著者
笠井 史人 水間 正澄 佐藤 新介 渡辺 英靖 和田 真一 飯島 伸介 國吉 泉 吉澤 則幸
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.206-209, 2010-07-01 (Released:2013-06-19)
参考文献数
6

症例は21歳男性,AVMによる脳出血,右片麻痺・失語症.若年発症や失語症による精神的ダメージが大きく,生きがいであるギターを演奏するためにスプリントと肩装具を作製した.訓練により演奏できるようになっただけではなく,回復停止したはずの麻痺手に改善がみられたため,上肢装具装着ギター演奏による片麻痺上肢機能訓練は,脳の可塑性に効果的と推測された.音によるフィードバックが得られ,運動学習に効果的な速度・課題のバリエーションもつけることができた.補装具と音楽療法の組み合わせによる本法は,楽しみながら効果を実感でき,高いモチベーションで訓練量を稼ぐことができるため,有効な上肢機能訓練法のひとつとして期待される.
著者
稲葉 宏 笠井 史人 國吉 泉 飯島 伸介 東 瑞貴 和田 真一 渡辺 英靖 佐藤 新介 水間 正澄
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.596-601, 2011

〔目的・方法〕回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)には,入院に当たって発症・受傷・手術から入院までの入院時発症後日数(発病・受傷・手術より急性期病院を経て回復期リハ病棟へ入棟するまでの期間)が厳密に定められており,一定の入院時発症後日数を超えた患者は入院が困難となっている.そのため,リハビリテーションによる回復が見込まれる患者においても,入院時発症後日数の延長によりその機会を奪われてしまうと想像される患者の存在が以前から危惧されていた.そこで今回,われわれは,回復期リハ病棟設立以前に当院当科へリハビリテーション目的で入院した患者の入院時発症後日数・入院時発症後日数延長の原因・回復期リハ病棟在院日数と転帰(在宅復帰率)の調査を行う事により,入院時発症後日数の予後に及ぼす影響を検討・考察した.〔結果〕在院日数・転帰(在宅復帰率%)は,入院時発症後日数が設定期間内の患者群(I群73症例)91.7±64.8日・80.1%が,設定期間超過の患者群(II群34症例)109.7±58.8日・67.6%より良好な結果を示した.しかしながら,何れの結果も有意差を認めるまでには至らなかった.しかも,II群の多く(34症例中,原因判明は25症例・73.5%)は,再手術・併存症や併発症の治療等が入院時発症後日数延長の原因となっていた上に,II群においても十分なリハビリテーションの効果が発揮され,在宅復帰な症例が34症例中23症例(67.6%)存在した.これらの結果より,定められた入院時発症後日数を超過した事のみによる判断にて患者の回復期リハ病棟への受け入れが困難となる事は,大きな問題であり,入院後の医療体制を含めて改善の余地が大いにあるものと考えられた.
著者
菅原 英和 日下 真由美 笠井 世志子 水間 正澄 石川 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.123-129, 2021-02-10

はじめに 障害者のリハビリテーションは,身体的,精神的,社会的,職業的,経済的な有用性を最大限に回復させることを主目標としている.就労世代の脳卒中では,自宅に退院しただけでは主目標を達成したことにはならず,退院後もさまざまなリハビリテーションによる支援を受けながら,復職や何らかの社会参加の可能性を徹底的に追求しなければ最大限の回復を目指したことにはならない.ただ,高次脳機能障害や失語,片麻痺などの障害を遺した患者の復職支援は簡単ではない.患者と家族が回復の階段を一歩一歩着実に登れるよう,地域のリハビリテーション資源や専門職がおのおのの役割を果たしながらも休職期間の限られた時間のなかで機を逃さずに連携し,最後は職場をも巻き込んで復職へのソフトランディングを実現できるよう適切にコーディネートする必要がある.連携や支援の輪が途中で切れてしまい十分なリハビリテーションを受けられずに復職の可能性が消えてしまう,あるいは準備不足の状態で復職を迎えてしまいうまく定着できずに退職してしまうような事態は何としても避けたいところだが,実際には残念なケースが少なからずあるのではないかと思われる. このような「危うい治療過程」となっている就労世代の脳卒中リハビリテーションを少しでも確かなものにするためには,地域のリハビリテーション資源の役割分担と連携を明確にし,一部のモチベーションの高い職種や個人に依存しすぎない就労支援のシステム作りが求められる. 本稿では,就労世代の脳卒中患者が,急性期,回復期,生活期のリハビリテーションから就労支援を経て復職に至るまでのあるべき連携とおのおのの役割,共有するべき内容について述べてみたい. 就労世代の脳卒中患者が復職を目指してリハビリテーションを行う場合,「就労準備性」を高めていくという共通の目標を共有しながら進めていくことが重要である.「就労準備性」とは,働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係のスキルなど基本的な能力のことである.図1は「就労準備性ピラミッド」と呼ばれているもので,復職を目指すにあたっては「健康管理」,「日常生活管理」,「対人技能」,「基本的労働習慣」,「職業適性」の5つの項目に対する能力を,着実に積み上げていくことの重要性を表している1).実際には,これら5つの項目にはさらに細分化された下位項目が設けられており,チェックリストや支援計画書という形でさまざまな就労支援機関で使用されている. 「就労準備性ピラミッド」の積み上げは就労支援のサービスに移行してから開始するのではなく,発症直後の急性期病院にいる段階から開始されるべきである.急性期,回復期そして生活期の外来リハビリテーションや自立訓練を通じて「健康管理」,「日常生活管理」,「対人技能」を底辺から着実に積み上げていき,就労支援機関に移行した後は「基本的労働習慣」,「職業適性」の仕上げに専念できるようにしておくのが理想的である.「健康管理」,「日常生活管理」などの基礎が脆弱であると,就労支援へスムーズに移行できなくなるだけでなく,何とか復職できたとしても長期的にはさまざまな部分で綻びが出て働き続けることが難しくなってしまう. 図2は,回復期リハビリテーション病棟に入院するような中等度〜重度の障害を有する就労世代の脳卒中を想定して,発症から復職までにかかわるべき主なリハビリテーション資源と専門職を,急性期,回復期,生活安定期,就労準備期,就労定着期の5つの時期に分けて示したものである.これらの資源は施設面でも制度面でもバラバラに存在しているが,復職を支援する統一体として要所要所で手を結び合って機能していく必要がある.
著者
石田 洋子 石井 暁 菅原 英和 水間 正澄 石川 誠
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.111-116, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
9

