著者
川堀 真人 藤村 幹
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.154-158, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
12

脳梗塞, 外傷性脳損傷, 脊髄損傷など多くの中枢神経疾患に対して幹細胞を中心とした細胞治療が基礎的研究の段階を経て, 臨床研究の段階へと入ってきている. 一部では少人数での安全性・有効性をみるearly phaseの治験の成功を踏まえ, 比較的大人数のlate phaseの治験へと移行しつつあり, その後の上市や保険承認など産業化への道筋が見えてきている. 本発表では, 中枢神経疾患に対する幹細胞の特徴・作用機序を概説し, その後, 最近報告された運動機能障害を有する慢性期頭部外傷に対する遺伝子改変他家骨髄由来幹細胞 (SB623) の安全性と有効性に関する研究 (StemTra研究) の結果について報告する.
著者
穂刈 正昭 藤村 幹 川堀 真人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「心停止・重症SAH・低酸素・外傷性脳圧亢進」等によってもたらされる「広範性脳損傷」は「難治性の意識障害(遷延性意識障害)」をもたらし、その治療法の開発は急務である。本研究は「間葉系幹細胞」から分泌され神経保護作用を有する「エクソソーム」を「高濃度で脳内に到達させる」ため「経鼻的投与法」を採用し、その治療効果を検討する。①異なる時間軸での効果検証(「急性期」および「慢性期」投与に対するエクソソームの脳内分布と治療効果)、そしてその新規的作用機序である②「脳-腸」相関機構の解明を目指す。
著者
面高 俊介 遠藤 英徳 藤村 幹 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.81-86, 2022 (Released:2022-02-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1

未破裂脳動脈瘤診断に伴う治療方針決定の際には破裂高リスク状態の動脈瘤をいかに捉えるかが重要となるが, 動脈瘤の発生から破裂までの経時変化は多岐にわたり予測が難しい. 近年MRIを用いた血管壁イメージング (VWI) が普及し瘤壁造影効果の評価が可能となりその役割に注目が集まっている. VWIにおける瘤壁造影効果は2013年に破裂瘤の, 2014年には破裂リスクを伴う未破裂動脈瘤の特徴として初期の報告がなされ, その後これらを支持する多くの報告があり現在に至っている. VWIは瘤壁の炎症を画像化する新たなmodalityとして動脈瘤診断における有用性が期待されておりさらなるエビデンスの蓄積が求められる.
著者
遠藤 英徳 藤村 幹 松本 康史 遠藤 俊毅 佐藤 健一 新妻 邦泰 井上 敬 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.514-521, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
34

頚動脈狭窄症に対する外科治療の是非に関して, これまで数多くのランダム化比較試験 (RCT) が行われてきた. 古くは, 内膜剝離術 (CEA) と内科治療を比較したRCT, その後CEAと頚動脈ステント留置術 (CAS) を比較したRCTが行われ, その結果に基づいて治療ガイドラインが作成された. 症候性高度狭窄に対してはCEAもしくはCASの有効性が示されているが, 内科治療が発展した現在においては, 無症候性病変に対する外科治療の有効性検証が課題である. 今後は, 外科治療の危険因子を抽出し, 治療対象を明確化していく必要があるとともに, 術者教育環境を整え, 治療成績の維持・向上に努める必要がある.
著者
藤村 幹 冨永 悌二 新妻 邦泰 麦倉 俊司 坂田 洋之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

もやもや病は小児や若年成人に多い原因不明の脳血管障害であり、基礎病態として病的異常血管網発達あるいは代償的な側副血行路を含めた血管新生能を内在する特有の疾患である。本研究は、もやもや病における内因性多能性幹細胞に着目し、血行再建術後の血管新生における多能性幹細胞の役割について検証する。さらに、もやもや病に対して日常診療で汎用されている抗血小板剤シロスタゾールを用いて内因性幹細胞由来の血管新生を誘導することにより血行再建術の効果を促進するという新しい試みである。細胞移植という手段によらず間接血行再建術からの血管新生を誘導する手法の開発により、もやもや病の治療成績の飛躍的な向上が期待できる。
著者
藤村 幹 冨永 悌二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.844-850, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

頭蓋外内血行再建術は脳虚血症状を有するもやもや病に対する有効な治療法である. 直接血行再建術による術直後から脳血流改善に加え, 間接血行再建術により慢性期血管新生誘導が期待できる. 鈴木分類で示される本疾患の基礎病態, すなわち内頚動脈系から外頚動脈系への緩やかな血流依存の変換 (IC-EC conversion) といった本疾患に内蔵された生理的代償機構を達成・促進するうえでも, 頭蓋外内血行再建術は完成されたコンセプトを持つ治療法である. Japan Adult Moyamoya Trialの結果を受け, 本術式の適応は出血発症例にも拡大傾向にある. 周術期においては脳虚血や過灌流症候群などの合併症回避が重要である.