著者
藤原 眞砂 久場 嬉子 矢野 眞和 平田 道憲 貴志 倫子
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

子育てや看護をはじめとする家庭生活の多様な環境に配慮した企業および行政のワーク・ライフ・バランス(WLB)施策は、勤労者の生活に安心とゆとりをもたらし、ひいては企業、社会の活性化(少子化の克服も含む)に資する。本研究は総務省社会生活基本調査ミクロデータの独自の再集計値をもとに家庭内の男女、成員の役割関係の実態を解明し、WLBを実現する政策的含意の抽出を試みた。あわせて理論的研究も行った。
著者
荒木 李彩 貴志 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> キャリア教育は生活キャリアと職業キャリアの両方を統合した多様な人生役割を形成するものである。家庭科はキャリア発達に関係深い教科であり、中でも生活設計教育は、仕事と生活の調和を考えさせながら学習していくことが求められている。新学習指導要領では、生涯を見通す視点が強調されており、人生経験の少ない生徒に生涯を見通す視点を持たせる工夫が必要である。そこで、本研究では、生活設計において高校生が人の一生を多様な視点を持って展望できる教材の開発を行うことを目的とする。<br><b>方法</b> 1)平成23年度検定の家庭総合・家庭基礎の教科書16冊より生活設計に関する教材を分析する。2)NHKで放映された「7年ごとの記録:イギリス56歳になりました」を素材として教材を作成し、模擬授業による評価を行う。<br><b>結果</b> 1)家庭基礎の教科書10冊中5冊は家庭総合と同一の内容であり、家庭基礎であっても生活設計の立案を行う内容が多数存在した。2)教科書には、生涯の見通しを持たせる工夫として「生活設計の立案」「人物モデルの事例」「年齢別データ」がみられた。3)人の一生を7歳から56歳まで追った映像からライフイベントを見出す教材を作成し、模擬実践を行ったところ、生活設計への関心を呼び起こすなどの効果と授業実践に向けての課題が明らかとなった。
著者
貴志 倫子 鈴木 明子 高橋 美与子
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.9-18, 2008-03-25

本研究では,家事労働の理論の検討をもとに授業実践を行い,生徒の家事労働の認識構造をとらえ,授業のねらいがどのように達成されたか検討することを目的とした。授業後のワークシートの記述内容を分析した結果,次のことが明らかになった。(1)家事労働の認識として価値的認識がもっとも多く発現し,家事のケアの側面に気づかせる本時のねらいはほぼ達成された。(2)家事労働に関する認識は,感覚的認識から功利的認識,価値的認識,社会的認識へと変容がみられた。(3)授業の意見交換と資料の読みとりによって,自分の生活を振り返る記述や,家事労働に関わる家族に目を向ける記述が表出し,自分と家族の関わりから生活のあり方をとらえる認識の萌芽がみられた。
著者
平田 道憲 貴志 倫子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.521-528, 2002-06-10
被引用文献数
1

同一世帯の夫妻を対象とした生活時間調査のデータを用いて夫と妻の就業休日パタンからみた夫妻の家事労働時間と自由時間の特徴およびそれぞれの時間配分に与える夫妻の相互の影響について明らかにすることができた.夫だけに注目すると,休日であることは自由時間の増加だけでなく,家事労働時間の増加にもつながっていて望ましい社会変化を示しているようにみえる.しかしながら,家事労働の内訳をみると,買い物,子どもの世話,家庭雑事の時間が長く,炊事,掃除,洗濯といった家事労働の増加にまではおよんでいない.夫妻の就業日の組み合わせによる就業休日パタンによって分析すると,夫が就業日である場合よりも休日である場合の方が妻の家事労働の時間的負担が減少している.しかしながらその減少はそれほど大きなものではない.つまり,夫の休日の効果が妻にまで十分およんでいるとはいいがたい状況にある.夫が休日の場合は妻の就業休日によって自由時間に違いがなかったのに対し,妻が休日の場合は夫が就業日であると自由時間が短い傾向があった.つまり,妻の休日の効果は夫の休日の効果より小さくなっているといえる.職業労働に従事しない日という意味では同じであっても,有職の妻の休日の生活は無職の妻の生活よりゆとりがあることも明らかになった.ここで,本研究の有職の妻の分析においては,サンプル数の制約のため就業形態(「主に仕事」か「家事の傍らに仕事」)を分けていないことに注意する必要があることはあらためて指摘しておきたい.本研究の結果から,単に有職者の職業労働時間を短縮するだけでは夫妻の生活時間配分のバランスがとれるとはかぎらないことがわかる.これまでの労働時間短縮政策は,労働時間量を短くすることを目的としていたように思う.その目的は達成されつつあるものの,最終目的である真の意味で豊かでゆとりある家庭生活を実現させるには至っていない.この実現のためには,有職者の労働時間短縮の効果が夫妻を含む家族成員全員におよぶような家庭経営のありかたを追究していくことが必要である.