著者
皆川 倫範 加藤 晴朗 杵渕 芳明 山口 建二 古畑 誠之 矢ヶ崎 宏紀 石塚 修 井川 靖彦 西沢 理
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.646-649, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
9

17歳男性.空手の練習中に右側腹部を蹴られたのち肉眼的血尿を認めた.CTで右腎被膜下出血を認めた.出血は軽微であり, 経過観察とした.1カ月後のCTで, 右腎周囲に腎実質を圧迫する嚢胞性病変を認めた.このころから血圧が徐々に上昇し, 160/80mmHgとなった.超音波ガイド下経皮的嚢胞穿刺を施行し, 茶褐色透明な液体を吸引した.内容液はリンパ液で, 穿刺後に血圧は低下したが, 嚢胞内容は再貯留し, 血圧が再上昇した.以上の経過から, 外傷性腎被膜下リンパ嚢腫に伴うPage kidneyと診断した.腹腔鏡下リンパ嚢腫開窓術を施行した.術後, 血圧は低下した.しかし, 手術1カ月後のCTで液体の再貯留を認め, 血圧の上昇を認めた.再手術を薦めたが, 本人の希望がなく, 現在降圧剤内服で保存的に加療中である.
著者
原田 忠 西沢 理
出版者
秋田大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

形状記憶合金ニテノールを使用した新しい人工尿道括約筋およびpenileprosthesisを試作した。人工尿道括約筋の構造は、馬蹄状にした一方向記憶ワイヤーあるいは二方向板バネの周囲に加温用ニクロム線を巻きつけ、これをシリコンゴムで包埋したものである。またpenile prosthesisは一方向記憶合金を束ね、その周囲に加温用ニクロム線を巻きシリコンゴムでシリンダ一状に包埋したものである。これらのprosthesisは直流電源あるいはバッテリーによって加温されると、あらかじめ記憶させた形状に変態動作し、目的を達するよう工夫されたものである。加温電力,変態時間,応用,表面温度を基礎的に検討したが、いずれも問題なく、またpenile prosthesisは適度な擬弾性が認められ臨床的使用に耐え得るものと考えられた。また犬を用いた人工尿道括約筋埋め込み実験からは、排尿,蓄尿という二つの作用が本デバイスによってコントロールされることが確認された。
著者
西沢 理 田辺 智明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

冷えストレスによる下部尿路症状(LUTS)はQOLを低下させることで悩んでいる人が多いが検討は十分とは言えない。基礎的検討では膀胱の尿路上皮に注目し, 前立腺肥大症患者において,自律神経系受容体mRNAの発現を検討したところ,アドレナリンα1D, β3受容体,セロトニン2b, 3a, 7受容体の変化が起こることが示された。臨床的検討では健康講座の受講生を対象として冷え症と冷え性でない2群に区分し,LUTSに対する体操の効果を検討したところ,冷え症群では,体操が蓄尿症状を改善させることが認められた。また,大建中湯が便秘症とLUTSを有する患者に対して冷え症とLUTSに有用なことが示された。
著者
西沢 理 菅谷 公男 能登 宏光
出版者
秋田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

脊髄損傷群での膀胱重量と体重の変動についてみると,24頭の対象として,生後10週に胸腰椎移行部での脊髄損傷を作成し,その後1週毎に,4週間の生後14週までの11,12,13,14週で,各々,5,6,9,4頭において測定した膀胱重量と体重は,それぞれ153.7±51.7,241.2±112.7,176.6±136.6,544.0±213.3mgと133.3±7.5,140.0±8.2,158.9±16.6,125.0±16.6gであり,膀胱重量の増加は著明であった。コントロ-ル群での膀胱重量と体重の変動についてみると,50頭を対象として,10週から,1週毎に,4週間の14週まで各10頭において測定した膀胱重量と体重はそれぞれ,60.6±5.6,43.9±6.2,42.2±6.0,41.5±6.5,40.5±5.9mgと160.0±4.5,162.0±7.5,166.0±8.0,161.0±9.4,171.0±7.0gであり,膀胱重量には変化がなかった。膀胱NGFの変動についてみると,コントロ-ル群では生後11,12,13,14週で,それぞれ,326.9,478.5,85.5,65.7ng/g組織重量であり,脊髄損傷群では脊髄損傷作成後1,2,3,4週で,それぞれ,292.5,392.4,280.3,708.2ng/g組織重量であった。脊損後には脊髄ショックに続発した尿閉となるが,排尿が自立する1週間後以降から膀胱からのNGFが増加することを予期したが,コントロ-ル群と比較して,脊損群のNGF値に変化が生じたと断定することはできなかった。膀胱重量は尿道閉塞ラットと同様に脊損後に増加したが,膀胱NGFには変化がないことから,脊損と尿道閉塞とでは異なる機序で,膀胱重量の増加が起こるものと思われた。脊損時には,損傷部位のレベルにより,仙髄排尿反射中枢の活動が亢進する場合と低下する場合があり,胸腰椎移行部での脊髄横断では仙髄排尿中枢自体が損傷を受け,その活動性が低下していた可能性も高い。