著者
宮本 享 髙橋 淳 舟木 健史
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.52-58, 2016 (Released:2016-01-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

出血発症もやもや病の自然予後は不良であり, 再出血率は年間約7%と非常に高い. 「頭蓋内外バイパス術が出血発症成人もやもや病の再出血リスクを減少させる」という仮説を検証する目的で, 多施設無作為比較試験であるJapan Adult Moyamoya Trial (JAM Trial) が行われ, 手術群で有意にエンドポイント発生率が低く, 再出血率が1/3に低下することが示された. JAM Trialの結果は出血発症もやもや病に対する直接バイパス術の有効性を支持する一方, この結果は厳格な患者登録基準のもと, 高度の周術期管理下に達成されたものであり, 臨床上は慎重な手術適応の検討が望まれる.
著者
後藤 徹 田崎 淳一 東谷 暢也 今井 逸雄 塩井 哲雄 丸井 晃 坂田 隆造 舟木 健史 堀川 恭平 安部倉 友 宮本 享 木村 剛
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.465-470, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
7

症例は77歳, 女性. 脳梗塞の既往あり, 胸部大動脈瘤 (70mm) を指摘され当院受診した. 手術ハイリスクのためステントグラフト内挿術 (thoracic endovascular aortic repair ; TEVAR) を施行した. 術前評価にてAdamkiewicz動脈がTEVARに伴い閉塞することが明らかであり, スパイナルドレナージ (cerebrospinal fluid drainage ; CSFD) を挿入したうえで, TEVARを施行した. 外腸骨動脈の石灰化および狭窄のため大腿動脈からのTEVAR用シース挿入困難であり, 後腹膜アプローチにて総腸骨動脈からシースを挿入し, TAGステントグラフトを留置した. シース抜去時に血管壁を損傷したため, 術中から輸血を要し, 外科的に修復して閉腹した. 術後, 播種性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation syndrome ; DIC) となり輸血を要したが, 翌日に意識混濁と右共同偏視を認め, CTで右急性硬膜下血腫を認めたため, 緊急開頭血腫除去術を施行した. 開頭術後は頭部再出血および出血による神経学的後遺症は認めず, 輸血治療によりDICは改善した. TEVAR施行後にendoleakは認めず, 術後47日目に転院となった.  TEVARによる重篤な合併症の1つに対麻痺があるが, その予防目的にCSFDは有用な手段である. 急性硬膜下血腫はCSFDの予後にかかわる重大な合併症であるが, TEVARにおけるCSFD後の急性硬膜下血腫の頻度は報告されていない. 今回われわれは, 早期発見と他科との連携により後遺症を残さず救命に成功した症例を経験したので報告する.
著者
舟木 健史 髙橋 淳 宮本 享 JAM Trial Group
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.149-155, 2019 (Released:2019-03-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

出血型もやもや病の自然予後は不良であり, 再出血予防は最大の臨床的課題である. 出血型もやもや病に対する無作為比較試験であるJAM Trialは, 直接バイパスが再出血予防に有効であることを証明した. そのサブグループ解析により示された, 後方出血群の高い再出血率は, 本症特有の脆弱側副路である脳室周囲吻合により説明される. 解剖学的に最も後方に位置する脈絡叢型吻合 (choroidal anastomosis) は, 再出血の強力な予測因子であり, 特に注意すべき脆弱血管である. 一方, 非出血例において脈絡叢型吻合の発達が, 将来の新規出血の要因かどうか, 介入が必要か否かについては不明であり, 次の10年で明らかにすべき疑問と思われる.
著者
宮本 享 永田 泉 唐澤 淳 菊池 晴彦 秋山 義典 野崎 和彦 橋本 信夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-114, 2000-03-31 (Released:2012-10-29)
参考文献数
20
被引用文献数
9 7

We assessed the posttreatment clinical course of 113 patients with moyamoya disease. All of them were treated with superficial temporal artery-middle cerebral artery (STA-MCA) anastomosis with or without encephalo-myo-synangiosis. The mean follow-up duration was 14.4 years. Complete disappearance of the ischemic episodes was obtained in 110 patients (97.3%). Independent daily life activities were possible for 100 patients. Fifteen patients were incapable of social lives because of their mental retardation, although they can take care of themselves in their daily life. All of them suffered from preoperative completed stroke. Therepeutic time lag should be minimized to prevent these preoperative strokes.
著者
川崎 敏生 荒川 芳輝 杉野 寿哉 光原 崇文 舟木 健史 菊池 隆幸 小柳 正臣 吉田 和道 国枝 武治 高橋 淳C 高木 康志 宮本 享
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1005-1010, 2015-11-10

