著者
藤岡 久美子
出版者
山形大学地域教育文化学部附属教職研究総合センター
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 (ISSN:18819176)
巻号頁・発行日
no.8, pp.49-56, 2013-03

本研究では,21名の幼児を対象に年少クラス在籍時及び13ヶ月後の年中クラス在籍時に注意と行動の制御に関する教師評定を行い,年中クラス在籍時に独自に開発した実行機能課題を実施し,また片付け場面の行動観察を行った。実行機能課題では,色あるいは形,または色と形の組み合わせによるターゲット図形が口頭で指定され,それらが多数描かれた図版を見てターゲット図形の数を答えることが求められた。転導性が高いほど課題成績が低かった。また,幼児が自発的に示すターゲットの復唱が試行の成功を伴うかどうかは,片付け場面の行動の種類と関連しており,復唱が成功を伴っているほど,片付け場面で自分が使ったものを片付けていたが,復唱しても失敗に終わっているほど,片付けへの取り組みが悪かった。また, 教師評定と片付け場面の行動の間にも,目標指向性が高いほど片付けへの取り組みがよいなどのいくつかの間連が見いだされた。 キーワード:幼児 / 自己制御 / 実行機能 / プライベート・スピーチ
著者
藤岡 久美子
出版者
山形大学地域教育文化学部附属教職研究総合センター
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 = Bulletin of Teacher Training Research Center, Yamagata University (ISSN:18819176)
巻号頁・発行日
no.9, pp.21-27, 2014-03

幼児期に自己に向けた発話(プライベート・スピーチ,PS) があらわれ,言葉の内化とともに内言へと移行することがヴィゴツキーの理論およびその後の研究において示されている。本研究の目的は,認知的課題に取り組む際に幼児が示すPSの個人差と幼稚園での自由遊び場面での目標指向性との関連を検討することである。21名の幼児が年少クラス在籍時および1年後に絵カード分類課題に取り組み,課題中のPSが測定された。年中時には自由遊び中の行動と注意が記録された。PSと行動・注意の関連を検討したところ,ぼうっとしていたりうろうろすることが多いほど,分類課題中のPSが少なかった。また,1年間でPSが増加した群においてのみ,製作やごっこ遊びなど静的な遊びを相手に注意を向けて取り組んでいるほど,課題中の文形態のPSが多く示された。これらの結果から,思考の道具であるPSを認知的課題に取り組む際に多く示す幼児は,日常的にも目標指向的で,行動や注意が制御された状態を多く示すことが示唆された。 キーワード:幼児 / プライベート・スピーチ / 自由遊び / 自己制御
著者
藤岡 久美子
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.9-23, 2013-02-15

本稿は、幼児期・児童期の引っ込み思案に関する最近の研究を概観した。まず、研究で用いられているsocial withdrawal, solitude, shyness, inhibitionなどの用語及び具体的な測定方法から引っ込み思案のとらえ方を整理した。次に、乳児・幼児期の縦断的研究を中心に、乳児期の抑制が幼児期の遊び場面での一人行動に至る道筋に関与する、気質や養育スタイルに関する知見をまとめた。また、幼児期から児童期にわたる長期縦断研究を含む児童期の研究から、引っ込み思案が学校での不適応へとつながる軌跡及びそのつながりに関与する要因について検討した。最後に教育への示唆を述べた。
著者
藤岡 久美子 フジオカ クミコ Fujioka Kumiko
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.9-23, 2013-02-15

本稿は、幼児期・児童期の引っ込み思案に関する最近の研究を概観した。まず、研究で用いられているsocial withdrawal, solitude, shyness, inhibitionなどの用語及び具体的な測定方法から引っ込み思案のとらえ方を整理した。次に、乳児・幼児期の縦断的研究を中心に、乳児期の抑制が幼児期の遊び場面での一人行動に至る道筋に関与する、気質や養育スタイルに関する知見をまとめた。また、幼児期から児童期にわたる長期縦断研究を含む児童期の研究から、引っ込み思案が学校での不適応へとつながる軌跡及びそのつながりに関与する要因について検討した。最後に教育への示唆を述べた。
著者
藤岡 久美子 渡辺 梢
出版者
山形大学
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 (ISSN:18819176)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.19-26, 2011-03-15

本研究は引っ込み思案行動に対する幼児の受容度について,引っ込み思案行動の場面および種類の点で検討した。90名の幼児を対象に,七つの場面における3種類の引っ込み思案行動の合計21個の仮想場面を提示し,登場人物への受容度を尋ねた。七つの場面は仲間入り・あいさつ・会話・要求に対する応答2場面・援助2場面であり,引っ込み思案行動は,働きかけに対して消極的に反応するもの・躊躇するもの・無反応なものであった。消極的な反応に対する幼児の受容度は,すべての場面において高かったものの,年齢が上がるにつれて受容度は減少する傾向が示された。躊躇や無反応に対する受容度は,場面や年齢および性により異なっていた。要求に対する応答場面や援助場面で示される躊躇や無反応は,受容されにくく,また,年中より年長,男児より女児の受容度が低い場合があった。これらの結果から,自分から集団参加しない他者に対する幼児の評価は,利害のないやりとりの場面での消極的反応に対しては否定的ではないが,明確な応答や自発的な行動が期待される場面においてそれを示さない場合に否定的になることが示唆された。キーワード:引っ込み思案, 幼児, 対人認知