著者
佐藤 夕夏 赤坂 卓美 藪原 佑樹 風間 健太郎 河口 洋一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1928, (Released:2020-11-10)
参考文献数
74

洋上風力発電は陸上風力発電よりも極めて大きな発電量を持つことから、近年気候変動問題の緩和策として最も有力視されている再生可能エネルギーのひとつである。その一方で、風車への海鳥の衝突等、野生動物への影響も懸念されている。このため、海鳥の生息に配慮した風力発電事業計画のための実用的なセンシティビティマップが求められるが、多くの国で作成されていない。本研究は、海鳥類への影響を最小限にとどめることを目的に、オオセグロカモメ Larus schistisagusをケーススタディとし、本種の生息場選択に関わる要因を明らかにし、センシティビティマップを作成した。 2018年 6-8月に、北海道道東地方に生息するオオセグロカモメ 6個体に GPSロガーを装着し 5分間隔で利用場所を特定した。オオセグロカモメの利用頻度は海水面温度、クロロフィル a、および営巣地からの距離が関係しており、海水面温度やクロロフィル aの上昇に伴い増加し、営巣地からの距離に応じて減少した。しかし、営巣地からの距離が 25 kmを越えた辺りからは横ばいとなった。これらの結果を用いてセンシティビティマップを作成したところ、営巣地に近接した海域だけでなく、遠方であっても潜在的に餌資源量が多い海域であれば、本種が風車に衝突する可能性が高くなることが示唆された。国内での洋上風力発電事業が計画されつつある今日では、本研究で示された手順で緊急にセンシティビティマップを作成し、事前の開発地選択に活用する必要がある。
著者
大熊 勳 吉松 大基 高田 まゆら 赤坂 卓美 柳川 久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.63, 2016 (Released:2018-04-01)
参考文献数
42

北海道十勝地域の森林は農地開発に伴って大きく減少しており、残存する河畔林が森林棲の動物の限られた生息地として機能している。本地域の河畔林は農業被害を引き起こすニホンジカCervus nippon(以下、シカ)やエキノコックス症を媒介するアカギツネVulpes vulpes(以下、キツネ)にも利用されており、これらの種がどのような河畔林を頻繁に利用するかわかっていない。本研究では北海道十勝地域においてシカおよびキツネによる河畔林利用頻度を測定し、頻度が高くなる地点の条件と影響要因が最も強く作用する空間スケールを特定した。2011年5月?2012年12月に十勝川水系の河川に5km間隔で計37台の自動撮影カメラを設置し、シカおよびキツネによる河畔林利用頻度を測定した。各季節(春:3?5月、夏:6?8月、秋:9?11月、冬:12?2月)の両種の撮影頻度を目的変数とした一般化線形混合モデルを構築し、これに影響する要因を調べた。考慮した影響要因は、カメラ設置地点の胸高断面積合計と下層植生被度および河畔林の幅、餌資源となりうる小型鳥類および小型哺乳類の100カメラ日あたりの撮影頻度(キツネのモデルのみ)、カメラ設置地点を中心とした半径100?800 mバッファ内の森林、農地、市街地の面積率および河川総延長、カメラ設置地点から山間部までの距離(シカのモデルのみ)である。解析の結果、シカの夏の河畔林利用頻度は河畔林地点の周辺400 mに農地、森林および河川が多く分布するほど高くなり、秋ではこれらの要因に加えて下層植生被度が高いほど高くなった。キツネの河畔林利用頻度は春では周辺200 mに森林が多いほど低くなり、夏では小型鳥類の撮影頻度が高いほど高くなり、冬では周辺200 mに市街地が多いほど高くなった。秋の利用頻度に影響した要因は不明だった。本研究により、十勝の農地景観におけるシカおよびキツネの河畔林利用頻度に影響する環境要因とそれらが強く作用する空間スケールが明らかになった。本研究で用いたアプローチによりシカやキツネの利用頻度が高い河畔林地点を特定しそれらの地点やその周辺を適切に管理することで、軋轢をもたらしうる種による河畔林利用を制限し、軋轢の発生地への両種の進出を抑えられる可能性がある。
著者
河合 久仁子 福井 大 松村 澄子 赤坂 卓美 向山 満 Armstrong Kyle 佐々木 尚子 Hill David A. 安室 歩美
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.239-253, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

長崎県対馬市において,コウモリ類の捕獲調査を2003年から2006年にかけて行った.その結果,26カ所のねぐら情報を得ることができ,2科4属6種(コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,キクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum,ユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus,モモジロコウモリMyotis macrodactylus,クロアカコウモリMyotis formosus,およびコテングコウモリMurina ussuriensis)のべ267個体のコウモリ類を捕獲,あるいは拾得した.これらのうち,クロアカコウモリは38年ぶりに生息が確認された.
著者
脇 翔吾 赤坂 卓美 安藤 駿汰
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.197, 2022-10-25 (Released:2023-01-01)
参考文献数
95