Ⅰ.はじめに もやもや病は,両側内頚動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ,代償的に脳底部に異常血管網が形成される原因不明の疾患である11).一方,川崎病は乳児および幼児において原因不明の系統的血管炎を主体とする疾患であり6),活動期に稀ながら脳梗塞を合併する4,7,12,15,17).川崎病活動期のもやもや病合併の報告はないが,川崎病罹患歴のあるもやもや病の報告がある1,3,8,9,13,14).今回,川崎病の既往があるもやもや病3例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
著者
吉田 和道 宮本 享
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.414-419, 2020 (Released:2021-01-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Summary: Atherosclerotic carotid stenosis (CS) comprises about 20% of all cerebral infarctions in Western countries, and the number of patients with CS is also likely to increase in Japan due to changes in dietary habits and the unprecedented rate of the aging population. Therefore, the significance of appropriate management of CS will also concomitantly increase. The risk of future ischemic events in patients with CS has long been assessed mainly by luminal morphology as angiographically determined stenosis and ulceration. However, recent remarkable advances in vessel wall visualization using ultrasound and magnetic resonance imaging (MRI) combined with a deeper understanding of vascular biology have shown that vessel wall characteristics also have considerable influence on the onset of ischemic events. Assessments of plaque characteristics are now important in the management of CS. Several features of a vulnerable plaque such as intraplaque hemorrhage, large lipid-rich necrotic cores, and ruptured fibrous caps have been precisely demonstrated using MRI. The current status of carotid plaque characterization using MRI will be briefly outlined in this review. Thereafter, the potential clinical implications and future challenges of analyzing plaque using MRI will be discussed.
著者
松本 理器 菊池 隆幸 山尾 幸広 中江 卓郎 小林 勝哉 下竹 昭寛 吉田 和道 國枝 武治 池田 昭夫 宮本 享
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.316-325, 2019 (Released:2019-06-25)
参考文献数
12

適切に選択された2種類以上の抗てんかん薬で単独あるいは併用療法が行われても, 1年以上発作が抑制されないてんかんは薬剤治療抵抗性てんかんと定義される. 全てんかん患者の30~40%を占め, 外科治療適応を検討することが推奨されている. 本稿では, 最近の診断技術の進歩も踏まえて, 部分てんかんのてんかん焦点診断のためにキーとなるてんかん関連領域を概説し, 実際の症例提示から, てんかん焦点の術前診断のプロセスを紹介する. 焦点関連領域の評価にはさまざまな検査法を行うが, 単独で焦点診断に至る 「万能な」 検査はなく, 各検査の特性・限界を理解して, 各種検査間の結果の整合性を検討しながら, 包括的に術前評価を行うことが重要である.
著者
青木 友浩 西村 真樹 片岡 大治 石橋 良太 森下 竜一 野崎 和彦 橋本 信夫 宮本 享
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.538-543, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
20

Cerebral aneurysm (CA) is a main cause of a lethal subarachnoid hemorrhage. Given the high incidence of CA in general population, the mechanisms of CA formation should be unlabelled and novel medical therapy for CA before rupture should be developed. The typical pathological feature of CA walls is the decrease of extracellular matrix (ECM). Decreased ECM results in the weakness of CA walls leading the enlargement and rupture of CA. In this article, we have reviewed the recent findings about the mechanisms of decreased ECM in CA walls mainly revealed by experiments using rodent CA models. ECM is the dynamic structure with the continuous synthesis and degeneration of matrix protein. In CA walls, the induced expressions of proteinases by chronic inflammation in arterial bifurcation are present and actively participated in the pathogenesis of CA. Further the synthesis of collagen is suppressed in CA wall through inflammatory stimulus in arterial walls. These results combined together indicate that both decreased synthesis and increased degeneration of ECM by chronic inflammation in CA walls contributes to CA formation. Further these results demonstrate the therapeutic potential of anti-inflammatory drugs for CA.
著者
宮本 享 山田 圭介 菊田 健一郎 片岡 大治 佐藤 徹 橋本 信夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.412-418, 2003-06-20
被引用文献数
1

脳動脈瘤の治療法はclipping, coil embolization, by pass+parent artery occlusionの3種類に大別されるが,困難な症例ほど単一の治療法のみにならない判断が必要になる.このためには治療チームとして上記3種類の治療技術を高いレベルでもち.柔軟性をもった治療計画を立てることが必要である.手術手技についても基本的な方法を大切にしたうえで.体位やアブローチ,剥離操作などを症例に応じてmodifyすべきであり,単一のやり方に偏りすぎるべきではない.安全に外科治療を行ううえには,術前・術中に次のステップで起こりうるリスクに備えそれを防ぐことと,手術器具について基本的知識をもつことが大切である,