at our department, about this condition so that they could understand his pathological situation. In addition, we introduced a rehabilitation program for lip-reading and showed him a technique for using articulatory voice production in usual conversation. As a result of our attempts, he developed the ability to communicate using lip-reading skills after 2 months of rehabilitation and successfully returned to his previous work because of the communicative competence he acquired. We also make some proposals for helping other patients with auditory agnosia to return not only to their regular daily activities but also to return to gainful employment, as patients with this condition seem to have special difficulties benefiting from the present welfare service system in Japan.
著者
菅原 英和 日下 真由美 笠井 世志子 水間 正澄 石川 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.123-129, 2021-02-10

はじめに 障害者のリハビリテーションは,身体的,精神的,社会的,職業的,経済的な有用性を最大限に回復させることを主目標としている.就労世代の脳卒中では,自宅に退院しただけでは主目標を達成したことにはならず,退院後もさまざまなリハビリテーションによる支援を受けながら,復職や何らかの社会参加の可能性を徹底的に追求しなければ最大限の回復を目指したことにはならない.ただ,高次脳機能障害や失語,片麻痺などの障害を遺した患者の復職支援は簡単ではない.患者と家族が回復の階段を一歩一歩着実に登れるよう,地域のリハビリテーション資源や専門職がおのおのの役割を果たしながらも休職期間の限られた時間のなかで機を逃さずに連携し,最後は職場をも巻き込んで復職へのソフトランディングを実現できるよう適切にコーディネートする必要がある.連携や支援の輪が途中で切れてしまい十分なリハビリテーションを受けられずに復職の可能性が消えてしまう,あるいは準備不足の状態で復職を迎えてしまいうまく定着できずに退職してしまうような事態は何としても避けたいところだが,実際には残念なケースが少なからずあるのではないかと思われる. このような「危うい治療過程」となっている就労世代の脳卒中リハビリテーションを少しでも確かなものにするためには,地域のリハビリテーション資源の役割分担と連携を明確にし,一部のモチベーションの高い職種や個人に依存しすぎない就労支援のシステム作りが求められる. 本稿では,就労世代の脳卒中患者が,急性期,回復期,生活期のリハビリテーションから就労支援を経て復職に至るまでのあるべき連携とおのおのの役割,共有するべき内容について述べてみたい. 就労世代の脳卒中患者が復職を目指してリハビリテーションを行う場合,「就労準備性」を高めていくという共通の目標を共有しながら進めていくことが重要である.「就労準備性」とは,働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係のスキルなど基本的な能力のことである.図1は「就労準備性ピラミッド」と呼ばれているもので,復職を目指すにあたっては「健康管理」,「日常生活管理」,「対人技能」,「基本的労働習慣」,「職業適性」の5つの項目に対する能力を,着実に積み上げていくことの重要性を表している1).実際には,これら5つの項目にはさらに細分化された下位項目が設けられており,チェックリストや支援計画書という形でさまざまな就労支援機関で使用されている. 「就労準備性ピラミッド」の積み上げは就労支援のサービスに移行してから開始するのではなく,発症直後の急性期病院にいる段階から開始されるべきである.急性期,回復期そして生活期の外来リハビリテーションや自立訓練を通じて「健康管理」,「日常生活管理」,「対人技能」を底辺から着実に積み上げていき,就労支援機関に移行した後は「基本的労働習慣」,「職業適性」の仕上げに専念できるようにしておくのが理想的である.「健康管理」,「日常生活管理」などの基礎が脆弱であると,就労支援へスムーズに移行できなくなるだけでなく,何とか復職できたとしても長期的にはさまざまな部分で綻びが出て働き続けることが難しくなってしまう. 図2は,回復期リハビリテーション病棟に入院するような中等度〜重度の障害を有する就労世代の脳卒中を想定して,発症から復職までにかかわるべき主なリハビリテーション資源と専門職を,急性期,回復期,生活安定期,就労準備期,就労定着期の5つの時期に分けて示したものである.これらの資源は施設面でも制度面でもバラバラに存在しているが,復職を支援する統一体として要所要所で手を結び合って機能していく必要がある.
著者
石田 洋子 石井 暁 菅原 英和 水間 正澄 石川 誠
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.111-116, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
9

【背景】誤嚥性肺炎後の廃用症候群に対するリハビリテーション(リハ)では,回復に難渋する例や状態が悪化する例も多い.【対象と方法】2002~2018年,当院回復期リハ病棟に誤嚥性肺炎後の廃用症候群で入院した232例において,藤島Grade,FIM(Functional Independence Measure),急性期病院への転院率,退院先など35項目を後ろ向きに調べ比較検討した.【結果】急性期病院への転院率は30.6%,在宅復帰率は58.6%,3食経口摂取獲得率は41.0%であった.【考察】誤嚥性肺炎後の廃用症候群では転院率が高く在宅復帰率が低い.全身状態を慎重に管理することが大切である.