著者
星 正治 坂口 綾 山本 政儀 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 川野 徳幸 豊田 新 藤本 成明 井上 顕 野宗 義博 原田 結花 高辻 俊宏 七條 和子 遠藤 暁 佐藤 斉 大谷 敬子 片山 博昭 チャイジュヌソバ ナイラ ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ ズマジーロフ カシム 武市 宣雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

放射線による発がんなどのリスクは、ほぼ広島・長崎の被ばく者の調査により評価されてきた。その結果は国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て、国内法である放射線障害防止法に取り入れられている。しかし原爆は一瞬の被ばくであるが、セミパラチンスクでは長時間かつ微粒子による被ばくである。従ってそのリスクは異なっている可能性がある。本研究は共同研究による被曝線量とリスク評価である。測定や調査は、1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦、歯、染色体異常による被曝線量、3.聞き取り調査による心理的影響、4.データベースの整備とリスク、5.微粒子効果の動物実験などであり、被爆の実態を解明した。
著者
佐藤 健一
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.425-431, 1996-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29
著者
佐藤 健一 小林 量作 計良 圭一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3068, 2009

【目的】麓(1982,1989)の研究によると、利き足には機能的利き足(以下、機能足)と力発揮の利き足(以下、支持足)に分けられる.前者はボールをける足で右足が多く、後者は高跳びなどの踏み切り足とされ左足であることが多い.本研究の目的は、左右及び利き足の違いによって片脚立ち保持時間に影響を及ぼすか検討することである.<BR>【方法】対象は本学およびA専門学校学生588名(男性394名、女性194名、19.5±1.7歳)の内アンケートにおいて骨・関節障害の記載者を除いた463名(男性316名、女性147名、19.5±1.6歳、身長168.1±8.2cm、体重61.1±9.5kg)である.対象者に開眼・閉眼片脚立ち時間の測定およびアンケートを実施した.片脚立ち時間の測定は上限を120秒とし、開眼、閉眼において左右各2回行い最長時間を代表値とした.アンケートは、年齢、身長、体重、運動器疾患の有無、車酔いの頻度、めまいの有無、機能足(ボールをける足)、支持足(高跳びの踏み切り足)である.統計解析にはSPSS Ver.12を使用し、一元配置分散分析、対応のないt検定、有意水準5%未満とした.なお本研究は新潟医療福祉大学倫理委員会の承認を得て対象者全員から書面による同意を得た.<BR>【結果】(1)利き足の割合は支持足右42.7%、左52.9%、左右4.3%.機能足右92.6%、左5.2%、左右2.2%で、利き足の組み合わせは9通りみられ、最も多かった組み合わせは支持足左-機能足右49.5%、次いで支持足右-機能足右39.3%であった.(2)片脚立ち時間の性差は、開眼・閉眼とも認められなかった.(3)車酔い、めまいのアンケート結果と片脚立ち時間及びロンベルグ率(閉眼片脚立ち時間 / 開眼片脚立ち時間)の比較でも有意差は認められなかった.(4)左右の片脚立ち時間では、開眼(右117.3秒、左118.8秒)、閉眼(右55.8秒、左60.7秒)のいずれも左右差が認められた.(5)支持足および機能足の左右差では、支持足における閉眼片脚立ち(右50.6±38.9秒、左65.2±44.0秒)のみ有意差が認められた.(6)ロンベルグ率における支持足、機能足の左右差においても支持足(右0.4±0.3、左0.5±0.4)のみ有意差が認められた.<BR>【考察】片脚立ち保持時間については支持足が左であることが他の条件(支持足が右、機能足が左など)よりも有意に長く、特に閉眼片脚立ちで顕著であった.これは、姿勢バランスの視覚による補正が断たれることで顕在化したものと考えられる.また、閉眼では全体的に標準偏差が大きいことから、片脚立ち保持時間の測定には利き足の個人差が影響すると考えられる.
著者
大瀧 慈 神田 隆至 藤越 康祝 佐藤 健一 越智 義道
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1)SIRによる有効射影縮約空間の次元選択のための統計規準の構築正準判別関数法において使われているモデル選択基準を基に、SIRでのEDR空間の次元の推定のための統計的選択基準を構築し、数値実験によりその性能を検証した。(シンポジューム「多次元データ構造の探索」において発表、現在論文投稿準備中)2)SIRアルゴリズムの改良回帰関係が対称的構造を伴う有効射影方向に対して、SIRのオリジナル版のアルゴリズムが上手く働かない問題に対して、主要点解析法を組み込みその性能の向上を試みた。(Symposium on"Statistics,Combinatorics and Related Areas",Bombay(India),2000にて発表、現在投稿準備中)3)B-スプライン法による散布図平滑化アルゴリムの改良B-スプラインの基底関数の結節点の配置を調整することで、スプライン曲線モデルの適合度を向上させるように平滑化アルゴリズムの改良を行った。(現在、論文投稿中)。4)低次多項式によるパラメトリックモデルとB-スプラインモデルによるノンパラメトリックモデルの選択における統計的規準の構築(現在、投稿準備中)5)ノンパラメトリック回帰モデルによる一戸建て住宅データ解析(広島女学院大学生活科学部紀要,2000にて論文を掲載済)6)ノンパラメトリック回帰モデルによる日本の市区町村別肺がん死亡危険度データの解析(Jpn J Clinical Oncology,2000に論文を掲載済)
著者
川野 徳幸 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 星 正治 小池 聖一 平林 今日子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

