著者
足立 博子 足立 哲司 豊岡 示朗
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.385-391, 2002-08-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

ウォーキングスピードの違いとエネルギー代謝の関連について検討した.対象者は, 健康な中年女性7名 (35~50歳) であり, 3種類のスピード (経済: 1km当りのエネルギー消費量が最小となるスピード, 快適: 被験者が気持ちよいと答えたスピード, 速歩: 被験者が無理のない範囲で最も速く歩けると答えたスピード) での60分間のトレッドミルウォーキングを課して代謝反応と血中脂質を測定し, 次のような結果を得た.<BR>1) 60分間のトレッドミルウォーキングを実施したスピードとそれぞれのスピードにおける%VO<SUB>2</SUB>maxと心拍数は, 経済が76m/min (41%VO<SUB>2</SUB>max, 96beats/min) , 快適で90m/min (49%VO<SUB>2</SUB>max, 110beats/min) , 速歩は106m/min (67%VO<SUB>2</SUB>max, 139beats/min) であった.<BR>2) 5分ごとに見た脂肪によるエネルギー消費量は, 3スピードとも経時的に増加したが, 特に速歩スピードでは, 運動開始後の10分目で1.1kcal/minであった脂肪によるエネルギー消費量が運動終了時には2.5kcal/minと2倍以上に達した.<BR>3) 60分間ウォーキングでの総エネルギー消費量はスピードに伴い増加した.脂肪によるエネルギー消費量は, 速歩が109kcalで最も高い値を示したが, 快適: 99kcal, 経済: 92kcalとの間に有意差は認められなかった.
著者
豊岡 示朗 吉川 潔 足立 哲司
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-430, 1995-08-01
参考文献数
27
被引用文献数
3 1

朝の起床後におけるジョギングの問題点, その実施時間帯による代謝特性を明らかにすることを目的として, 男子長距離選手5名 (19~26歳) とジョガー (32~50歳) を対象に, 絶食, スナック, 夕方の3条件を設定して60分間のトレッドミルによるジョギングを課し, 血中基質と代謝反応を測定し, 次のような結果を得た.<BR>1) 絶食条件のジョギング前後の血液グルコースは, ジョガー群で100.8mg/d<I>l</I>: 93.0mg/d<I>l</I>, ランナー群で101.0mg/d<I>l</I>: 105.6mg/d<I>l</I>となり, ジョガー群の低下が大きい傾向が見られた.しかしながら, 両群間に有意差は認められなかった.また, 夕食を摂らなかった被験者1名 (48歳) が, 走行後65mg/d<I>l</I>となり, 低血糖レベルに近づいた.<BR>2) 同条件での遊離脂肪酸は, ジョガー群の安静で, 0.37mmol/<I>l</I>, 運動後, 0.57mmol/<I>l</I>, ランナー群の場合, 運動前0.25mmol/<I>l</I>, 運動後0.37mmol/<I>l</I>となり, いづれも, 約50%の上昇がみられたものの, 安静値の2倍に達した被験者は1名であった.また, その最大値は, たかだか, 0.86mmol//<I>l</I>であった.<BR>3) 上述の結果から, 起床後の空腹状況において, 50~60%VO<SUB>2</SUB>maxで60分間のジョギングを実施した場合, 脱力感, 不快感や低血糖症状に陥る例は稀であり, 遊離脂肪酸が急上昇 (安静の3~4倍) することもほとんどないことが示唆された.しかしながら, 中高年ジョガーの場合, β-ヒドロキシ酪酸が, 運動前に比べ1.3~2.6倍も増加する例 (6名中5名) が見られた.<BR>4) 血中基質の動態からみた夕方ジョギングの特徴は, 朝の2条件 (絶食とスナック) と比べ, 運動前のインスリンレベルが2.7倍高く, 運動中のアドレナリン分泌の亢進, 血液グルコース取り込みの増加, 脂肪分解能の抑制であった.一方, 朝の2条件の動態は, ほぼ同様となり, インスリン, アドレナリン, ノルアドレナリン, 血液グルコースの変動が小さく, グリセロールの増加, FFA代謝回転レベルの高いことが認められた.<BR>5) 60分間のジョギングによる全消費エネルギーは, スナック条件が他の条件より4~5%高く (P<0.01) 654.4kcal, 以下, 夕方条件・627.5kcal, 絶食条件・619.2kcalとなった.この差異の要因は, スナック摂取からくる酸素摂取量の増加に依る.<BR>6) 呼吸商 (RQ) から60分間のジョギングによる炭水化物と脂肪の酸化比率をみると, 朝の2条件 (絶食とスナック) の場合, 約51~50%: 49~50%とほぼ同様になったのに比べ, 夕方条件の場合は, 67.4%: 32.6%となり, 朝のジョギングの方が約16~17%脂肪の酸化が多い (P<0.01) ことが認められた.<BR>7) 以上の結果から, 朝の2条件 (絶食とスナック) によるジョギングは, 夕方実施する場合に比べて脂質代謝が高いと示唆された.
著者
吉田 昌平 守田 武志 舌 正史 沼倉 たまき 小出 裕美子 中尾 聡志 足立 哲司 原 邦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.474, 2003

