著者
松山 菜々 松田 壮一郎 蜂須 拓
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.283-290, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
25

This paper presents an experiment to demonstrate that social stimulus (changes in facial expressions) can generate haptic sensations in a human-agent interactions setting. We designed and developed a system in which an human-like agent on the display behaved as if it pulled the mouse cursor against a human participant control. The results of the experiment showed that participants felt significantly larger force when the agent exhibited the negative face during the pulling motion than that when the agents kept the positive face. Besides, the force sensations quantified with control-display ratio negatively correlated with some of sub-scales of the Autism-spectrum Quotient score. This indicates that the social stimulus is as important as physical stimulus when designers and researchers design human-agent haptic interactions.
著者
中井 優理子 岡崎 龍太 蜂須拓 佐藤 未知 梶本 裕之
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.50-54, 2014-09-12

ぬいぐるみに人とのインタラクション機能を付与する従来の提案の多くは,ぬいぐるみに音声や手足および眼球の動き,呼吸や心拍に伴う動き等を付与するものであったが,不完全に実現されたインタラクションはかえってぬいぐるみに対する没入感を損なう危険があった.今回我々はぬいぐるみに生き物感を付与する最小限の構成として,目の表面の涙のゆらぎを表現する手法を提案する.涙のゆらぎは鏡面反射によって拡大して知覚されるため,微小な動きで人に知覚させることが出来,また感情表現を行える可能性がある.今回は水中の気泡と振動子を用いるだけの簡易な手法で目のゆらぎを実装し,その効果を検証した.
著者
横山 牧 蜂須 拓 佐藤 未知 福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.483, pp.93-98, 2013-03-13

タッチパネルを搭載した携帯端末が近年急激に普及しているが,このタッチパネルは触覚フィードバックが欠けているためにテキスト入力が難しいという問題を抱えている.この問題に対して,本研究ではキーの境界線に段差がついたシートと視触覚クロスモーダル現象を用いることで,タッチパネルに触覚フィードバックを簡便に付加する手法を提案する.本稿では提案手法により付加される触覚フィードバックがテキスト入力パフォーマンスに与える効果を検証した実験,そして視触覚クロスモーダル現象によってヒトの知覚量がどの程度変化するかを検証した実験について述べる.
著者
蜂須 拓 Taku Hachisu
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2015-03-25