①セミパラチンスク核実験場近郊住民を対象に、アンケート調査・証言収集調査を実施した。4年間で計597件のアンケートを回収。②朝日新聞・読売新聞実施の被爆実態アンケート調査の結果を援用し、原爆被爆者の「核なき世界」以外の「思い」の一端、「ヒロシマ」というアイデンティティ、被爆体験継承の可能性、を考察した。③被爆証言を用い、経時的に観測されたテキストデータの特徴を、時間を考慮して視覚化する方法を提案した。これは、業績に示すように国際学会において、Best paper Awardを受賞。④オーラルヒストリーを編集し、『チェルノブイリ・旧プリピャチ住民へのインタビュー記録(第二報)』を発行した。
著者
伊藤 俊方 高木 信彦 佐藤 健一 佐藤 寿則
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.363-369, 2007-09-25

能登半島地震の震源地に近い輪島市門前町において,自然ガンマ線探査を実施した.調査期間は,余震が続く4月19,20日である.探査はカーボーンによって行い,測線は国道249号に沿って実施した.探査期間中には震度1以上の有感地震は観測されていないが,M2.0以下の余震は数回発生しており,これらの発生時間におけるガンマ線強度の変化については,特定の傾向が得られなかった.三種類のガンマ線核種を用いた解析によると,ビスマスが急増する異常点がいくつかの地点で見出された.これらは地震断層に伴なう断裂の可能性がある.地震断層として発見された中野屋の県道では,すでに亀裂も修復されガンマ線強度の増加は認められなかった.今後は定点における長期連続測定を行い,余震前後のガンマ線強度変化を把握することによって,この手法が地震防災に活用できる可能性を検証する必要があると考えている.
著者
佐藤 健一 北山 研一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.94-103, 2002-02-01
被引用文献数
13

超大容量のWDM伝送技術の導入が進み,伝送容量の拡大が急速に進んでいる.また,光信号を電気信号に変換することなく光のままでルーチング(クロスコネクト)等の処理を行うフォトニックネットワークの研究開発が各国で進められている.本稿では,IPオーバオプティカルパス,フォトニックMPLS,更には光ブロック転送技術であるフォトニックバーストスイッチングやフォトニックパケットルーチング等の最先端のフォトニックバックボーンネットワーク技術を解説する.
著者
遠藤 英徳 藤村 幹 松本 康史 遠藤 俊毅 佐藤 健一 新妻 邦泰 井上 敬 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.514-521, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
34