【目的】今回我々は体重の1%(1%BW)、2.5%(2.5%BW)、5%(5%BW)、7.5%(7.5%BW)、10%(10%BW)の5種類の負荷を用いて全力ペダリングを実施し、それぞれの負荷によって得られるパワー発揮特性をピークパワー(PP)、体重あたりのPP(PP/BW)、ピーク回転数(P-rpm)と最大無酸素パワー(MAnP)から評価し、実際の30mスプリントパフォーマンスとの関係について検討した。【方法】某大学サッカー部、男子14名(年齢19歳、身長172cm、体重68kg)を対象とし、自転車エルゴメーター(パワーマックスVII)を用いて、1、2.5、5、7.5、10%BWの5種類の負荷で各1回10秒間の全力ペダリングを実施した。それぞれの負荷で得られたPP、PP/BW、 P-rpmを二次回帰し、負荷-PP 、PP/BW、 P-rpm曲線を算出した。30mスプリントテストは3回の試技を手動により計測しその平均時間を求めた。【結果】1)PPは負荷との間にY=-3.689+ 230.247*X-13.146*X^2(r=.99)の関係が認められた。PP/BWは負荷との間にY=-.267 +3.612*X-229*X^2(r=.99)の関係が認められた。rpmは負荷との間にY=227.96- 10.405*X-.311*X^2(r=.95)の関係が認められた。負荷-PP 曲線から算出したMAnPは988wattで、体重あたりのMAnP(MAnP/BW)は14.4 watt/BWであった。MAnPが得られた時のrpm(MAnP-rpm)は120 rpmで、負荷は12.4%BWであった。2)3回試技における30mスプリントテストの平均時間は4.15±0.13秒であった。30mスプリントパフォーマンスと各負荷のPP、PP/BW、P-rpmの相関係数は1%BWでそれぞれr=-.21、r=-.41、r=-.59(ns、ns、p=.026)、2.5%BWでそれぞれr=-.21、r=-.48、r=-.61(ns、ns、 p=.020)、5%BWでそれぞれr=-.28、r=-.68、r=-.70(ns、p =.010、p=.006)、7.5%BWでそれぞれr=-.29、r=-.55、r=-.57(ns、p =.041、p=.034)、10%BWでそれぞれr=-.31、r=-.42、r=-.42(ns)、MAnP 、MAnP/BW、MAnP-rpmでそれぞれr=_-_.21、r=-.22、r=-.42(ns)であった。多変量解析で30mスプリントパフォーマンスと有意に相関したのは5%BW でのP-rpmのみであった(p<.01)。【考察】PPおよびPP/BWは、負荷-PP、PP/BW曲線からMAnPが得られた負荷12.4%BWを上限として負荷が大きくなればなる程高い値を示した。P-rpmは、負荷-P-rpm曲線から負荷が小さくなればなる程高い値を示した。このようなパワー発揮特性とスプリントパフォーマンスとの関係について検討すると、パワーは負荷が大きい程高い値が得られるが、スプリントパフォーマンスとの関係はむしろ弱くなった。逆に負荷を小さくして高回転を得た方がスプリントパフォーマンスとの関係は強くなった。すなわち、スプリントパフォーマンスは踏力よりもむしろ回転速度に依存したパワー発揮特性と関係が強く、ペダル回転数が実際の走動作であるピッチ数と関係していると推察した。
著者
豊岡 示朗 吉川 潔 足立 哲司
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-430, 1995-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

