著者
市川 淳 藤井 慶輔
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.377-385, 2020-09-01 (Released:2020-09-15)
参考文献数
55
被引用文献数
1

In this paper, we propose a research approach that is used in cognitive science to investigate more complex coordination mechanisms between three or more people. That is, we propose an approach that uses position data to quantitatively analyze group behavior and to link these characteristics with the cognition of anticipating others' behaviors. It is important for coordination to anticipate others' behaviors and to adapt one's own body movement to others based on anticipation. We highlight previous studies on problem solving and learning in cognitive science which have investigated interaction processes from verbal protocols during task implementation and indicated the importance of understanding others' perspectives. Additionally, recent cognitive models of estimating others' intentions and anticipating others' behaviors during interactions using non-verbal information such as eye movement, posture, and gesture, have been investigated. Considering these previous studies, we focus on group behavior and propose to apply the new approach mentioned above to discuss a mechanism of more complex coordination. We also refer to some studies of biological group behaviors in biology, artificial life, and sports science, and demonstrate a potential issue that such papers did not focus on the cognition related to coordinative group behaviors. This paper illustrates an example of discussing interactions with others, to which the new approach is applied. Our previous study here analyzed children's group behavior during nursery activities using position data and linked these characteristics with the cognitive development of anticipating others' behaviors based on spontaneous sociality. However, it is difficult to investigate some details of group behavior due to the limitation of field measurement, for example, the accuracy of a child's anticipation and whether a child moved based upon anticipation. In future work, it is important to analyze controlled group behavior and to indicate accuracy of individuals' anticipation from movement data to solve these problems.
著者
寺西 真聖 筒井 和詩 武田 一哉 藤井 慶輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3G4OS15b05, 2022 (Released:2022-07-11)

サッカーは22人の選手とボールが複雑に相互作用する競技である。サッカーの攻撃選手の定量的評価については、ボール保持状態に関する研究が多く、数は少ないがボール非保持状態に関する研究も行われている(例えば[1] Spearman et al. 2018)。しかし、ボールを保持せず、受け取らない攻撃選手の評価が難しく、典型的な(あるいは予測された)動きと比べて、どのように動いたことが得点機会の創出に寄与するかを明らかにすることが難しい。本研究では、軌道予測により生成された基準となる動きを実際の動きと比較して、オフボールの得点機会を創出する選手を評価する。提案手法では、まず正確に選手間の関係性をモデル化し長期軌道予測が可能な、グラフ変分再帰型ニューラルネットワークを用いて軌道予測を行う。次に、ボール非保持状態を評価する既存手法[1]の実データの値と軌道予測の値の差に基づき、基準となる予測された動きと比べて、どのように動いたことが得点機会の創出に寄与したかを評価する。検証では、Jリーグの全18チームとの得点との関連やある1試合の例を用いて、提案手法の評価が直観に合うことを示す。
著者
中原 啓 武田 一哉 藤井 慶輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3G4OS15b04, 2022 (Released:2022-07-11)

近年、測定技術の向上に伴い、野球の応用的なデータ分析が広く行われるようになった。グラウンド上のあらゆるプレーが定量的に評価され、個人やチームの戦略に大きな影響を及ぼしている。個人の打撃貢献を表す指標としてwOBAという指標がよく知られているが、wOBAは走者状況や点差などの試合状況を考慮しない。しかしながら、実際の試合において試合状況を考慮して複数の打撃戦略を使い分けることは一般的であり、その効果は未知である。これは、打者の戦略を第三者が取得できず、効果の推定が困難であるためだと考えられる。そこで本研究では、反実仮想シミュレーションによる効果推定方法を新たに提案する。これを実現するため、打撃戦略の変更にあたって妥当な打撃能力変換を行う深層学習モデルを提案する。本手法によって、実際の試合データでは難しかった、様々な戦略の効果推定が可能となる。検証の結果、打撃戦略のスイッチングコストを無視できる場合、戦略の使い分けが得点を増加させることが明らかになった。また、スイッチングコストを考慮する場合、得点が増加するための条件は限定的であることが明らかになった。
著者
小山 孟志 藤井 慶輔 陸川 章 有賀 誠司
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.276_3-276_3, 2016

<p> 本研究はバスケットボール選手の試合中における高強度運動について、心拍数を指標に定量化することを目的とした。大学男子バスケットボール選手(延べ27名)を対象に、選手の胸部に心拍センサーを装着し、試合開始から試合終了までの心拍数を計測した。最大心拍数の測定には漸増負荷測定時の最大値を採用した。試合に10分間以上出場した選手のデータを用いて、出場時間に対する最大心拍数の90%以上を記録した時間の割合について検討した。その結果、最大心拍数の90%以上を記録した時間の割合は49.1 ± 26.0%であり、その時間は540.5 ± 341.0秒であることがわかった。ポジション別に比較すると、ビッグマンはペリメーターに比べて最大心拍数の90%以上を記録した時間の割合が低いことがわかった。出場時間の約半分が高強度であるこの割合を、試合を想定した練習・トレーニングでも考慮するべき可能性がある。</p>
著者
藤井 慶輔
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の大きな目的「球技の1対1における防御のメカニズムを解明すること」に沿って、当該年度は前年度以前に実験を行った、以下3つの研究成果をまとめた。(1)攻撃者と防御者が実際に、リアルタイムで対峙したバスケットボールの1対1の状況を設定し二者の動作分析を行った。1対1の結果・過程を定義・分類し、防御者が攻撃者を阻止した試行は、「早い動き出し」「速い動作」「攻撃者の停止」という3つに分類できることが明らかになった。このことから、実際の球技の1対1において防御者が攻撃者の動作に与える影響を考慮に入れる必要性が明らかになった。(2)防御者の運動制御過程に着目し、準備状態が防御者の動き出しを早めることを床反力分析によって明らかにした。実験室的課題により動作を制約した準備動作(地面反力を体重よりも軽くする「抜重状態」を引き起こす自発的な垂直連続振動)を用い、大学バスケットボール選手にLED刺激に対するサイドステップ反応課題を行わせた。その結果、LED点灯時刻付近での抜重状態が動き出し時刻を早め、動き出し時刻付近での加重状態がターゲット到達時刻を短縮させたことが明らかになった。(3)実際の1対1の状況において床反力を測定することで、(2)で示された準備状態が防御者の動き出しを早め、攻撃者の防御を可能にするかどうかを検討した。その結果、実際の攻撃者との相互作用が起こる課題においても、防御者の大きくない(体重の1.2倍を超えない)動き出す前の地面反力が、攻撃者に対する防御者の動き出しの時刻を早め、防御が成功する確率を高めることが明らかになった。