物体に触れた際の体験を再現する触覚インタラクションの設計・開発はバーチャルリアリティの体験の質を向上する手段として注目されている.一方で,視聴覚と比較して触覚研究の歴史は浅く,質の高い触覚インタラクションの設計・開発は発展途上であるといえる.触覚インタラクションの設計・開発のアプローチに現象を忠実に再現する写実的なアプローチがある.しかし,写実的な触覚インタラクションは現象の再現性は高いものの,現実に起こりうる体験しか表現できない.また,視聴覚と比較して触覚から得られる情報は不明瞭であり,感覚統合において劣位に扱われてしまう.以上から,現象の再現性が必ずしも必要なく,幅広い表現や体験の明瞭さが重要であるエンタテインメント等での触覚インタラクションの応用を考えた際,写実的なアプローチとは別のアプローチが必要であるといえる.これに対し,著者は漫画やアニメーションで用いられる誇張表現の概念を触覚インタラクションの設計・開発に適用することを考えた.漫画やアニメーションでは現実を基に大げさに描くという誇張表現を用いて,視聴者に非現実的ではあるがもっともらしいという印象(本論文では実感性と定義)を与える.本論文は誇張表現の概念を触覚インタラクションの設計・開発に適用することで,再現性は高くないが実感性に優れた触覚インタラクションを設計・開発することを目的とする.これにより,触覚インタラクションの表現の幅の拡張,および分かりやすく実感性のあるも体験の実現を期待する.また,設計・開発した触覚インタラクションを総括することで誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性を向上させるための要件を明らかにする.本論文では,まず誇張表現の論理構造を見いだし,3つの論理モデルを設定する.次に,3つのモデルを基に8つの触覚インタラクションの設計・開発に関する研究について述べる.各研究では,個別の研究背景および目的について述べ,触覚インタラクションを実装し,目的に則した評価によって個々の有効性を検証する.そして,設計・開発した触覚インタラクションおよびモデルを総括し,実感性を向上させるための要件を明らかにする.本論文は全6章から構成され,内容の要旨は以下のとおりである.第1章では,まず触覚インタラクションが注目されるようになった背景について述べ,写実的アプローチの限界について指摘する.次に,漫画やアニメーションに見られる誇張表現について述べ,本論文の目的として「誇張表現に基づいた触覚インタラクションの設計・開発」および「誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性を向上するための要件を明らかにすること」を設定する.そして,誇張表現の論理的な分類を行い,触覚インタラクションの設計・開発の指針とするための3つのモデル(代替モデル,変調モデル,重畳モデル)を見いだす.代替モデルでは,感覚Aを別の感覚Bに置換して提示する.変調モデルでは,感覚Aに操作kを加えて変調し提示する.重畳モデルでは,感覚Aに別の感覚Bを提示して重畳する.第2章では,本論文で扱う触覚について定義する.触覚に関する基礎的な生理学的,心理学的知見に関して述べ,次章以降で述べる触覚インタラクションの設計・開発において必要な知見を共有する.第3章では,代替モデルに基づいた2つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は肘部の屈伸運動に伴ってロータリスイッチを回した時に生じる周期的な触覚フィードバック(カチカチ感)を提示するカチカチ感提示装置の設計・開発である.本装置によって視覚的運動知覚が困難な状況において触覚的運動知覚を拡張することでユーザの身体姿勢の制御の向上を試みる.2つ目は視覚から材質感を提示する手法VisualVibrationの設計・開発である.本手法では,現実では聴覚・触覚で感じられる高周波数振動を視覚で感じられるように変調して疑似触覚提示を行う.本手法のケーススタディとして物体を叩いた時に生じる振動を取り上げ,視覚的な振動提示による材質感提示を試みる.第4章では,変調モデルに基づいた3つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は叩き動作に対して振動提示することでタッチスクリーンが異なる材質になったかのような体験を提供するHaCHIStick&HACHIStackの設計・開発である.本システムは時間応答性に優れており,叩いた瞬間に振動提示が可能である.そのため,ユーザにとっては叩いた対象の材質が変わったように感じられる.2つ目は歯磨き音を変調して提示することで歯磨きの快感および達成感を増強する拡張歯ブラシの設計・開発である.羊皮紙錯覚(手を擦った際に生じる音の高周波成分を強調すると手のひらが乾いた紙のように感じられる)を利用して汚れている,美化されているといった歯の状態を疑似的に再現し,歯磨きの体験を拡張する.3つ目は徳利を傾けた際に内容液の流出によるトクトクという振動(トクトク感)提示の設計・開発である.実際に徳利から液体が流出する際に生じる振動を計測,モデリングし,実際に液体を注ぐことなくトクトク感を再現する.実験的に構築した振動モデルをもとに,粘性感および残量感を再現する.第5章では,重畳モデルに基づいた3つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は前章で述べたトクトク感を実際のペットボトルで液体を注ぐ動作に重畳するトクトク感重畳の設計・開発である.トクトク感重畳による注がれる液体の量の錯誤効果を示し,飲食体験の触覚的演出の可能性を示す.2つ目は関節部の屈伸運動に伴って振動を提示することで関節が異なる材質になったかのような体験を提供するJointonationの設計・開発である.本システムによって,サイエンスフィクションに登場するゴム人間やロボットに視聴覚に加え触覚的にも変身したかのような体験を提供する.3つ目はタッチスクリーン上でのユーザの動作に対して引力提示を行う装置VacuumTouchの設計・開発である.本装置は引力提示によってタッチスクリーン上に摩擦感を重畳する.これにより例えばタッチスクリーン上に擬似的な引っかかりをつくりだし,ユーザの操作の補助を行う.第6章では,3つの誇張表現の論理モデルおよび8つの触覚インタラクションに関する研究を総括する.各々の研究を再評価し,課題を整理することで誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性向上のための要件を明らかにする.そして,本論文の成果を基に誇張表現に基づいた触覚インタラクションの設計・開発に関する研究の今後の展望について論じる.