著者
西川 元也 吉岡 志剛 長岡 誠 草森 浩輔
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-50, 2021-01-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
35

核酸医薬品の実用化が急速に進み、ギャップマー型アンチセンス核酸(ASO)、スプライシング制御型ASO、ナノ粒子化あるいはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)結合siRNA、CpGオリゴが近年上市された。これらの核酸医薬品は、水溶性高分子という共通点のほかは、標的細胞や標的分子、投与経路、体内動態などの点で異なる。標的部位に到達した核酸医薬品のみが薬効を発揮するため、核酸医薬品の体内動態制御は最重要課題の1つである。タンパク結合は、核酸医薬品の体内動態や毒性発現に重要であるが、必ずしも最適化されていない。標的指向化にはリガンド修飾が有用であり、GalNAc修飾が肝細胞へのsiRNAの送達に実用化されている。本稿では、核酸医薬品開発の現状と核酸医薬品の適応拡大に向けたDDSの可能性について論じる。
著者
高橋 有己 西川 元也 高倉 喜信
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.116-124, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
27

細胞から分泌される膜小胞であるエクソソームは、核酸・タンパク質・脂質などの内因性キャリアであることから、エクソソームを用いたDDSの開発が注目されている。エクソソームを用いたDDSの開発にはエクソソーム体内動態の制御法を開発することが必須であるが、それにはまずエクソソームの体内動態に関する情報の蓄積が必要不可欠である。しかしながら、その情報はいまだ乏しく、体系的な理解には至っていないのが現状である。本稿では、これまでに報告されたエクソソームの体内動態の特徴を整理するとともに、エクソソームの体内動態解析を目的とした我々の取り組みを紹介する。
著者
二神 岳 草森 浩輔 西川 元也
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.55-61, 2021 (Released:2021-02-04)
参考文献数
45

エクソソームは,脂質二重膜で覆われたナノサイズの細胞外小胞(EVs)であり,その中には核酸やタンパク質,脂質など,エクソソームを産生する細胞固有の物質が含まれる。エクソソームを含むEVsの様々な生理的状態や疾患との関連性の深さから,幅広い疾患において診断あるいは治療用のツールとしてのEVsの応用が期待されている。しかしながら,EVsは産生される細胞の起源やそのサブタイプによって体内動態が異なることが報告されていることから,個々のEVsの体内動態特性を理解することは極めて重要である。そこで,EVsの体内動態の解明や治療効果向上に向けた体内動態制御,さらには低分子化合物やタンパク質,核酸などの様々な薬物のデリバリーキャリアとしての適用拡大を目的とした研究が盛んに行われている。本稿では,エクソソームを含む直径100nm程度のsmall EVsに焦点を当て,標識方法を含むEVsの体内動態と,その制御方法および制御技術に関するこれまでの研究報告を紹介する。
著者
橋田 充 山下 富義 西川 元也 川上 茂
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

癌細胞の動態、存在状態の多様性および治療薬の癌病巣への到達性の制御の困難さのため、普遍的に適用可能な治療法は未だ確立されていない。本研究では、まず、癌増殖・転移過程の非侵襲的解析に必要不可欠な基盤技術であるバイオイメージングによる可視化および定量法を確立した。さらに、DDSのコンセプトに基づき、有効な癌治療薬および遺伝子医薬品の送達システムの開発および治療への応用を行った。
著者
西川 元也 高倉 喜信
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

細胞を利用した治療法の効果増強を目的に、体外から投与した細胞の体内動態を精密に制御することのできる新規方法の開発を試みた。前年度までに確立した細胞の体内動態評価システムを用い、マウス線維芽細胞株NIH3T3の体内動態に及ぼす各種処置の影響について定量的に評価した。まず、投与経路・部位の影響について評価するために、細胞懸濁液を種々の臓器に注入し、その後の体内動態を経時的に追跡した。その結果、細胞の体内動態ならびに生存期間は投与部位に大きく依存することが示され、中でも脂肪組織や骨格筋に投与した場合に長期間生存することが明らかとなった。一方、マウスの全層皮膚欠損に対する細胞治療を目的とした検討では、NIH3T3細胞を損傷皮膚表面に滴下、あるいは近傍に皮内注射した場合には非常に速やかに消失した。また、GFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞を用いて同様の検討を行ったところ、骨髄細胞でも同様の傾向が認められた。このとき、静脈内投与でも損傷部位への集積が観察され、損傷が速やかに修復する傾向も認められた。組織内に注射により投与した場合には、投与された細胞近傍では血流が乏しく、酸素供給が不十分である可能性がある。低酸素条件下においては、低酸素誘導性因子HIF-1の安定化が生じたり、活性酸素生成が亢進することが報告されている。そこで、酸化ストレスの抑制を目的に、過酸化水素を消去するカタラーゼで細胞を処理したところ、移植後の残存細胞数が有意に増加した。従って、移植細胞の急激な消失を抑制するには、カタラーゼ誘導体などにより酸化ストレスを抑制することが有望であることが示された。