- 著者
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菊賀 信雅
福島 教照
澤田 亨
松下 宗洋
丸藤 祐子
渡邊 夏海
橋本 有子
中田 由夫
井上 茂
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.4, pp.230-240, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
- 参考文献数
- 29
目的 健康増進施設であるフィットネスクラブ(fitness club: FC)では,約4割以上の新規入会者が6か月以内に退会する。運動の習慣化に心理行動医学的アプローチが重要とされるが,民間FCの退会と関連する心理的要因を検討した報告は極めて少ない。そこで,本研究の目的はFC新規入会者における運動習慣の促進要因・阻害要因と退会との関連を明らかにすることである。方法 単一の経営母体である民間FC(17施設)の協力を得てコホート研究を実施した。2015年4月1日から2016年3月31日までのすべての新規入会者(5,421人)に自記式質問紙調査を依頼し,2,934人より回答を得た。未成年者(n=167)および回答欠損者(n=702)は解析から除外した。運動習慣の心理的要因は「簡易版運動習慣の促進要因・阻害要因尺度」で評価した。2016年9月30日まで追跡し退会の有無を把握した。Cox比例ハザードモデルにより全体および性・年齢階級別に検討した。結果 最終的な分析対象者は2,065人(平均年齢[標準偏差],39.0[15.0]歳,男性28.8%)で,追跡不能者はいなかった。平均追跡期間は10.1(4.4)か月で,退会率は24.6人/1,000人月であった。全体の分析では心理的要因と退会に有意な関連は認めなかった。層別解析において40-59歳の男性では「健康体力(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.72[0.52-1.00])。39歳以下の女性では,「身体的・心理的阻害(阻害要因)」得点が高い者では退会率が高かった(HR, 1.10[1.01-1.19])。40-59歳の女性では「対人関係(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低く(HR, 0.84[0.74-0.97]),「怠惰性(阻害要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.85[0.73-0.99])。男女とも60歳以上では「自己の向上(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が高かった(男性HR, 2.52[1.10-5.81],女性HR, 1.31[1.00-1.72])。結論 退会と関連する入会時の心理的要因は性・年齢階級により異なった。退会予防には入会者の属性や心理的要因に即した運動プログラムの提供が必要と考えられた。