著者
谷本 能文 泉 俊輔 古田 耕一 鈴木 友恵 藤原 好恒 平田 敏文 山田 外史 伊藤 喜久男
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.61-67, 2000-02-29 (Released:2011-03-01)
参考文献数
19

ミドリムシに対する強磁場の影響について研究した。生きているミドリムシは,水平方向の勾配強磁場(380T2m-1)中では,高磁場方向に移動する(正の走磁性)。一方,EDTAで殺したミドリムシは,低磁場側に集まった。8Tの均一磁場では走磁性は見られなかった。強磁場中のミドリムシの顕微鏡観察の結果,ミドリムシは磁場とほぼ垂直方向に配向して泳ぎ,また殺したミドリムシも磁場配向していた。ミドリムシの正の走磁性は,ミドリムシの磁場配向とミドリムシにかかる不均一な磁気力の2つを考慮することにより説明された。
著者
谷本 能文 藤原 好恒
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、(1)先に見いだした有機光化学反応に対する10Tクラスの強磁場効果の機構の解明、(2)さらに強磁場による新しい化学反応制御の可能性を模索することにある。(1)では、フェナントレン(Phen)とジメチルアニリン(DMA)をメチレン鎖で連結した連結化合物(Phen-(CH_2)_<10>-DMA)のエキサイプレックスケイ光の強磁場効果をナノ秒レーザー分光法により研究し、2T以上の磁場ではΔg機構による磁場効果が起こることが解明された。またアントラキノン(AQ)にメチレン側鎖をもつ誘導体(AQ-CO_2-(CH_2)_<n-1>-CH_3)のミセル中の光半により生成するラジカル対の強磁場降下のメチレン鎖長依存性、ミセルの種類の依存性をレーザー閃光法により検討したところ、δg機構による磁場効果が強磁場中で起こることが解明された。(2)では、金属銅と硝酸銀水溶液などの金属と水溶液系の酸化還元反応により生成する金属樹に対する強磁場効果を検討した。銅棒(5Φ X 250mm)と硝酸銀水溶液からの銀樹の生成反応(Cu+2Ag^+→Cu^<2+>+2Ag↓)では、金属樹の生成が磁場勾配により顕著な影響を受ける。すなわち強磁場中では銀樹がほとんど生成せず磁場の弱い箇所で主に生成することが明らかになった。この新しい磁場効果は、常磁性イオンである銅のイオンが勾配磁場効果により磁場に引き寄せられるためであることが解明された。また、反磁性結晶の成長が磁場配向するという新しい現象を見いだした。以上の研究から、「強磁場反応化学」というべき新分野の開拓の端緒を得ることができた。
著者
谷本 能文 藤原 好恒
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.413-422, 1995-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
17
被引用文献数
17 18

Effects of high magnetic field (<14 T) on the primary process of organic photochemical reactions and related phenomena are reviewed. With increasing a magnetic field, lifetimes of triplet radical pairs in micellar solution and triplet biradicals in homogeneous solution increase significantly, reach their maximum values at ca. 2 T, and then decrease gradually up to 14 T. These results are interpreted in terms of the radical pair mechanism. The effects at low field are attributable to the reduction of spin transitions due to the isotropic and anisotropic hyperfine interaction. The inversion of the lifetime is attributable to the enhancement of spin relaxation induced by the anisotropic g-value.