朝の起床後におけるジョギングの問題点, その実施時間帯による代謝特性を明らかにすることを目的として, 男子長距離選手5名 (19~26歳) とジョガー (32~50歳) を対象に, 絶食, スナック, 夕方の3条件を設定して60分間のトレッドミルによるジョギングを課し, 血中基質と代謝反応を測定し, 次のような結果を得た.1) 絶食条件のジョギング前後の血液グルコースは, ジョガー群で100.8mg/dl: 93.0mg/dl, ランナー群で101.0mg/dl: 105.6mg/dlとなり, ジョガー群の低下が大きい傾向が見られた.しかしながら, 両群間に有意差は認められなかった.また, 夕食を摂らなかった被験者1名 (48歳) が, 走行後65mg/dlとなり, 低血糖レベルに近づいた.2) 同条件での遊離脂肪酸は, ジョガー群の安静で, 0.37mmol/l, 運動後, 0.57mmol/l, ランナー群の場合, 運動前0.25mmol/l, 運動後0.37mmol/lとなり, いづれも, 約50%の上昇がみられたものの, 安静値の2倍に達した被験者は1名であった.また, その最大値は, たかだか, 0.86mmol//lであった.3) 上述の結果から, 起床後の空腹状況において, 50~60%VO2maxで60分間のジョギングを実施した場合, 脱力感, 不快感や低血糖症状に陥る例は稀であり, 遊離脂肪酸が急上昇 (安静の3~4倍) することもほとんどないことが示唆された.しかしながら, 中高年ジョガーの場合, β-ヒドロキシ酪酸が, 運動前に比べ1.3~2.6倍も増加する例 (6名中5名) が見られた.4) 血中基質の動態からみた夕方ジョギングの特徴は, 朝の2条件 (絶食とスナック) と比べ, 運動前のインスリンレベルが2.7倍高く, 運動中のアドレナリン分泌の亢進, 血液グルコース取り込みの増加, 脂肪分解能の抑制であった.一方, 朝の2条件の動態は, ほぼ同様となり, インスリン, アドレナリン, ノルアドレナリン, 血液グルコースの変動が小さく, グリセロールの増加, FFA代謝回転レベルの高いことが認められた.5) 60分間のジョギングによる全消費エネルギーは, スナック条件が他の条件より4~5%高く (P<0.01) 654.4kcal, 以下, 夕方条件・627.5kcal, 絶食条件・619.2kcalとなった.この差異の要因は, スナック摂取からくる酸素摂取量の増加に依る.6) 呼吸商 (RQ) から60分間のジョギングによる炭水化物と脂肪の酸化比率をみると, 朝の2条件 (絶食とスナック) の場合, 約51~50%: 49~50%とほぼ同様になったのに比べ, 夕方条件の場合は, 67.4%: 32.6%となり, 朝のジョギングの方が約16~17%脂肪の酸化が多い (P<0.01) ことが認められた.7) 以上の結果から, 朝の2条件 (絶食とスナック) によるジョギングは, 夕方実施する場合に比べて脂質代謝が高いと示唆された.
著者
足立 哲司 足立 博子 中井 聖 豊岡 示朗 増原 光彦
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.165-170, 2011-11-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
21
被引用文献数
2

The aims of the present study, were a) to investigate physiological responses in man who ingested branched-chain amino acid (BCAA) drink for 8 consecutive days during and after incremental exercise and b) to examine the effects of BCAA drink intake on aerobic performance during the exercise. Five healthy males ingested 2000mg・day^<-1> of BCAA drink for 7 consecutive days and 10000-mg BCAA before the experiment and performed incremental cycle ergometer exercise until exhaustion. Exercise duration until exhaustion significantly extended and blood lactate concentration at a 100-W load significantly decreased compared to before ingesting BCAA (p<0.05, respectively). These results suggest that BCAA drink intake could result in improving aerobic performance.
著者
豊岡 示朗 足立 哲司 宮原 清彰 松生 香里 福嶋 利浩 鈴木 従道
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.27-38, 2000-07-01
被引用文献数
1

The physiological factors that relate to marathon running performance were studied in 24 marathoners of three different categories (Elite Runners, Good Runners and Slow Runners). Oxygen uptake at average marathon speed (AMS) was significantly correlated (r = 0.93) to performance in the marathoners. This showed a significant difference in the three categories. Also, this data indicate that marathon performance of sub 2: 30 (ER) and sub 3 : 00 (GR) need respectively above 54 ml/kg/min and 45 ml/kg/min during the race. It was suggested that these differences at AMS were dependent on the difference VO_2/kg at 2.5 mM and 3.0 mM (r^2 = 82〜84%) in three categories. The two factors that contribute to VO_2/kg at 2.5 mM and 3.0 mM are: VO_2 max/kg (r = 0.83〜0.88) and average weekly distance (r = 0.64〜0.66). VO2/kg at fixed blood lactate concentration of 2.5 mM, 3.0 mM and 4.0 mM were significantly correlated to AMS (r=0.80〜0.82). There were no differences in the three categories in delta speed and V0_2/kg while increasing from 2.5 mM to 4.0 mM, which means the aerobic-anaerobic transition. The delta values were 20.8〜24.6 m/min in speed and 4.7〜5.6 ml/kg/min in V0_2. From these results, it is indicated that marathon running performance correlates closely to V0_2/ kg at AMS and velocity and V0_2/kg at fixed blood lactate concentration of 2.5 mM, 3.0 mM and 4.0 mM, which shows a significant difference in ER, GR and SR.