頚動脈狭窄症に対する外科治療の是非に関して, これまで数多くのランダム化比較試験 (RCT) が行われてきた. 古くは, 内膜剝離術 (CEA) と内科治療を比較したRCT, その後CEAと頚動脈ステント留置術 (CAS) を比較したRCTが行われ, その結果に基づいて治療ガイドラインが作成された. 症候性高度狭窄に対してはCEAもしくはCASの有効性が示されているが, 内科治療が発展した現在においては, 無症候性病変に対する外科治療の有効性検証が課題である. 今後は, 外科治療の危険因子を抽出し, 治療対象を明確化していく必要があるとともに, 術者教育環境を整え, 治療成績の維持・向上に努める必要がある.
著者
吉留 浩 長友 博文 水田 隆史 佐藤 健一郎 宮前 稔 古野 鶴吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.125, pp.7-23, 2018-06-30 (Released:2020-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

‘はると34’は,1997年に宮崎県総合農業試験場茶業支場において,‘さえみどり’を種子親,‘さきみどり’を花粉親として交配した実生群から選抜された極早生の緑茶用品種である。2007年から2015年まで‘宮崎34号’の系統名で宮崎県を含む全国の14試験場所 (一部の場所は2010年まで) で系統適応性検定試験第12群として地域適応性試験等を実施した。更に,2011年から2013年までは農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業23014に参画した試験場所の一部で特性調査を行った。その結果,‘はると34’は,温暖地の好適条件の茶産地であれば,高価格が期待できる一番茶の極早期に製茶できる品種で,煎茶,釜炒り茶いずれにおいても品質が優れる良質極早生品種として普及に移し得ると判断され,2016年1月12日に種苗法に基づく品種登録出願を行い,2016年12月27日に品種登録出願公表された。‘はると34’の特性の概要は次のとおりである。1) 樹姿は‘中間’,樹勢は‘強’,株張りは‘やぶきた’より大きい。一番茶期の新芽は,萌芽後18日目の早い極みる芽の時期から30日目のやや硬化した時期まで‘さえみどり’より葉色が濃く,鮮やかな緑色である。2) 晩霜による生育遅延を受けなかった場合の一番茶の萌芽期は,‘やぶきた’より7日程度,摘採期は5日程度早い極早生品種であり,特に温暖な茶産地では摘採期が‘やぶきた’より10日程度,‘さえみどり’より5日程度早い。3) 一番茶,二番茶の収量は‘やぶきた,さえみどり’より多い。4) 耐寒性は,裂傷型凍害や赤枯れ,青枯れには‘やぶきた,さえみどり’より強いが,越冬芽の凍害は‘ゆたかみどり,さえみどり’並に弱い。5) 耐病虫性は,輪斑病は‘やや強’,炭疽病,もち病には‘弱’である。クワシロカイガラムシに対する抵抗性は‘極弱’である。6) 製茶品質は,煎茶の一番茶は色沢,水色が特に優れ,‘やぶきた’より優れる。防霜施設が整えられた温暖地での栽培等,条件が良ければ‘さえみどり’より優れる時がある。煎茶の二番茶は色沢,香気,滋味が特に優れ,‘やぶきた,さえみどり’より優れる。釜炒り茶の一番茶では色沢,香気,滋味が特に優れ,‘やぶきた,さえみどり’より優れる。7) 煎茶及び釜炒り茶における一番茶荒茶の化学成分含有率は‘やぶきた’より遊離アミノ酸含有率が高く,タンニン含有率は低い。煎茶の二番茶荒茶の化学成分含有率は‘やぶきた,さえみどり’より遊離アミノ酸含有率が高く,タンニン含有率は低い。8) 一番茶の3.5葉期頃から80%遮光率5日間程度の直接短期被覆処理を行うと,製茶品質では形状,色沢,水色が向上し,化学成分含有率では遊離アミノ酸が増加し,タンニンが減少するため品質が向上する。
著者
松浦 陽子 佐藤 健一 川野 徳幸
出版者
広島大学平和科学研究センター
雑誌
広島平和科学 (ISSN:03863565)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.75-100, 2015-03

