- 著者
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原田 忠
- 出版者
- 社団法人 日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.12, pp.2173-2179, 1987-12-20 (Released:2010-07-23)
- 参考文献数
- 10
生体にマイクロ波を照射し, その熱作用を利用しようとする場合, 生体内で温度分布がどのようになっているかを知ることは重要である. アプリケータからのマイクロ波照射パターンを基礎的に検討する場合には, ファントームを用いた実験が行われる。また温度分布を測定する方法にもいくつかあるが, 今回は泌尿器科用アプリケータ3種を用いて, ファントームおよび温度測定方法について検討を加えた. 用いたファントームは, 牛肝, 食肉ハム, 0.25. 50および75%の生理食塩水を含有したガーゼ, および卵白で, 温度分布の測定は赤外線サーモグラフィー, 液晶プラスチック板, および卵白凝固法を施行した. アプリケータをファントーム内に埋没するように設置し, 2,450MHzのマイクロ波を100w, 30~120sec照射し, アプリケータ設置部のファントーム断面の温度分布測定を行い比較し, 以下の結果を得た. (1) 牛肝と食肉ハムの温度分布はほぼ同じ大きさであった. (2) ガーゼでは生食の含有率が高くなると温度分布も大きくなっていったが, 50~75%の生食含有ガーゼがほぼ牛肝と同じ大きさの温度分布であった. (3) 赤外線サーモグラフィー法による温度測定は, 非接触性に正確に測定できるが, 機器が大がかりで簡便性に欠けていた. (4) 液晶プラスチック板は手軽に正確に測定できた。(5) 卵白凝固法は三次元で照射パターンをとらえることが可能であったが, 発生する気泡によって変形したり, 測定温度に幅があることが欠点であった.以上の結果から, アプリケータを基礎的に検討する場合には, 食肉ハムを用い赤外線サーモグラフィー法で測定する方法が優れており, 臨床的応用直前にアプリケータの照射パターンを確認する場合などには生理食塩水50~75%を含ませたガーゼをファントームとして液晶プラスチック板で温度分布を調べる方法が適していると考えられた.