著者
藤目 節夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.235-254, 1997-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

ある特定地域の生活の質 (quality of life, QOL) を評価する場合には,当該地域のみならず隣接する地域のQOLを構成する指標をも考慮する必要があるとの基本的認識から,近接性を考慮したQOLを評価する方法を提案し,これを愛媛県70市町村に適用し,近接性を考慮した場合と考慮しない場合のQOLを求めた.その結果,近接性を考慮した場合のQOLのパターンは,考慮しない場合のそれとはかなり異なること,とくに松山市などの中心都市の周辺地域でのQOLの評価の向上が顕著であること,などが明らかとなった.周辺地域住民が短時間で容易に中心都市を訪問できることを考えると,この結果は,近接性を考慮しない場合に比較し,各地域のQOLをより的確に評価していると考えられ, QOLを評価する対象地域が相互に隣接している場合には,近接性を考慮する必要性があることが示唆された.
著者
藤目 節夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.132-138, 2007 (Released:2010-06-02)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

市町村合併の目的の一つである地方分権の受け皿整備には,合併による自治体の規模拡大のみならず「小さな自治」の確立が不可欠である.小さな自治は,地域住民が自らの地域に目を向け,地域を調べ,知り,考えることから始まるが,この点に関して地理学の総合的なものの見方・考え方,調査方法はきわめて有効である.合併に伴う小さな自治の確立はいまだ緒に就いたばかりであり,今後における地理学者の地域づくりへの積極的な関与が大いに期待される.
著者
藤目 節夫
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.227-241, 1999-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
5

本研究では,交通の地域インパクト研究において,時間空間と費用空間の変化を同時に考察する必要があるとの基本的認識のもとに,多次元尺度構成法を用いて交通変革に伴う中四国地域の両空間の変化を把握した.その結果,中四国地域の時間空間はこの四半世紀に約40%の大幅な縮小を示したが,費用空間はこの間にわずか数%未満の縮小であったことが明らかとなった.この両空間の縮小は,高速交通体系の整備に伴う高速の移動性が,余分な支払い費用を伴わずに達成されたことを意味しており,この四半世紀に中四国地域の交通条件がかなり向上したことが明らかとなった.またINDSCALにより両空間の共通空間の復元を試みたところ,満足のいく結果が得られ,時間・費用空間の変化は共通空間の二つの次元を伸縮することにより表現可能であることが明らかとなった.さらに以上の結果から,ある交通変革が地域の時間・費用空間に及ぼす影響には多大な差異があり,交通変革に伴う交通条件変化の把握には両空間を同時に取り扱う必要性が示唆された.