- 著者
-
豊岡 示朗
吉川 潔
足立 哲司
- 出版者
- 日本体力医学会
- 雑誌
- 体力科学 (ISSN:0039906X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.4, pp.419-430, 1995-08-01
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
-
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朝の起床後におけるジョギングの問題点, その実施時間帯による代謝特性を明らかにすることを目的として, 男子長距離選手5名 (19~26歳) とジョガー (32~50歳) を対象に, 絶食, スナック, 夕方の3条件を設定して60分間のトレッドミルによるジョギングを課し, 血中基質と代謝反応を測定し, 次のような結果を得た.<BR>1) 絶食条件のジョギング前後の血液グルコースは, ジョガー群で100.8mg/d<I>l</I>: 93.0mg/d<I>l</I>, ランナー群で101.0mg/d<I>l</I>: 105.6mg/d<I>l</I>となり, ジョガー群の低下が大きい傾向が見られた.しかしながら, 両群間に有意差は認められなかった.また, 夕食を摂らなかった被験者1名 (48歳) が, 走行後65mg/d<I>l</I>となり, 低血糖レベルに近づいた.<BR>2) 同条件での遊離脂肪酸は, ジョガー群の安静で, 0.37mmol/<I>l</I>, 運動後, 0.57mmol/<I>l</I>, ランナー群の場合, 運動前0.25mmol/<I>l</I>, 運動後0.37mmol/<I>l</I>となり, いづれも, 約50%の上昇がみられたものの, 安静値の2倍に達した被験者は1名であった.また, その最大値は, たかだか, 0.86mmol//<I>l</I>であった.<BR>3) 上述の結果から, 起床後の空腹状況において, 50~60%VO<SUB>2</SUB>maxで60分間のジョギングを実施した場合, 脱力感, 不快感や低血糖症状に陥る例は稀であり, 遊離脂肪酸が急上昇 (安静の3~4倍) することもほとんどないことが示唆された.しかしながら, 中高年ジョガーの場合, β-ヒドロキシ酪酸が, 運動前に比べ1.3~2.6倍も増加する例 (6名中5名) が見られた.<BR>4) 血中基質の動態からみた夕方ジョギングの特徴は, 朝の2条件 (絶食とスナック) と比べ, 運動前のインスリンレベルが2.7倍高く, 運動中のアドレナリン分泌の亢進, 血液グルコース取り込みの増加, 脂肪分解能の抑制であった.一方, 朝の2条件の動態は, ほぼ同様となり, インスリン, アドレナリン, ノルアドレナリン, 血液グルコースの変動が小さく, グリセロールの増加, FFA代謝回転レベルの高いことが認められた.<BR>5) 60分間のジョギングによる全消費エネルギーは, スナック条件が他の条件より4~5%高く (P<0.01) 654.4kcal, 以下, 夕方条件・627.5kcal, 絶食条件・619.2kcalとなった.この差異の要因は, スナック摂取からくる酸素摂取量の増加に依る.<BR>6) 呼吸商 (RQ) から60分間のジョギングによる炭水化物と脂肪の酸化比率をみると, 朝の2条件 (絶食とスナック) の場合, 約51~50%: 49~50%とほぼ同様になったのに比べ, 夕方条件の場合は, 67.4%: 32.6%となり, 朝のジョギングの方が約16~17%脂肪の酸化が多い (P<0.01) ことが認められた.<BR>7) 以上の結果から, 朝の2条件 (絶食とスナック) によるジョギングは, 夕方実施する場合に比べて脂質代謝が高いと示唆された.