The purpose of this paper is to explore the peace concepts in Nagasaki by analyzing "Nagasaki Peace Declarations". First, we discuss the meaning components of a concept of peace in three dimensions: the substance or value dimension; the promoting factor dimension; and locus dimension. The results show: (1) The meaning components of the peace concept in the substance or value dimension come down to three further concepts; "nuclear abolition," "absence of war," and "relief for the atomic bomb survivors." (2) The meaning components in the promoting factor dimension can be divided into seven groups; "atomic bomb experience," "the Japanese government," "the United Nations," "treaty," "nuclear states," "countries" and "individual persons". (3) Each promoting factor dimension corresponds with specified meaning components in the substance or value dimension. For example, Nagasaki Peace Declaration expects "the United Nations" to promote "nuclear abolition" and "absence of war." (4) The concept of peace can be divided into two aspects; unchangeable and changeable aspects. (5) Unchangeable peace concept is the absence of war in the world and in the next generations. (6) The most important changeable components of the peace concepts are "nuclear abolition" and "relief for the Atomic Bomb Survivors" promoted by the Japanese government after 1980s.
著者
中尾 佳行 地村 彰之 佐藤 健一 大野 英志
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

話法の研究は、近代の小説が中心的に行われ、その発達過程の調査は少ない。中世の韻文は殆ど扱われず、特に意味論では、Fludernik (1993, 1996)やMoore (2015)により部分的な検証がある程度で、チョーサーでの体系立てた調査は殆どなされていない。話法の設定の切り替えは、多くの場合その言語の意味を変容させ、話法は本質的に意味論の問題である。本研究では、話法を意味付けるタグを精緻化し、そのタグを多様な社会層の巡礼者が話をし、話法の多様性が見られる『カンタベリー物語』、これまでの研究で作成した電子化された4テクスト、Hg, El写本及び刊本に付加し、話法の意味論コーパスを構築する。
著者
佐藤 健一 冨田 哲治 大谷 敬子 佐藤 裕哉 原 憲行 丸山 博文 川上 秀史 田代 聡 星 正治 大瀧 慈
出版者
長崎大学
雑誌
長崎医学会雑誌 (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.186-190, 2012-09

平成20年度に広島県・市が主体となり黒い雨を含む原爆被爆体験による心身への健康影響や黒い雨の体験状況に関するアンケート調査が行われ,平成22年に「原子爆弾被爆地域の拡大に関する要望書」が厚生労働省に提出された.しかしながら,「黒い雨」そのものを危険因子として死亡危険度を評価した疫学的研究は未だない状況である. 一方で,黒い雨を含む放射性降下物などによる間接被爆あるいは内部被爆の影響を評価する試みとして,被爆時所在地の位置情報を用いた死亡危険度の評価が考えられる.
著者
佐藤 健一
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.220-232, 2013-03-01
参考文献数
63

インターネットのトラヒック量が増加するとともに,ハイパージャイアントコンテンツホルダの出現により,ネットワークのトラヒックの流れが大きく変わりつつある.一方,半導体の性能の進展速度が低下するとともに,消費電力のボトルネックが顕在化しつつある.将来の大容量トラヒックを扱うためには,スループット当りの消費電力が極めて小さい光ルーチング技術の重要性が増加する.しかしながら光の特性を最大限に生かしたネットワークの実現にはノード技術の革新が必要である.今後の光ネットワーク技術の開発方向を議論する.Relentless Internet traffic increase and the recent advent of hyper giant content holders are changing traditional Internet paradigm. Limitation of silicon-based technologies is becoming more and more tangible, which stems from ever increasing LSI power dissipation. Exploiting optical technologies is the way to resolve the problems, however, their introduction remains limited. The barriers mostly exist in the node technologies. The next steps to proceed in removing them are presented with some state-of-the-art technical development.
著者
佐藤 裕哉 佐藤 健一 原 憲行 布施 博之 冨田 哲治 原田 結花 大瀧 慈
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100085, 2016 (Released:2016-04-08)