今日急速に普及している風力発電は、温室効果ガスの削減に大きく貢献する一方で、コウモリ類の事故問題が顕在化してきている。しかし、近年大型風車と同様に普及が進んでいる小型風車による影響は軽視されてきた。そこで本研究では、小型風車によるコウモリ類への影響を把握することを目的に、北海道根室振興局内に存在する小型風車を対象に、小型風車の存在がコウモリ類の活動量に与える影響を明らかにした。キタクビワコウモリとヤマコウモリ属 /ヒナコウモリ属の活動量は風車直近の方が対照区(風車から 100 m以上離れた場所)よりも高かった。また、ホオヒゲコウモリ属の活動量は区間で違いはなかった。本研究の結果は、小型風車では、これまで大型風車で死亡リスクが高いといわれてきた属(キタクビワコウモリとヤマコウモリ属 /ヒナコウモリ属)だけでなく、死亡リスクが低いとされてきた属(ホオヒゲコウモリ属)も少なからず影響が受ける可能性を示唆する。このことから、今まで軽視されてきた小型風車におけるコウモリ類の保全対策は急務であると言える。
著者
柳川 久 前田 敦子 谷崎 美由記 赤坂 卓美
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.19-24, 2003

A bat survey was carried out during July, August and September 2002, at Kitafushiko (42°52'N;143°8'E), Memuro-cho, in central Hokkaido. Five species of bats were caught in mist nets: Myotis macrodactylus, M. daubentonii, M. frater, Eptesicus nilssonii and Nyctalus aviator. M. frater used tree hollows for their daytime and maternity roosts during July and August.
著者
橋本 靖 佐藤 雅俊 赤坂 卓美
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 = Research bulletin of Obihiro University (ISSN:13485261)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.25-33, 2017-10

自然環境や生物多様性保全の必要性への認識の高まりから,近年,人為的な緑地造成が行われる機会が増えている。その際,対象地本来の自然景観を参考にすることは,より目的に叶った緑地の造成につながりやすいと考えられる。そこで,帯広市周辺の本来の自然景観を推測するために,明治期の開拓以前の状況を,様々な文献を参考にして考察した。有名な江戸後期の十勝日誌等の記述からは,この地域に広い草原地帯があったことがうかがわれ,また,開拓期の様々な記録からも広い草原の存在が示された。また,黒ボク土の分布との関係からは,本地域での広い草原の存在と,野火の発生の歴史が想定された。このように,開拓前の帯広市周辺は,一面が原生的な森林に被われていたわけでなく,その平野部の広大な河川敷は,主に草原に被われていたものと推測された。そのため,帯広市の平野部において緑地の再生を考える際,森林環境だけではなく,湿性の草原や疎林のような環境も,再生するべき緑地景観の候補として,考えに入れる必要があると考えられる。Although restore original landscape enhance biodiversity sustainability, restoration goals often ignore what is original condition and is decided based on natural perception and preference of local people. We investigated the original landscape of Obihiro city, Hokkaido, Japan, by using literature review. Here, we assumed that the landscape from Edo to early Showa periods (i.e. before modern development) as original landscape. Most literature described that landscape was mostly covered by grassland dominated by Miscanthus or Phragmites which was created by flooding. Moreover, the evidence of wide-spread andosol soil could reinforce these evidences with presence of frequent wildfire. We suggest that grassland restoration rather than re-forestation is fundamental to conserve sustainable biodiversity at Obihiro city.
著者
赤坂 卓美 柳川 久 中村 太士
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-93, 2007-11-30
被引用文献数
2

北海道帯広市におけるコウモリ相とコウモリ類による橋梁の利用実態(日中のねぐら)を調査した。調査地域内において6属11種のコウモリ類の生息を確認し、うち2属6種において橋梁の利用を確認した。橋梁は裏側の構造に基づいて3タイプに分けられた(平底型:平らで溝が無い、小部屋型:梁により数個の小部屋に仕切られている、縦溝型:細い溝が橋梁と平行に数本ある)。3タイプの橋梁のうち小部屋型および縦溝型の2タイプをコウモリが利用していた。コウモリ類は小部屋型を最も多く利用しており、利用個体数も多かった。縦溝型は単独での利用がほとんどであり、幼獣の利用率が最も高かった。また、縦溝型は利用種数が最も多かった。コウモリ類における日中のねぐらとしての橋梁の利用は、利用するコウモリの繁殖ステージにより、選択する橋梁の構造が異なることが明らかになった。新たな構造の橋梁である合成床板橋の増加によって、コウモリ類のねぐら場所として潜在的に利用可能な橋梁は減少すると推測される。