著者
西川 光一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.355-362, 1987-12-15 (Released:2017-10-31)
被引用文献数
1

1986年11月1日深夜,スイス,バーゼル市の近郊のサンド社(S撒doz AG)で発生した倉庫火災は,死傷者はなかったものの,大量の消火水とともに流出した農薬等の化学薬品がライン(R騰ne)川に流入し,深刻な環境汚染をもたらし,流域の3箇国に影響を与え,国際的な問題となった, サンド社では,社会の批判と政府当局の改善勧告に応じ,経営の根幹にもかかわる大規模な安全対策を行い,多額の賠償請求にも対応しようとしている,欧州の化学工業も,環境対策への取組み姿勢の甘さが批判され,多額の公害防止投資を行うなど,深刻な影響を受けている, 事故の原因は,ベルリン・ブルーのシュリンク包装の際の過熱から,内容物のシュガ~バーニング(くすぶり)が起こったものを,規定通りの放置冷却を行わずにただちに倉庫へ搬入したことによる,蓄熱・自然発火であると発表された。過熱の原因は不明であるが,放冷という安全対策が守られなかったことから,管理者か作業者が作業規定をきちんと守っていれば起こり得なかった事故であったといえる.この事故の状況を述べ,教訓として,倉庫の安全対策と火災時の緊急対応等について考察する.
著者
平山 三智子 西川 光一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.943-947, 2012 (Released:2013-02-12)
参考文献数
10

頚椎後方手術後に,脳神経麻痺による嚥下および構音障害を生じた3症例を経験した.3症例とも術後に舌偏位が認められ,末梢性の舌下神経麻痺と診断された.1症例のみ迷走神経麻痺によるカーテン徴候を合併していた.嚥下および構音障害は術後2週間から3ヵ月間に改善し,以降も良好に経過している.脳神経麻痺の原因には,舌下,迷走神経を栄養する上行咽頭動脈の挿管チューブによる血流障害,術操作による直接障害,頚部の牽引に伴う神経の伸展による障害が疑われた.頚椎後方手術後の脳神経麻痺の発生はまれであるが,術後の嚥下障害や構音障害の原因となることを医療従事者が十分認識し,誤嚥の予防に取り組むことが必要である.
著者
西川 光一
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

麻酔薬のなかには"逆行性健忘"と呼ばれる現象を起こすものがある。麻酔薬による記憶障害や健忘が、シナプスレベルでの可塑的変化とどう関連するのだろうか?今回私達は、ラット海馬スライス標本CA1領域で興奮性シナプスの長期増強現象(Long-term potentiation : LTP)を観察し、それに対するセボフルランの影響を調べることを研究目的とした。【方法】深麻酔下のSDラット(60-80g)から脳を取り出し、500microのスライス標本を作製した。海馬CA1領域でSchaffer-collateral-commissural (SCC) fibersに0.1Hz程度のテスト刺激を加え、記録が安定したところで条件刺激(100Hzの高頻度テタヌス刺激)を用いてLTPを誘導し記録した。セボフルランは酸素化したACSFとともに条件刺激の約30分前から投与した。臨床使用濃度と低濃度のセボフルランを用いてその影響を観察した。【結果】臨床使用濃度セボフルランはLTPの誘導、維持ともに抑制した。低濃度セボフルランは部分的にLTPの誘導を抑制した。そこで、GABA受容体拮抗薬であるBicuculline、 NMDA受容体拮抗薬であるMK-801存在下で同様の実験を行った。10μM Bicuculline存在下で低濃度セボフルランによるLTPの抑制は起きなかった。臨床使用濃度セボフルランではLTPは部分的に誘導されたが、維持は抑制されたままだった。1μM MK-801存在下で、LTPは誘導されセボフルランによる影響に違いは見られなかった。【結論】セボフルランはLTPを抑制する。低濃度の場合はGABA作動性ニューロン活性化が関与し、臨床使用濃度になると興奮性ニューロン抑制作用も加わってLTPを抑制したものと思われる。