原爆被爆による放射線の人体へのリスクは,直接被爆のみでは十分に説明できず,間接被爆も考慮に入れる必要性がある(冨田ほか 2012).間接被爆による健康影響に関する研究としては,広島原爆において入市日の差を取り上げたものがあり(大谷ほか 2012),8月6日から8日にかけての入市者は9日以降の入市者よりもガンによる死亡リスクが高いことが示されている.しかしながら,移動経路の長さや通過した場所は考慮されていない.これらの差異によって放射線曝露の状況と健康への影響は異なると考えられるため,地理学的な研究が必要とされる.そこで,佐藤ほか(2014)では地理情報システムを用いて入市被爆者の移動経路の解析を行った. 次の段階として,本研究では移動経路の差異に注目し広島原爆入市被爆者の放射線による影響の評価を行う.具体的には,総移動距離や移動経路のうち爆心地からの最短距離と死因との関係について分析する.<BR>入市被爆者のデータについては1973~74年に広島市・広島県が実施した「被爆者とその家族の調査」(家族調査)を用いた.この調査では入市被爆者へ移動経路などが質問されており,42,355人が回答している.この調査票から入市日と移動経路,入市した目的などについてデータ化した.次に,「米軍撮影空中写真(1945年7月25日撮影)」を用いて被爆当時の道路網のデータを作成した.また,「米軍撮影空中写真(1945年8月11日撮影)」や被爆証言や市史,新聞記事などを用いて通行不可地点(バリア)のデータを作成した.移動経路(経由地)は1945(昭和20)年の町丁目の重心座標とした.家族調査では,移動経路を当時の町名で記入するように求めているからである.これらのデータをもとにArcGIS Network Analystのネットワーク解析で各人の移動経路を描画し,総移動距離,移動経路のうち爆心地からの最短距離,を計算した.なお,最短距離の計算には,ArcGISの空間結合(Spatial Join)ツールを用いた.そして,その計算結果をもとに,広島大学原爆放射線医科学研究所が管理する「広島原爆被爆者データベース(ABS)」と照合し,各人の移動距離と死因について分析した.死因は「悪性新生物」,「その他」,「未記入」で3分類し分析した.白血病は,放射線障害の代表例であるが,1例のみであったため本研究では「その他」に含めた.<BR>被爆時年齢と総移動距離をみると,性差や年齢差はみられない.5歳以下で10km以上の移動をしているものがみられたが,これは親に背負われて移動したものと考えられる.アンケートの欄外にそのように記載しているものもいた. 被爆時年齢と爆心地からの最短距離をみても,性差,年齢差はみられない.半数以上が残留放射線のリスクが高いと考えられる爆心地から500m以内に立ち入っている.佐藤ほか(2014)で指摘したが,曝露状況に関する詳細な情報(爆心地の情報や残留放射線の情報)がなかったからだと推察される.なお,2km以上が1人みられるが,これは各経由地を最短距離で描画したことの弊害であろう. 総移動距離が長く,最短距離が近いほど悪性新生物が死因となっている場合が多い.特に,最短距離に着目してみると,爆心地から500m以内に多い傾向がみられる.ただし,正確な評価のためには,今後,データ数を増やし,入市者の被爆時年齢や追跡期間の長さ(到達年齢)との関係についての多変量解析を適用した定量的評価が必要であろう. 一方で,爆心地付近での滞在時間についても放射線の暴露状況を考える際には重要だが,データがないため分析できていない.また,入力されている地名が大雑把な場合は移動経路が正確にはならず移動距離の算出精度も落ちる,など問題点も多い.今後は,証言などを用いるなどデータを補いながら実相解明を目指して行くことが重要である.
著者
佐藤 健一
出版者
東京理科大学
雑誌
理学専攻科雑誌 (ISSN:02864487)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, 1998-04-26