【背景】誤嚥性肺炎後の廃用症候群に対するリハビリテーション(リハ)では,回復に難渋する例や状態が悪化する例も多い.【対象と方法】2002~2018年,当院回復期リハ病棟に誤嚥性肺炎後の廃用症候群で入院した232例において,藤島Grade,FIM(Functional Independence Measure),急性期病院への転院率,退院先など35項目を後ろ向きに調べ比較検討した.【結果】急性期病院への転院率は30.6%,在宅復帰率は58.6%,3食経口摂取獲得率は41.0%であった.【考察】誤嚥性肺炎後の廃用症候群では転院率が高く在宅復帰率が低い.全身状態を慎重に管理することが大切である.
著者
鳴海 章人 川手 信行 水間 正澄 北川 寛直 丸加 由紀子 森 義明
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.467-470, 2000-07-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
10

We report rehabilitation of a 73-year-old male who was living alone, and had bilateral legs palsy due to rhabdomyolysis caused by falling asleep with his legs in a crossed leg sitting posture. He was found to be in a complex position of a crossed leg sitting posture and in a prone position; he was transported to an emergency center. He had bilateral legs palsy, muscles atrophy and sensory disturbance. His laboratory data showed increase in serum creatine kinase, creatinine, blood urea nitrogen. A diagnosis of acute renal failure caused by rhabdomyolysis was made, and haemodialysis was instituted. At the beginning of his rehabilitation, he could not sit up and stand up from the bed due to bilateral legs palsy. We attempt to increase his legs muscle strength by physical therapy: siting up exercise, standing up exercise. Three months later, he could sit up, stand up from the bed, and walk in the parallel assist-bars. We considered that rhabdomyolysis caused by compression to his lower limb as crossed leg sitting for a long time (compartmental syndrome), due to difficulty in shifting his posture. And we have to care the patients who have been difficulty in shifting posture due to hemiplegia, dementia, sensory disturbance, living alone, as they might be rhabdomyolysis caused by compartmental syndrome with improper body posture for a long time.
著者
川手 信行 水間 正澄
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.437-442, 2003
被引用文献数
1

在宅脳卒中患者の介護保険での介護給付について調査した.方法) 要介護認定を受けた脳卒中患者17名を対象に, (1) 要介護度, (2) 実際の介護支給額, (3) 介護給付内容, (4) 支給限度額まで利用しない理由など, 患者及び家族に調査した.結果) 介護度I; 4名, II; 4名, III; 7名, IV; 1名, V; 1名で, 16例が支給限度額半額以下の介護給付であった.給付内容はヘルパー, 訪問看護, デイサービスなどで, 全く給付のない症例も5名認めた.介護未利用理由は, 介護給付施設の不備・不足が多かった.また, 介護支援専門員から主治医へ介護情報の連絡は全くなかった.考察) 在宅患者の介護は, 地域の医療・保健・福祉及び介護の連携が必要と思われた.
著者
長沢 雅子 川手 信行 水間 正澄
出版者
Japanese Society of Prosthetics and Orthotics
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.156-159, 2014

広大な海という自然の中で行うサーフィン,健常者であっても多くのリスクを伴うアウトドアスポーツであるが,日本において障がい児者が楽しめる機会は徐々に広がっている.サーフィンに参加することにより精神的・身体的な向上を期待でき,また医療・リハビリテーション関係者が介入することで疾患や障がいの特性に合わせたリスク管理と,チームとしてのリハビリテーションアプローチが可能となるのではないか.アダプテッド・スポーツとしてのサーフィンにつき,既存の3団体を紹介しながら説明する.
著者
依田 光正 高崎 幸雄 笠井 史人 水間 正澄
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.129-133, 2002-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は57歳女性.くも膜下出血に脳梗塞を併発し, 発症5カ月後に当院へ入院.左半側空間無視・左片麻痺を認め, 左下肢は痙性亢進のため屈曲共同運動が著明で伸展が困難であった.運動療法, 薬物療法は効果が上がらず, 局所麻酔薬による坐骨神経ブロックを計10回施行した.次第に膝屈曲筋群の痙性は減弱し, 膝伸筋群の収縮がみられ, 下肢の支持性は向上し歩行可能となった.神経ブロックで一過性に膝屈筋群を弛緩させ, 相反性抑制を解除することが伸筋群の収縮を可能とし, 伸筋群に収縮が生じることで逆に屈筋群へ相反性抑制がかかり屈筋群の痙縮が軽減, その結果, 左下肢の支持性・歩行能力が向上したと考えられる.
著者
水間 正澄
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

知的障害特別支援学校の児童・生徒における運動器障害を調査し、問題点として姿勢、歩容の異常、足部変形が多くみとめられた。それらに対し、担任教諭および保護者に対して運動や靴の指導を中心に行った。実施度にはばらつきがみられたが実施者には改善が見られた。担任教諭に関しては担任の交代時に指導内容の申し送りがなされていないケースが多かった。結果をもとに作成した指導モデルの活用による実施率の向上に期待したい。