- 著者
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平田 道憲
貴志 倫子
- 出版者
- 社団法人日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.6, pp.521-528, 2002-06-10
- 被引用文献数
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同一世帯の夫妻を対象とした生活時間調査のデータを用いて夫と妻の就業休日パタンからみた夫妻の家事労働時間と自由時間の特徴およびそれぞれの時間配分に与える夫妻の相互の影響について明らかにすることができた.夫だけに注目すると,休日であることは自由時間の増加だけでなく,家事労働時間の増加にもつながっていて望ましい社会変化を示しているようにみえる.しかしながら,家事労働の内訳をみると,買い物,子どもの世話,家庭雑事の時間が長く,炊事,掃除,洗濯といった家事労働の増加にまではおよんでいない.夫妻の就業日の組み合わせによる就業休日パタンによって分析すると,夫が就業日である場合よりも休日である場合の方が妻の家事労働の時間的負担が減少している.しかしながらその減少はそれほど大きなものではない.つまり,夫の休日の効果が妻にまで十分およんでいるとはいいがたい状況にある.夫が休日の場合は妻の就業休日によって自由時間に違いがなかったのに対し,妻が休日の場合は夫が就業日であると自由時間が短い傾向があった.つまり,妻の休日の効果は夫の休日の効果より小さくなっているといえる.職業労働に従事しない日という意味では同じであっても,有職の妻の休日の生活は無職の妻の生活よりゆとりがあることも明らかになった.ここで,本研究の有職の妻の分析においては,サンプル数の制約のため就業形態(「主に仕事」か「家事の傍らに仕事」)を分けていないことに注意する必要があることはあらためて指摘しておきたい.本研究の結果から,単に有職者の職業労働時間を短縮するだけでは夫妻の生活時間配分のバランスがとれるとはかぎらないことがわかる.これまでの労働時間短縮政策は,労働時間量を短くすることを目的としていたように思う.その目的は達成されつつあるものの,最終目的である真の意味で豊かでゆとりある家庭生活を実現させるには至っていない.この実現のためには,有職者の労働時間短縮の効果が夫妻を含む家族成員全員におよぶような家庭経営のありかたを追究していくことが必要である.